2016年1月12日(火)午後4時16分 青森県青森市・新青森駅

 これから乗る『はやぶさ』は全席指定であり、単独では10両編成となる。旅行班が指定されたのは7号車。では時間も余っているので、外から他の車両も見ておくとしよう。


 9号車はグリーン車となっており、より温かみのある照明と共に重厚な座席が2列2列で並ぶ。これでもまだ、低予算志向な旅行班にとっては夢の話。
なぎ「これより上あるんだよな…。」
もも「いつか乗れる日が来るとは思えない。」


 また、10号車にはグリーン車より上級クラスとなる『グランクラス』が設定されている。さらに重厚な雰囲気を持つ車内に並ぶ座席は1列2列で、ほぼ個室のような大型電動リクライニングシート。定員の18人向けに、軽食やアルコール類を含むフリードリンクのサービスが提供される。
さく「乗ってみたいんじゃなくって?」
めぐ「…逆に落ち着いて乗れないかも。」
もも「そう、変なことばっかり考えて。」


 そして最高速度320km/h運転のため、非常に長くなった先頭部。これにより空気抵抗が減らされ、高速運転による騒音も低減されるという。何より、メタリックグリーンの色と共に象徴と言えよう。
めぐ「今度はちゃんと収まったよ。」


 さらに北へと延びる新幹線。これからはフル規格の線路が津軽海峡を越え、やがては札幌まで1本でつながるという。東京から新函館北斗は最速4時間強で結ばれ、飛行機よりも旅の実感をかみしめて向かうことができそうだ。
さく「それこそグラン…。」
なぎ「わかってんのか?」


44.新青森16:38発→盛岡17:44着 新幹線はやぶさ28号/東京行き E525-107
 ドアが開いたので、4本中1本目にあたるE5に勇んで乗り込む旅行班。指定されたのは右側の2列席で、これも往路と同じ。座席間隔が広いので、辛うじてキャリーカートを畳むことなく座ることができた。
めぐ「…なんか行きと違うよね?」
もも「行きがどうだったかわかんないけどさ。」


 車両番号の下2桁が07であることから、少なくともプロトタイプではないとわかる。車内の造作もやや異なり、照明カバーが波型の連続したもの。棚も木目調の連続したものとなっている。壁面などの木目はプロトタイプと同様ながら、印象は異なるものであった。(電球色に見えないのはカメラ設定が要因。)
さく「…こっちのほうがいいかもね。」


 座席が埋まらないうちに発車すると、耳残りのいいチャイムと共に自動放送が流れる。外は日没を迎えるも、昨日の釧路よりは遅い。ましてや、今日は冬至でない。雪景色の中では、オレンジ系の明かりが暖かい。
もも「ってか、アンタだけよ。自分で大きいの持ってんのは。」
めぐ「あ…。」
なぎ「上…、そうだろ?」
めぐ「4回も直すのって面倒臭いもん。」
さく「でも盛岡までだし、空いててよかったかもよ。」
なぎ「…寝るか?」


 最速列車を選んだ往路に対し、こまめに停車していく形を取った復路。はやぶさ28号は相対式ホームを持つ七戸十和田に停車し、思いのほか多く乗ってくる。外はすっかり暗い。


 八戸はかつて終着駅だったことから、島式ホームの2面4線式。八戸線との接続があり、ここでもそれなりに乗車がある。
もも「…どこ?」
めぐ「八戸。」
もも「…私、起きてようかな?」


 相対式ホームを持つ二戸ではあまり乗ってこなかった。落ち着いた雰囲気の車内と、最高性能から抑えた走りを見せるE5。そんな中で…?
めぐ「…あれ?」
もも「何、また変なこと?」
めぐ「シャープペンない。」
もも「…また?」



 筆記具がなければ、メモを取ることができない。慌しくなる旅行班。
なぎ「…どうかしたのか?」
もも「なんか書くやつなくしたんだと。」
さく「…なに?」
めぐ「シャープペンどこ?」

 すると…。
めぐ「…ごめん、あった。」
もも「ほら…、よく見ないからよ。」


 無事に筆記具が見つかったところで、いわて沼宮内に停車するはやぶさ28号。相対式ホームに客はおらず、乗ることがないまま発車。
なぎ「…なんだこれ?」
さく「外国人向けのWi-fiだよね?」

 車内にあった、外国人向けと思われるWi-fi無料サービス。旅行班の携帯端末における通信手段として、1つは基地局からの電波。もう1つが各所に設けられた公衆無線LANであり、Wi-fiと呼ばれるものである。後者は国際規格であることから、無料サービスが提供されるところではどの国の端末でも利用可能。外国人旅行客が自国の端末を用いて、情報収集などに用いられるのだ。
もも「…アンタら結局ロクなことに使わないじゃない。」
めぐ「たまに役立つよ。」
なぎ「いや、普通に役立てろ。」

 後で調べたところ日本人でも利用可能であり、利用には登録が必要とのこと。旅行班が前日に宿泊したホテルでも、"備品となっていたパスワード"を入力することでWi-fi無料サービスを受けている。
さく「…着いちゃうけど?」
もも「…あれ?」


 はやぶさ28号は盛岡で6分停車し、秋田から来るこまち28号の連結を待つ。旅行班は乗り換えという形でこまち28号の指定としたものの、正式には座席移動という形となる。
もも「…やっぱり見るの?」
めぐ「そりゃあね、そのためにってのもあるし。」

(つづく)