2013年1月7日(月)午前7時38分 新潟県糸魚川市・筒石駅

 過去にも幾度となく通っているが、あまりよく覚えていない筒石に着く。わずかながら外に出てみよう。
ももか「また何してたか知らないけどさ…。」
さくら「来た記念にだって。」
ももか「記念ぐらいで別にさ」
なぎさ「記念バカにするなよ。」


13.直江津7:19発→魚津8:45着 普通534M/金沢行き モハ474-52
 手短に済ませて発車。再びトンネルの中を高速走行する。
さくら「…どうせ寝てないとかでしょ。」
ももか「そりゃそうよ昨日あれだけやってりゃさ…。」
さくら「何さ、ソフトクリームあるからってみんなして。」
なぎさ「そ…、それ言うか…?」
ももか「…これ今日も1発やるしかないわね。」
めぐみ「やめてよ。」
なぎさ「そう言ってまた仕掛けるんだろ…。」
ももか「仕掛けるのは私よ。他2人ただ面白がってるだけ。」
なぎさ「本当お前らな…」
めぐみ「いやいや、私はそんな…。」
ももか「…アンタ一番悪そうなのに、なぎ姉こんなに汚して。」


 トンネルを抜けるとまた雪景色となる。浦本の駅は周囲が昔ながらの港町らしく、板張りの外壁を持つ家は風景に似合うだろう。
めぐみ「…私好きかも。」
なぎさ「そうか…。」
めぐみ「…なんかよくない?」


 梶屋敷を過ぎると交流電化となり、糸魚川に着く。北陸新幹線は脇野田からここまで、直線状に結んでいる。
さくら「これも結構なこと…」

 城壁のごとくそびえ立つ糸魚川の新幹線工事現場。3年前はここにレンガ造りの車庫があり、キハ52の引退とともに役目を終え取り壊された。
さくら「どこの何ていうか…、大聖堂?」
なぎさ「これあれなんだよな…。何だったか、300年かけて完成しない。」


 ここからは進行方向左側の景色を見ていこう。雲のかぶった雪山を望むように、内陸は天気があまりよくないようだ。


 在来線は新幹線と異なりカーブが多く、両者の位置が近づいたり遠ざかったり。北陸新幹線が開通すると、北陸本線の概ね東半分。富山県内と新潟県内は全てJRから移管される。
さくら「ここも次いつあるかわかんないからね…。」
なぎさ「次って…、JRじゃなくなってからも乗るか乗らないかってか?」
ももか「じゃあさ、…地方鉄道やめて富山まで乗ってもいいんじゃない?」
さくら「もう決めちゃったし、せっかくじゃん。乗ろうよ。」
ももか「そうよね…。どうしてか知らないけどどうせアレでしょ?」
めぐみ「だってせっかくだし…。」

 初日の昼に名古屋から新潟まで高速バスに乗るという構想が破たんし、"18きっぷを1人2回分使えるよう交渉し"た結果その分の予算が浮くこととなった。そこで新潟のグルメだけでなく、特急自由席への乗車や富山地方鉄道といった分に回すこともできたというのだ。
ももか「…あれだけ低予算言ってるならさ、もっといいもの食べたっていいんじゃない?」
めぐみ「乗りたいのも食べたいのもあるの。」
ももか「ああそう。じゃあ今度ぐらいは食べたいのから考えてよ、わかった?」


 富山県に入って立山連峰を見つつ、475系の普通は魚津に到着。通例であればこのまま富山まで乗車し、線形の良好な北陸本線で急行車両らしい走りっぷりを堪能するものだろう。そして455系700番台を除いては、そのまま最後に乗った国鉄急行型電車となった。
さくら「…まあ、降りるんだけど。」
ももか「だろうとね…、最初に教わるのがアレしたり。」


 魚津からは過去例と変えて、富山地方鉄道(地鉄)の電車に乗ることとしよう。JRの駅としては特急がある程度停車する主要駅で、古めかしい駅舎も相応に立派なものだ。


 JRの駅とは名称が分けられ、地鉄の駅は『新魚津』と名乗る。そんな地鉄電車のホームへは地下通路を通って向かう。
ももか「でも急に乗りたいなんてさ…、カネの話なしで言える?」
めぐみ「…まあ結局お金になるけど、せっかくならもう1回ぐらい乗ってもいいんじゃないかなって。」
ももか「そうなの?」


 地下通路から階段を上がり、単純な島式ホームへ出てきた。過去『くろワンきっぷ』を用いて地鉄電車に乗ったことはあるが、あくまでおまけ程度でしかなく当日決定したようなもの。乗車区間もフリー範囲にあたる宇奈月温泉と電鉄黒部の間だけで、これから乗る区間は全くの手つかずなのだ。
ももか「…わかったから。」
さくら「そうすると、黒部から魚津が残っちゃうんだよね。」


 新魚津から電鉄富山まで、運賃は750円。車両は地鉄生え抜きの車両のみならず、元京阪の車両。元西武の特急車両も、料金不要の便に共通で用いられている。特急は運賃以外に料金が必要だ。



14.新魚津9:05発→電鉄富山9:58着 普通/電鉄富山行き モハ14774
 そして来たのは、地鉄生え抜きの14760系。切符を乗る前に買っておいたものの、この普通は車内で整理券を発行するワンマン運転だったり。
なぎさ「…他のがよかったのか?」
めぐみ「別にそうじゃないけど…。」


 しばらくはJRと並走する。複線のJRに対し単線の地方鉄道、雪のある景色もわずかながら違ったもの。晴れてて心地よさそう。
さくら「こういうの名古屋じゃ全然見ないもん、そりゃ気になるよ…。」
ももか「…そんなこといちいち言わなくたっていいの。」


 西滑川の手前で離れて内陸へと入り、景色もこれまでと全く違ったものとなる。まだまだ晴れてて心地よさそう…。
ももか「…寝てない?」
めぐみ「…え?」
さくら「眠いんなら別に寝たっていいんだし。…ってか暖房強いんじゃない?」
なぎさ「…そうか?」


 上市に到着し、ここで進行方向が変わる。JRでは同じスイッチバックでも姨捨や二本木と違い、大曲や十和田南のような単純折り返し構造だ。
さくら「…アレないの?」
ももか「…閉めなさいってこと?」


 スイッチバックにより方向が変わり、今度は直射日光が当たって暑い。古い車両なので"ロールカーテン"は当然ついているのだが…。
さくら「…暑かったら別にそれ閉めてもいいんだよ?」
ももか「…ダメよ、この人景色見たいんだって。」
さくら「…寝てない?」
めぐみ「…寝たくない。」


 眠気と格闘しつつ一面雪に覆われたJRと違う田園風景を味わい、"都会"に入ると電鉄富山に着く。それにしても日差しが入ると暖房なんか必要なくなるもんだ。

(つづく)