(4)快速急行は時にぶっ壊れるから気を付けろ・前編
パワプロ9では『二中の快速急行』と呼ばれていた手塚隆文が登場する。主人公の1年後輩となる投手。快速急行というのは球速からでなく、特急ほど速くなく高いコントロールでちょうどいいところに止まるという意味。しかし実際はどうだろうか?
まず手塚自身について。初期能力のコントロールはお世辞にも良いとは言えないらしいが、2年目にはかなり良くなったようだ。もっとも調べた内容を羅列しただけで、プレイしていない。
ここからが本題。快速急行というのが特急ほど速くなく、高いコントロールでちょうどいいところに止まるという意味。すなわち適度な停車駅に停車するのは、果たして本当なのか。私鉄の主だった2系統を挙げて説明したい。
1.名鉄名古屋本線~名鉄空港線
かつて名鉄では『高速』なる種別があり、現在でいう全車一般特急に相当していた。その後特急施策の度重なる変更で、まず1995年頃~2003年に初代『快速急行』が登場。
特急と同等の停車駅としつつ、平日朝の東岡崎行き1本を除いて新一宮(現:名鉄一宮)始発であることをアピール。太田川へ直通する便については、金山から普通に種別変更していた。逆向きは設定されなかったようで、使い勝手も悪かったのか平日朝の東岡崎行き1本を除いて自然消滅へ…。
2代目『快速急行』の登場は2005年。停車駅にばらつきが多かった急行を区別しようと、中部国際空港開業に合わせた改正で登場。この時点では初代とあまり関連していなかった。
この際、名鉄常滑線の特急は停車駅が増加。これは当初、一部特別車の急行として構想された名残らしい。なお西尾線の快速急行は名古屋本線内での途中待避がなく、別の意味で"ぶっ壊れ"ていた。以下全車特別車『ミュースカイ』、および名古屋本線における準急,快速特急については割愛した。
転機が訪れるのは2008年末。名鉄一宮始発で早朝に1本あった中部国際空港行きと、中部国際空港発の最終たる金山行き。この全車一般特急2本が、停車駅そのままで快速急行となったことだ。その際に名古屋本線の快速急行は、平日朝にある程度残すのみになってしまう。
さらに数奇な運命は続く。2011年にはまず中部国際空港発の最終たる金山行きが、名鉄岐阜行きとなると同時に全車一般特急へ"再昇格"。一方で平日朝には名鉄一宮始発の中部国際空港行きが増発し、快速急行でありながら大里と大江にも停車。
逆方向はやはり平日朝に全て河和線からの直通となり、大江に停車しないこと以外で違いはほぼなくなっている。さらに太田川の2層構造化で接続に難が生じたため、一部の急行共々聚楽園にも停車するようになった。
なお栄生に停車するのは平日早朝、犬山線から急行で来たもの。いつからか休日朝に栄生始発となった1本がある。なお平日日中に河和線へ直通する特急は、河和線の停車駅が変わらなかったため全車一般特急となっている。
よくわからないのは2019年以降、中部国際空港駅最寄りの愛知県国際展示場 (Aichi Sky Expo) でイベントが開催される際に運行される臨時便。金山始発で停車駅が快速急行と変わりないのに、全車一般特急というのはどういうことだろう?
…話は長くなったが結論、名鉄空港線の快速急行はちょうどいいところに停車する。
2.近鉄奈良線~阪神なんば線~阪神本線
近鉄奈良線の快速急行も、ルーツは料金不要特急。名鉄でいう全車一般特急に相当していたらしい。実のところ1960年代ぐらいで、よくわからないため軽く流そう…。
現在の停車駅は特急(全席指定)から、新大宮と近鉄日本橋を除外したもの。すなわち全車一般なだけで、特急とほぼ変わりないといえよう。なお花園ラグビー場で大会等が開かれる際、快速急行も東花園へ臨時停車することがある。区間準急については割愛。
転機は2009年3月、阪神なんば線が開業。これを介して阪神本線と相互直通運転が開始されたことだ。阪神本線ではすでに山陽電鉄との直通特急が運転されており、種別変更も回避したい。そんな思惑があったかはともかく、阪神本線にも快速急行が新しく設定されている。
停車駅は新規開通区間となる大阪難波から西九条の各駅で、尼崎までの既設区間は通過。平日日中と休日終日は、西宮まで急行に準じている。西宮から神戸三宮は…、そう。序列が崩壊した。
2020年3月から休日は8両で運転されるため、特急の停車する芦屋を通過(平日は6両なので停車)。さらに御影はカーブ上に設置されている都合上、近鉄の21m級4ドア車両では大きく干渉して危険。よって特急停車駅にしてこちらも終日通過する。
なお神戸三宮から先、快速急行の乗り入れはない。直通特急は神戸高速線内での停車駅によって、赤色か黄色に分けられる(ここでは割愛)。なお通過駅が多いようで距離はあまり長くなく、これは駅そのものが密集位置で連続しているためだ。
区間急行,区間特急については平日朝の大阪梅田行きのみ運行され、取り上げても面倒になるだけなので割愛した。また"阪神特急"については、阪神本線において直通特急と停車駅は変わりない。
結論。近鉄は途中駅を飛ばし、末端では普通を補完。阪神では急行を補完しつつ、設備面の都合でぶっ壊れるしかなかった。
よって快速急行は、概ね適度な停車駅に停車するといえよう。さて"急行以上特急未満"という立ち位置では、別の事例もある。長くなったので、そちらについては後程としよう。今回はここまで。
(つづく)
(5)2022年は名鉄豊川線の正月輸送を特別体制にしてもよかったのでは?
名鉄の話が出たので、ついでにもう1つ。豊川線はかつて毎時2本運行であり、正月に臨時で特急等を豊川稲荷へ直通させていたのはご存じだろうか?
これも2005年に変化が訪れ、通年で毎時4本体制となる。このため臨時で特急等を直通させることはなく、線内折り返しの普通は国府で特急と接続を取っている。唯一の例外が2013年、B-1グランプリの臨時輸送で毎時6本体制となったことか。
長らく定着していたところ、2021年の"2段階改正"で再度大変化。まず5月に平日のみ名古屋本線直通の急行を廃し、普通のみの毎時4本体制となる。続いて10月に急行を含めて廃し、普通のみの毎時2本体制となった。これは需要面が大きく、事実上先祖帰りした格好だ。
これ…、正月に豊川稲荷の輸送量は大丈夫だっただろうか?いくら特急との接続が重視されていたとはいえ、毎時2本では不安しかない。普段2両編成の普通が、4両(ないし6両。8両は入線できない)となったところで。
せめて乗り入れなくなっていた急行を、正月三箇日のみ臨時延長させてよかったのではないだろうか?そうすれば"不人気"な急行を逆利用し、混雑の分散はできたかと。特急より遅くなろうと、名鉄名古屋まで乗り換えなく移動できただろうし。
それで正月明けに休日の急行を国府で折り返させ、毎時2本へ戻せば元どおり。
(おわり)