今日もその男は神社に通ってきた。



いつも通りの時刻に、いつもの風貌で。



車から降りると、両足を内側に向け引きずるように、賽銭箱に向かってヨチヨチと歩いて行く。



賽銭箱にお賽銭を放り投げ両手を会わせると、必ず1分間ほど何か願いごとをする。



少しだけ頭を垂れて、何かを神様にお願いしているようである。



毎日通ってくるのであるから、きっと信心深い人なのだろう。



お参りが終わると、巫女のいる授与所(御札やお守りを販売している建物)の参道を挟んで対面にあるベンチに腰掛けると、まずはジッポで煙草に火をつける。



煙草を吸いながら、ただぼーっと何をするでもなく、ただただぼーっとベンチに座っている。



傍から観察すると、その視線は巫女を追いかけているように見え、きっと巫女からしたら気持ち悪く感じているに違いない。




ただ、神社という場所は、来る者拒まず、去る者追わず。



神社は宗教法人の私有地ではあるものの、世間的には公共の場所。



ヤクザだろうが、右翼だろうが、どんな人が入ってきても、それを拒むことはできないのである。



たとえその男のように不気味さを醸し出していたとしても、それを排除することは決してしてはいけないと皆思って接している。




女性の巫女が気持ち悪がっているのはよく分かっていたが、男性職員さえもその男に対してあまり良い気持ちは持っていなかった。



男性が同姓である男性に対し不快に感じるわけであるから、当然女性もそうであろう。



もちろん、お参りに来てくださる方々全員に挨拶はする。



従って、その男にもみんな挨拶をする。



色の入った眼鏡越しに見えるその眼はいつも少し充血していて、少し鋭さも持っている。



この人、一体何者なんだろう?



控えめではあるが、何か少し威圧感のあるオーラを出している。



障害があることへのストレスなのか、はたまた障害を持っていることに対し自分のプライドが許さないのか。



とにかく、何かを持っている男のように感じていた。



ある日、僕はその男に話しかけた。



僕は人見知りをしないので、誰でも気さくに声をかけるのだが、その男への挨拶は何故か躊躇した。



何か嫌な感じがしていたのだ。



ただ、その男が障害を持っていることに同情してしまい、声を掛けたのだった。



それが悪夢の始まりだった・・・・・


           

                                                   つづく