2021年9月22日(水)午後4時41分 三重県桑名市・桑名駅

 今回は新しく改良された桑名駅を見ていこう。完成したのは2020年8月末であり、これまで見る機会を逃してきたためようやくという話。


 JRの駅は従来と変わらず2面3線式。四日市方向は単式ホームであるため、緩急接続を図るには少々苦しい構造となる。もっとも本数はそこまで多くなく、専ら桑名発着の折り返しに用いられる。


 ホーム上に何やら石碑がある。調べてみれば桑名駅開業100周年を記念し、中原中也『桑名の駅』の詩碑が設けられたという。どうも反対向きに撮影していたようで、これでは何かわからないのも当然だ。


 かつての駅は通路が『桑栄メイト』のビルに直結しており、新駅舎完成後は通路が切り離されていた。ビル建物はまだ残っているのだが、すでに全面閉鎖されているという。


 改札へ上がる階段と共に、エスカレーターが新しい。特に新しい躯体は側壁がガラスで設けられる例が多かっただけに、ステンレスの側壁で新しいというのもある意味新鮮。


 以前の駅は通路として、そのまま近鉄の駅へ続いていた。新しい駅では路線ごとに独立した設計となり、JRの駅だけで完結。突き当たるように、ホームへ続くエレベーターが設けられた。


 反対側はトイレに突き当たる。洋式の大便器は温水洗浄機能付きとなり、手洗い場は水道のみならず石鹸液も自動式。蟹江は泡で出てきたところ、桑名は液体で出てくるタイプとなる。ともに少々センサーが敏感らしく、石鹸液を余分に出してしまう。


 名古屋方向のホームは島式となり、設けられた待合室は空調完備という充実ぶり。エレベーターも待合室が正面に来るよう配置。


 自動改札は4通路中2通路がIC専用となり、磁気券対応のうち1通路が車いす対応幅となる。窓口と有人改札は一体化され、ガラスやドアで仕切られたタイプとなった。発車案内は液晶画面式となるも、レイアウトが名古屋と異なり旧来のLED式に準拠している。


 新しい桑名の駅は自由通路となり、JR,養老鉄道,近鉄で設備が分離された。天井周りは構造体がスリット状に覆われ、開放感が感じられる。


 かつては近鉄の駅から入場していた養老鉄道も、別個で設備が独立。壁面に明るい緑のツートンカラーで装飾がなされることから、遠目ではゆうちょ銀行のATMコーナーに見えてしまった。主だった設備はホームに直結して設けられているようだ。


 近鉄の駅も、晴れて独立した格好だ。こちらは窓口がガラスで仕切られているのみで、有人改札は従来の分離された構造というか…。近鉄による『ファミリーマート』があるほか、JRの駅にもコンビニ売店が構えている。


 西口のロータリーへ出てみれば、大まかな形ができたのみで完成していない。もっともこちらは"裏口"なので、周辺には住宅と山林があるだけ。バスも地域巡回路線が発着するのみ。


 そんな西口から、新しい橋上駅舎を収めよう。レンガの外壁等、暖色系でまとめられた外観はどこか温かみを感じさせる。エレベーターなどにもガラスが多用され、開放感も十分そう。


 橋上駅舎へ戻ろうか。側壁にガラスを用いたエスカレーターは、新しいはずなのに異音を立てている。


 上から眺める近鉄のホームは、JRと似通ったかのように2面3線式。待避線を設けているのは名古屋方向のみで、伊勢中川方向は1駅先の益生で待避を行う。ホーム番号は6~8番線となっており、かつて切り欠きホームがあったことから5番線は欠番となる。


 東口は部分的に仮設構造となるなど、まだ駅整備は完成していないことがわかるかと。


 東口に広がるバス乗り場へも、旧駅舎からは『桑栄メイト』を経て通路がつながっていた。現状はこちらも通路が寸断されたのみで、そのまま残っている。三岐鉄道北勢線の西桑名は別の駅とされることから、当分は現在位置で営業を続けるのだろう。


 新しい橋上駅舎は東口からも収めたい。こちらもレンガの外壁が落ち着きを与え、ガラス窓から見られる照明もどこか温かい。今後は『桑栄メイト』のビルを解体し、駅前広場を整備していくことだろう。


 東口の完成予想図が掲示されていた。完成後は駅正面に向けて階段が設けられるほか、建て替えられるビルへもデッキがつながるという。そうなれば、バス乗り場は実質そのままで問題なさそう。


 JRの駅に戻って改札に入れば、ICカードの入金機と消毒液。その左にあるホワイトボードは漫画が描かれ、話題を集めているという。


 階段を下りるアングルはいつか収めたものと同じでも、装飾などが変われば全く違った仕上がりとなる。


 養老鉄道のホームは1面1線のみが割り当てられ、4番線となる。車両も東急のステンレス車両を享受し、駅設備が分けられるなど近鉄の色から着実に脱しつつあるようだ。


 北海道から来たDF200は高出力ながら重連を組み、ガソリンタンク車を牽引して通過。これまで主力だったDD51は老朽化が進行していたため、置き換えられた格好となる。

(おわり)