新春ドキュメンタリースペシャル(2次創作)

 毎年多くのアニメが製作され、テレビ放映や劇場公開などなされている。放映や公開が終わった後も人気が継続し、続編が製作される作品もある中。多くはそのまま忘れ去られてしまうことだろう。キャラクターたちもまた生存競争に必死だ。

 今回は1クールの中で悪役として君臨し、敗れ去り。そのまま表舞台から姿を消したキャラクターたちの、生き残りをかけた物語。公式設定から独自に掘り下げた、2次創作ネタとしてご覧いただきたい。



1.ゼットアハト(怪人開発部の黒井津さん)
 ゼットアークは何を間違ったのか。

 ゼットアーク(Zet Arc)は『怪人開発部の黒井津さん』における、アニメオリジナルの悪の組織。予算も技術もアガスティアより上で、アジア圏進出のためにアガスティアに合併を迫っていた。

 最初は口頭での取り引きを仕掛けたが、検討する期限を設けると仄めかしながら実力行使。このようにかなり強引な手段も辞さないこと。傘下の怪人を機械に組み込み個性を消して統一化しており、自分達以外を徹底的に見下していることなど。確かに"悪の組織"としての立ち位置は本物であった。

 しかしその強引さとリサーチ不足が仇となり、日本全国のヒーローと悪の組織をまとめて敵に回してしまう。

(以上、ピクシブ百科事典より引用。以下、今回の2次創作ネタ。)

 また買収されて没個性化された傘下団体も、すでに不満分子は爆発寸前であった。買収された際に多額の資金を得ていたことから、すでに水面下で分離独立する体制も整っていたという証言まである。

 最終的には日本全国のヒーローと悪の組織から、まとめて鉄槌が下された。それを機に大多数の傘下団体、機械化されていた怪人が離散。この時点で残っていた者も、多くはブラックブレイダーの現状復旧作業に駆り出された後離散。この時点で最盛期から維持できた勢力はわずか2%ほどとされている。

 加えて日本から出られなくなったことまで発覚した。もはや敵しかない日本で、生き残る術はあるのか。目を付けたのは騒動の際に参加しかなった、数少ないマイナー組織。とある温泉街にて細々と活動していた『暗殺戦隊獣勇士』であった。

 ところがそんな暗殺戦隊獣勇士から逆に襲撃され、単体としては歴史的な敗北を喫してしまった。それを機に離散はさらに進行し、騒動の際に"持ち逃げされた"資金も底を尽きる。

 それでもゼットアークの廃業を認めないゼットアハト。何とか資金調達に勤しもうと、求人に応じたのもまたかつての部下。すっかり立場は逆転したばかりか、それ幸いにと閑職業務を押し付けられ早々に辞職へ追い込まれる。とうとう最後まで残っていた部下も、退職金ゼロで離散していった。

 残された道…、今回のアニメ合同トライアウトであった。



2.カミュ・ド・サド(異世界薬局)
 彼は最初から間違いを犯していた。

 人間はいつか死ぬモノだろう。しかしそれは余命短い人間に対することであり、今を生きる者に干渉すべきではない。それをはき違えた彼は、感染症拡大の首謀者となった。

 サン・フルーヴ帝国へ持ち込み、黒死病の蔓延を目論むカミュ。しかしそれは医薬大学の同期だったブリュノ・ド・メディシスに論破され、同じく薬師となった息子のファルマによって制圧。黒死病も帝国の者たちにより蔓延が抑えられ、時を経て終息することとなった。

 行き場を失うカミュ。実は帝国から逆に黒死病を持ち帰っており、そのまま消息を絶ったのだ。

 その後、別世界(現代の日本)へ転生を果たしたカミュ。この時点で『カミュ・ド・サドだった男』とするのが適切だろう。今度こそはまっとうに生きようとも、そうはいかない。

 彼はうまくいかなかった仕事と比例するように、地下アイドルへ傾倒することとなった。そんなアイドルの子から塩対応され、逆恨みの末。ライブ中に直接襲撃する暴挙に出てしまったのだ。最終的には守衛役の方が被害を受け、アイドル本人に物理的被害はなかったのだが…。

 かくして行き場を失った彼もまた、今回の合同トライアウトにかけていた。そして彼とゼットアハトが対峙するとき、奇跡的な化学反応が起きたのだった。



3.ゼットアハト(≒坂田銀時) vs. "カミュ・ド・サドだった男"(≒土方十四郎)
 プロ野球12球団合同トライアウトの場合、2015年以降は年1回限りの実施。シート打撃方式(試合同様に守備されてバッティングする)で行われ、投手は1人につき打者3人に対して。打者は1人につき投手7人と対戦し、カウント0-0から行われる。

 アニメキャラクターたちも対戦形式でアピールすることとなる。ゼットアハトは"第1打席"で辰本(組長娘と世話係)を相手に勝利し、弾みを付けようとしていた。カミュも"第1打席"でマードック・スワン(SPY×FAMILY)相手に勝利。迎えた"第2打席"で両者が相まみえる。

ゼ「あ…。もしかしてお前、多串くんか?」
カ「あ?誰だそんな名前?」

 明らかに両者は察していた。どこかで聞き覚えのある声、覚えあるような立ち振る舞い。

ゼ「はいよ、じゃ多串くん。俺仕事だから。」
カ「オメーの仕事は今から俺の相手だろーが!逃げんな!」

 結局は審判団によって、半ば強制的に対戦を開始。程なくしてゼットアハトとカミュは、乱闘騒ぎに発展。両者とも退場処分となり、2人のトライアウトは強制終了という形で幕を閉じた。

 トライアウト後は一定期間内に、興味を持った団体から連絡が来るようになっている。2人の体たらくぶりから敬遠されるのは当然だっただろうが、思いもよらぬ結末が待っていた…。



4.その後の2人
 ゼットアハトのもとに吉報は届かず、ひたすらに淡々と何かすることもなく時が流れていた。そんなある日、パチンコ店で"東雲と名乗る男"(SPY×FAMILY)と出会う。彼は戦力外通告を受けた時期が悪く、トライアウトに参加できなかったという。

 意気投合したゼットアハトと東雲は新たな"秘密結社"を結成し、その名は『万事屋エンカウント』という。今夜もどこかで暗躍し、夜の三冠王を目指しているのかもしれない。

 カミュも吉報を待っていた。ゼットアハトと同じパチンコ店で出くわせば、目をそらしながら席を移り。ゼットアハトと東雲が意気投合し、行動を共にするようになってからは1人で淡々と過ごすだけ…。

 どこからか連絡が入っていたらしい。その先へ折り返し連絡すれば、イヤミ(おそ松さん)が育成契約で獲得したいということだ。行き場を求めるカミュにとっては、願ったりかなったりといったものだろう。もっともイヤミもイヤミ(≒沖田総悟)であり、何か思惑があるのかもしれない。

 それからのことはご想像にお任せしよう。悪役にも愛される悪役と、愛されない悪役がいる。どこでどうハマるのかわからない、それもまた運命。

(アニメ戦力外通告2022・クビを宣告されたキャラクター おわり)