2016年1月9日(土)午後2時8分頃 北海道稚内市・宗谷岬バス停に到着
 日本最北端の公共交通機関乗降場、宗谷岬。降りる際は"台紙"から切り離した"往路分"を運賃箱に投入する。


 バス停から外に出ると、最北端の駐車場と土産物屋。気温はマイナス7度ほどだが風も強く、ただでさえ低い体感温度をさらに下げる。本州では体感できないものだ。
なぎ「や、やっぱり違うよな…。」


 降り立ったバス停へ振り向いてみる。道は完全に凍っており、締め固まっているのであまり滑らない。付近にはさらに、日本最北の信号機と道路標識。
めぐ「…最北は停止線ってことでいいのかな?」
もも「そんなのはアンタが調べりゃいいじゃないって…。」


 最北の地にある駐車スペースと、敷地に立地する公衆便所。その奥には、最北地であることを示すモニュメントが顔を覗かせる。


 そして…。
さく「…それっ!」
もも「あ、ちょっと!待ちなさいよ!」
なぎ「こら、慌てるな!」


 宗谷岬の先端、北緯45度31分22秒の『日本最北端の地』を標す記念碑。北極星の一稜をモチーフに、中央には北を示す"N"、台座の円形は"平和と協調"を表している。海に向かってこの地に立つと前方三方が海、正面に43km先のサハリンの島影が浮かび上がり日本の最北端であることを実感できる。ちなみに東経は141度56分11秒。(文献:稚内観光協会)
さく「勝った…!」
もも「こういうこと…、やるとはね…。」
なぎ「2人、速いな…。」
めぐ「私はね…。」
もも「アンタ靴底悪くて走れないんでしょ…。」
なぎ「いや…、誰が最速とか本当はよかったんだろ?」
さく「面白かった…。」


 やはりそこは『日本最北端の地』。訪れれば必ず、写真撮影をするということになる。そして記念にと、オーソドックスな体裁からパフォーマンスじみたものまで。
なぎ「…何してたんだ?」
めぐ「さっき、他の人に頼まれたんだけど。使ってない機械だと、操作よくわかんないの。」

 早い話が、他の観光客から撮影を頼まれて引き受けたのだ。では旅行班も…。
さく「色々すること、する人いたよね。」
もも「勝手に競走仕掛けるとか、こんな風も強い中で薄着とか…。」
なぎ「そこまでしてやるか?」
めぐ「私、靴底ちょっと不安かも。」
もも「いや、名古屋出る段階で十分不安だったわよ。」
さく「…こんなあっさり終わっちゃっていいの?」
めぐ「…帰るまでわからないかな?」
なぎ「ここまで長いことやってきて、ようやく来れたんじゃないのか?」


 間宮林蔵の立像。対岸にあるはずのサハリンが、樺太として島であることを確認した人物である。1808年から翌年にかけて、幕府の命により樺太を探索した。サハリンとユーラシア大陸の間にある海峡は、日本において『間宮海峡』と名付けられている。


 最北の地にある石碑を、裏側からも押さえておこう。そこからは他に灯台が見え、紅白の塔であることから存在感を示し…。
めぐ「…これだとあんまりわかんないかも。」


 反対側は見る限り海の景色でしかなく、サハリンの島影は雲によって塞がれている。ここより先、日本国による実効支配が及ぶ領土はない。実際は択捉島が最北となっているものの、2021現在に至るまでロシア政府による実質支配となっている。
さく「もうここから何もないんだよね…。」
もも「まさかアンタらとここまで来るなんてね…。」
なぎ「…私らとだからじゃなくって?」


 国道を通りがかった除雪車。前面の"突起"で雪をかき分けるだけでなく、車両そのものの重量によって路面が締め固められる。
もも「…いいけどどこか入れない?」
さく「トイレは?ドアで仕切られてるよ?」


 ということでトイレへ入っておこう。外から風が入らないため、それなりに暖かく感じられる。"共用スペース"にある窓からも1枚。
なぎ「本当、やっぱり違ったよな。」
めぐ「でも…、なんとかなりそうなのよ。」
もも「そう?何かいいのあるわけ?」
めぐ「一応持って…、…?」
さく「どうかした?」
めぐ「…おかしい。」
さく「…何かなくなったとか?」
めぐ「首…、ネックウォーマーって言うか。」
なぎ「…ないのか?」
めぐ「…ない。」


 貴重な防寒具の1つがないため、気温マイナス7.3度の屋外では苦戦が強いられることとなるリーダー。それでも、最北端の地ですることは一通り済ませた旅行班。とりあえず"日本最北の土産物屋"で、何か買っておこうか…。
なぎ「…流氷館?」
めぐ「…じゃあせっかくだし。」
さく「入場無料だって。」


 土産物屋に"入居"している流氷館は無料で見学できる。展示室はマイナス11.9度とあり、出入り口の自動ドアは強固で頑丈なもの。この氷温に対処できないようであれば、窓ガラス越しに展示物を眺めることになる。
さく「…風がない分そんなになんだよね。」
もも「いいから、流氷を見なさいって。」
なぎ「お前は?」
もも「何よ?流氷は…、海から流れてきた氷?」

 現物ではあるのだろうが、やはりモノ単体ではよくわからない。海を漂っていたものであるためか、魚市場のような海水のような…。そんな匂いがした。流氷はやはり船の上から見て、ようやく実感がわくものなのかもしれない。
めぐ「じゃあ何か買うかな?」
もも「アンタが言うなんて珍しい。」

 最北端らしい品として、土産物屋には到達記念証書もある。買うならば道内どこでもありそうなものではなく、稚内限定のものを買いたいところ。
めぐ「一応、数多くて分けられるのとか…。」
なぎ「まあ、…せっかくだしな。」

(つづく)