2014年8月9日(土)午後1時18分 群馬県吾妻郡嬬恋村・吾妻線の車窓から
万座・鹿沢口は特急の終着でありながら単式ホーム。ここも温泉地へのアクセス駅となっているが、降りずに大前まで乗る客が思いのほかいた。
上野を出て3時間52分、吾妻線の終着駅大前に到着。これで2度目のJR東京近郊完全制覇を達成。
さくら「1回目は久留里線でしょ。」
ももか「そういうのはもういい。」
大前はホーム1本だけの無人駅。辺りは駅前の温泉以外、特に目ぼしい建物はない。
外は雨が降りしきる。ここまで来た客の多くは、この駅に来るのが目的だろうか?
めぐみ「…寒い。」
さくら「19度とかじゃなかった?」
ももか「あ、そんなに?」
さくら「ちょっと見ただけだけど。」
待合室には記念に書き込めるよう、ノートがある。
なぎさ「見ろよ。」
ももか「あ…。」
なぎさ「こんなところって思ってたろ。」
ももか「そりゃ、そっちが来たいっていうからさ?」
なぎさ「…逆にどういうとこか行ってみたいってのあったろ。」
ももか「…まあ、まあそうね。」
なぎさ「テレビとかネットとかでどういうとこかわかっても。」
ももか「それで私みたいなのが…?」
列車が1日5本、普通列車しか来ない終着駅。車が通じる道は狭いながらもあることから、秘境かどうかは判断が分かれるところ。
35.大前13:44発→高崎15:45着 普通536M/高崎行き クモハ115-1032
ホーム1本だけなのでそのまま折り返すとして、進行方向右側は確保できず。
ももか「あれ、座らなくて…」
なぎさ「見れてないんだと。」
万座・鹿沢口から霧がかった斜面を見る。温泉地から帰る客はそこまで乗り込んでこない。考えれば今日は連休に入ろうかという土曜日、1泊して帰る人は少ないはず。
雲がかかった山々は幻想的で美しい。
ももか「また?」
長野原草津口で少し停車。片側のホームは行き止まり式なので、大前方向は実質単式ホーム1本しかない。
ももか「……。」
なぎさ「…わかってんだろ?」
ももか「そりゃ…、2時間座りっぱなしってわけにいかないんならさ。」
長野原草津口を出ると、ダム工事によって切り替えられる新線が"分かれる"。単線のようだが線形はよさそうだ。
旧線を通るのはこれで最後。辺りの建物が姿を消し、更地に街路灯だけが残っている。かつてはそれなりに栄えていたのだろうが、往時の様子を見てみたいものである。
旧線区間は役目を終えると、自然に還りダムに沈む。
ダムの上を渡るため、橋が高い位置に架かる。ダム湖の底に重機が入っているところを見ると、整地しているのだろう…。
ももか「…別にわかんないなら付け加えなくていい。」
さくら「…なんかどっかでこういう橋見たことある気がするんだよね。」
新しく上に架かる橋と、沈みゆくであろう下の古い橋。朽ち果てるのか、それとも取り壊されるのか。朽ち果てるのならば逆に…。
ももか「そういう趣味もあんの?」
めぐみ「まあそこまでじゃないけど…。」
この橋は方向別で分かれている。新しく完成した道路は総じて線形がよく、さぞかし走りやすいことだろう。旧道は走りやすさでは劣るだろうが、風情や変化に富むという"味わい"がある。
ももか「免許もないのに偉そうなこと…。」
さくら「自転車とか原付ならこっちのほうがいいんじゃない?」
川原湯温泉の旧駅舎は木造で、線路付け替えと同じくして役目を終える。温泉地はすでに移転しており、旧駅の周りにはほとんど何も残っていない。
この辺りの集落はどうなるのだろうか?
ももか「家帰ってから調べれば?」
岩島に近づくと新線と合流する。
ももか「あれ、もういいの?」
さくら「トンネルは?」
めぐみ「わかんなかった。」
ここからはダム完成後もそのまま残る区間であり、往路でも景色を見ているので流しておこう。厳密に言えば、東京近郊にあたるのは線路付け替え後の吾妻線と思われる。
さくら「まあ大前行ってるんだし。」
ももか「じゃあ次あるなら温泉とか?」
めぐみ「考えてたけど。」
なぎさ「…わかりやすいな。」
渋川からは上越線を通る。
県庁所在地である前橋市に入ったので、群馬県庁を…。
めぐみ「ぼやけちゃった。」
さくら「慌てなさんな。」
タワー状の高層建築物が群馬県庁であり、県内で最も高い建築物である。周りに目ぼしい建物があるとは思えないので、最上階からの眺めは格別だろう。
大前から121分で高崎に戻ってきた。
ももか「一応これで…」
さくら「まだもう1つあるんだよね。」
ももか「もう1つ?」
さくら「埼京線のE233。」
ももか「そんなもの?」
さくら「そんなものって、LED照明もあったり…」
その前に、高崎線のE233系で大宮へ向かおう。
36.高崎15:55発→大宮17:16着 普通946M/上野行き モハE233-3229
また往路と同じ車両。
さくら「こうも当たるもんなの?」
ももか「さあ…、たまたまじゃないの?」
なぎさ「…寝ていいか?」
ももか「寝てなさいよ。」
やはり籠原で後ろに5両連結する。最高気温日本一を多治見市と競っている熊谷市も、こんな日ではそれも無縁。
景色は…?
めぐみ「完全にうちの近所だよ。」
さくら「こういう景色で上野行きって…。」
ももか「同じじゃないの?」
めぐみ「吉良吉田は違うよ。」
ももか「吉良吉田じゃなくって。」
類は友を呼ぶ…?
(つづく)