2016年1月12日(火)午前11時49分 北海道室蘭市・東室蘭駅を出発
42.東室蘭(11:44)11:49発→函館13:54着 特急スーパー北斗8号/函館行き キハ281-6
これから始まる長丁場で起こった事態を、予想だにしなかった旅行班。なんと2両とも座席が空いておらず、デッキに立つほかないのだ。ついでに座れた場合の6号車は、元の物であろう青い座席。7号車は指定席向けのグレードアップ座席である。
自動放送「それでは目的地まで、ごゆっくりお過ごしください。」
さく「…ゆっくり過ごせるかっての。」
もも「これは予想とか…、何もできなかったわけ?」
めぐ「…何か、7両あるなら何とかなりそうだったのかなって。」
なぎ「それに今日なんか平日だろ?」
今日は通常であれば、観光客が少ないはずの平日。確かに、日本人だと確信をもっていえる人は見られなかった。多かったのは中国人観光客で、バカンスシーズンと言える春節(旧正月)もまだである。それなのに、指定席やグリーン車は満席だとか。
なぎ「本当、どこを目的としているのかわからんもんな…。」
もも「登別で降りたわけでもなさそうだしさ…、このまま函館なんてないわよね?」
伊達紋別,洞爺と停車していくスーパー北斗8号。この2駅で座席が空く気配はない。車内の"インフォメーションボード"は緑色のLEDが濃いものとなっており、気になって仕方がない。
もも「そもそもよ?先頭ってドア多いんじゃなかったっけ?」
めぐ「だってどっちが古い席かわかんないし…、スーパーじゃない北斗が4号車で…。」
往路にあたる北斗15号では、キハ183系5両のうち自由席となる4号車にグレードアップ座席が搭載されていた。復路にあたるスーパー北斗8号はキハ281系7両のうち、自由席となる6号車は座席が交換されていない。結果としてキハ283系スーパーおおぞらと同様の形となっており、気づかなかったといえばそれまでか。
さく「…みんな怒ってるね。」
もも「そりゃ怒るわよ。ただでさえ目測誤ったとか言って、それでどっちも座れないとかさ…。」
そして旅行班は、とうとう禁じ手に打って出る…。
めぐ「もう…、これ立って食べよう。」
なぎ「いいのか?」
さく「今しかないかもよ、他食べるとこもなさそうだし。」
(現)チキンデミカツ丼(セイコーマート) 500円
コンビニ故に作り置きなのは仕方ないながらも、それさえ気にしなければ完全に弁当屋で買うもの。あるようでなさそうで、ないようでありそうな組み合わせ。結構好き。
もも「本当こういうときだからアレだけど…、行儀とか。」
食べ終わり、トイレにも入り。そうしているうち、あることに気づいたリーダー。
めぐ「…これ写真撮りまくれるかも。」
さく「…さっきまで怒ってたのに?」
立ちっぱなしのデッキということは、場合によっては写真撮影に最も適した環境なのかもしれない。そう気づいて構えるも、トンネルが多くなってはタイミングが合わない。雪の多い沿岸部と海、そして雲の切れ間から差し込む光。
なぎ「今度、カメラ使えないからって怒るのか?」
めぐ「…いいよ、これぐらい。」
長万部からは、札幌を逆に進んだはずの函館本線と合流。実際にはここから小樽を経て、札幌へ行く普通が1本だけある。所要時間は4時間ともなり、やはり線形が悪いために長くなっている。こちらは降りる客も乗る客もなし。ついでにこの車両、後発のキハ283系と同じくプラグドアを採用している。
さく「そういやあったね、行きに。」
そして道南へ進むスーパー北斗8号。往路ではすでに夜だったため、景色が見られなかった路線。デジカメではシャッターを押してから"画"になるまで少々時間がかかり、タイミングが合わせにくい。
めぐ「音…、出していいんだよね?」
ところでキハ281系のデッキにある手すりは黄緑色に塗られ、金属らしい冷たさを幾分緩和している。
さく「なんか…、こっちがアウェーみたいになっちゃってさ。」
もも「この…、中国の電車じゃないんだからさ。」
さく「こうなったらもう、マナーとかあってないようなもんだよ。」
ここからはすぐに起動できる、携帯のカメラを使っていこう。外は雪の量など、場所によってまちまち。八雲まではあとどれくらいだろうか?
めぐ「中は一応、見れるんだけどね…。」
さく「あんな中逆に入りたくないよ。」
八雲でも車内に動きはなく、帰りの指定があるので乗り続けるほかない。さて"壁ドン"といった密着行為に適したかのような、絶妙な狭苦しさを持っているこのデッキ。暇を持て余す旅行班ができそうなこと…。
さく「…なんでこっち向けるのさ?」
なぎ「別にいいだろ、お前がマナーとかないようなもんだって言った。」
外はそのまま海が広がる景色となる。
もも「…壁ドンするときあったわね。」
めぐ「実際、…するとこなかったよね。」
なぎ「…憧れとかは?」
もも「別に?アンタらとなんか…。」
さく「…逆になぎ姉にしちゃえば?」
スーパー北斗8号もスーパーおおぞらと同様、当時ワゴンによる車内販売があった。これだけの混雑にもかかわらず、自由席へも来るという。ワゴンが来てしまえば、できることは外の海を眺めることだけ。
さく「別に入れないんだったら無理して自由席まで来なくたっていいのにさ。」
もも「…いいけど、昨日アイスも何も買ってないのよね?」
めぐ「昨日のって…、十勝のアイスだったし。」
(つづく)