その日もその男は神社を訪れ、いつものように車から降りお賽銭箱の前にお参りをした。



そしていつものベンチに腰掛け、巫女の動きを目で追っていた。



僕はいつものようにその男と挨拶を交わす。



こういう日々がどれくらい続いただろう。





その男は、以前その男の経営する投資会社が買収したという、全国でも有名なケーキ店TOPZのケーキを持ってくると僕に約束した。


僕はその男の話を信用した。


周りの職員達も信用した。


これが僕の人生が激変するすべての始まりであった。




ある日その男は、熊本の某有名ケーキ店KITAのケーキを神社の職員全員に、そして僕には別に持ってきて、「おみやげです。食べて下さい。」と言った。


この時に何故気付かなかったんだろう・・・




その男はケーキ店TOPZのケーキを持ってくると言ったのに、違う店のケーキを持って来た。


この時に僕は違和感を感じていたはずなのに・・・


あれ?TOPZのケーキはどうなったんだろう?


そのとき不思議に思ったのを僕は覚えている。



1週間ほどたったある日、いつものように神社を訪れたその男は、明日から渡米するとみんなの前で言っていた。


渡米するということで、お守りを買い求めていた。



僕はこの前のケーキのお礼にということで、テレビ番組で紹介された大分のある名物を渡した。


賞味期限も近かったこともあり、アメリカに行くのであればすぐに渡す必要があると思ったのだ。


その男は嬉しそうにこう僕に言った。



「おみやげ買ってきますね。」


「ありがとうございます。気をつけて。」



その後1週間ほど、その男は神社に来なかった。



しばらくして、またその男は神社に現れるようになった。


その頃になると、その男は神社の待合室に長居するようになっていた。



神社の職員である和田さんと親しくなり、和田さんはその男が現れると巫女にお茶を入れさせた。


巫女がお茶を出すと、その男は深く頭をさげお礼を言った。


こういう光景が毎日続くようになっていった。



僕を含め、和田さん以外の他の職員は皆、和田さんがまた金持ちを捕まえた、と認識していた。


また和田さんが・・・・金持ちを捕まえた。。。



この和田さん、まさに曲者。


過去にも金持ちに近寄っては、金持ちから本性を知られ逃げられる。。。。



この繰り返しだった。



しかし和田さん、その男にまさか騙されているなんて思いもしないんだろうな~



                                                  つづく