2016年1月9日(土)午後4時40分 北海道稚内市・稚内駅
もう少し時間があるので、1階のベーカリーで半額となっていたパン。セイコーマートでもパン類を少し買っておこう。ただ、駅の近くには『ホットシェフ』を取り扱うセイコーマートもあったのだ。この選択は、ここからどう及ぼしていくのか…。
めぐ「一応、これで持たせられるとこまで持たせるよ。」
もも「…いいけど、途中でバッテリー切れとかない?」
さく「さっきラーメン食べたばっかりだし、大丈夫でしょ。」
鉄道駅であると同時に道の駅『わっかない』でもあるため、24時間利用可能なトイレと道路情報案内端末がある。ここで用を足しておいた後、コインロッカーから荷物を取り出して組み立てよう。
なぎ「で、また乗ったらバラすと。」
最北の地にある鉄道駅。ホームには各地からの距離が記されており、枕崎からは3126.1kmもの道のりである。この2駅は北と南、それぞれ終着駅とあって友好関係にある。
めぐ「…しばらくないよ?」
もも「いや、別にこっちだって求めてないわよ?」
そんな枕崎への第1歩ともなりえるのが、これから乗り込むキハ54。国鉄末期に導入された車両であり、同じ形式で四国にいる車両(0番台)とは構成が大きく異なっていることから500番台となっている。せっかく北海道に来たからには普通列車でも北海道らしい車両をと、今回選んだのだ。
そして東京からは1574.5kmとある。これはおそらく東北新幹線で直接新青森まで向かったものと考えられ、旅行班が今回用いた新宿経由のものではない。
さく「いいから早く乗っちゃってよ、寒いんだよ。」
17.稚内17:08発→名寄(20:58)21:15着 普通4336D/名寄行き キハ54 506
車内は転換式クロスシートとロングシートで、期待を抱いていたリクライニングシートではない。さらには転換式クロスシートも減らされている。宗谷本線北部用車両にある市町村の広報を入れる棚がないことから、旭川地区で広く使われる車両だろう。昨日のキハ143と異なり、北海道のキハ54は全車両が非冷房となる。
さく「とりあえず荷物はそのままでよかったんだよね?」
なぎ「いや、わかるだろ。外してないんだし。」
転換式クロスシートは新幹線0系譲りのもの。センターアームレストの撤去跡がある他、通路側肘掛に内蔵されているミニテーブルも健在。窓と座席は位置があっておらず、窓が遠く景色の見えない"修行席"も。そして後付けで座席番号が割り振られ、これも位置が正しくない。
もも「でもこれだって結構いい座席よ?0系って…。」
めぐ「わかってるよ。昔の青函トンネル通ってた客車だってこういうのだったって。」
ロングシートは設置時期によって2種類が混在。後から改造されたものは211系に似たようなもので、"バケット"の浅さや座席の硬さから"まがいもの"だとわかる。そして、最初から存在していたロングシートは1席ずつ個分けされているタイプ。
さく「ちょ…、なにこれ?」
なぎ「…横浜じゃないよな?」
旧来からのロングシートは形状といい座った感じといい、横浜スタジアムの内野席(2014年当時、オレンジ色をした狭いもの)にモケットを貼ったようなものであった。2重構造となっている窓枠は改造されていないため、"211系のまがいもの"はクロスシート用の幅広タイプ。"横浜の内野席"は冬季に隙間が一切なくなる。
クロスシートに座ったところで、既に外は暗く景色は見られなくなってしまった。昨日と同じく、ワンマン運転の際は前乗り前降りという方式を採用。
さく「関西線って…。」
もも「関西線は関西線でしょうよ、出るときの最初の最初に乗って…。」
さく「そこじゃなくって、キハ120の。」
もも「キハ120は…、ああ。ドア結局全部開けちゃうってこと?」
北海道内のローカル線区では基本的に輸送人員が少ないことから、単行で事足りてしまう。この状況で本州と同じ後乗り前降り方式を採用すると、全ての扉を開閉させることになる。そうなってしまうと、ワンマン運転を行う意味がない。加えて、ドア開閉箇所を減らすことで防寒の役目も果たすこととなる。
この普通も乗客は少なく、ロングシートには誰も座っていない。
もも「…もうちょっと簡単にできない?」
さく「簡単って言うか、…憶測が多いんだよね。」
稚内を出る前に日は沈み、暗い中での"雪中行軍"となった復路。キハ54は進んでいく…。
なぎ「…寝ようか?」
もも「…寝たら?どうせ、ここまで寝れてないし。」
幌延で24分停車する名寄行き普通。気づけば、他の乗客は全員が下車してしまっている。
めぐ「せっかくだし、…いい?」
さく「外出てみようよ。」
反対列車を待つわけでもないので、駅舎に近い側のホームに停車。ストレート状のステンレス車体を持つキハ54の顔には、降ってくる雪を多くかぶってすっかり白くなっている。
せっかくなので、駅舎の外からも眺めておこう。幌延の駅は特急が停車することもあり、宗谷本線においては規模が大きい。窓口はあるものの営業時間は短い。そして、しっかりと降り続く雪。周辺にめぼしいものは見当たらない。
もも「…いや、アンタらが外出ようって。」
めぐ「出たよ。」
さく「もう、一応寒いし終わろうかなって。」
もも「そう?じゃあ何か買ってからね。」
なぎ「自動販売機しかないんだろ?」
さく「ないけど…。」
(つづく)