元々ブログネタで、区切りにしたい話がありました。時系列でいうならば随分昔になりますが、決めていたのも随分昔になりまして…。意を決して、旅行モノから一旦間を置くことにしましたが…。そこまでに至るまで、もう1つの物語がありました。


もうひとつの旅行班 第1夜『泣き虫なのが嫌でした』

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 彼女は『市川めぐみ』。お姫こと『姫路ももか』とは、度々出かけた話を聞いています。

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 私は『鶴岡まき』。彼女とは友達になりたかったといいましょうか…、仲良くなりたかったのです。(以下、"彼女"は『市川めぐみ』のことを指します。)

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 "彼女"はどこか癒してくれるような…、優しげでかわいい子。それでいて飾った感じはありません。でも"彼女"の悪いところ…。優柔不断と言うか、はっきりしたことを言いません。

 そして出かけた話にお姫が絡んでくること。"彼女"はお姫に行き先を教えなかったのです。そんなことなどを不満に思い、日に日積もっていきました。

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 お姫は"彼女"とタイプが違って、かわいさを表に出すような子。言いたいことといいますか、不満を結構口にする性格なようでした。私も"彼女"も、あまり面に向かって言う性格ではありません。そんなお姫とも…、友達になりたかった私です。

 思えば私は流されやすかったのかもしれません。私は"彼女"をよく思わないグループとも、そこそこ付き合いがありました。お姫からの不満も合わさって、"彼女"をいじめたきっかけになってしまったのです。

 "彼女"は言い返しもやり返してもこず、何か我慢するように泣くだけでした。それなのに、泣き方までかわいくて…。気づけば泣かせたくなってしまい、溜まっていた不満をぶつけるように繰り返しいじめていました。

 いけないことですし、そんなことが長くは続きません。私はグループと共に呼び出され、先生たちから謹慎処分を言われます。このとき私は"彼女"を恨み、"彼女"も私を恨んでいたかもしれません。それが、高校2年の話。

 3年生になりました。私はまた"彼女"と、そしてお姫と同じクラスです。"彼女"との関係はすっかり冷え切って、お姫とも仲良くなりたい気持ちが起きません。

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 そこへやってきた、転校生の『黒坂なぎさ』さん。"彼女"ともお姫とも異なり背の高い美人系、ただどこか冷たい雰囲気を見せています。私やみんなは素性を知らずに近づきましたが…。

 黒坂さんは何一つ応えてくれません。2年生のときの"彼女"みたいに、いじめるまでにせずとも困らせようとは少し思いました。でもあのときの私では、もうありません。

 あのよく思わないグループは、矛先を私に向けていました。やはり私は利用されただけ…。言い返しもやり返しもできず、我慢することしかできません。ただどうしても、泣きたくなかった私。"彼女"みたいになりたくない。

 見れば、"彼女"が泣いていました。私は本当に何もしていません。また誰かがいじめたのでしょうけど、心当たりなどは全くわかりません。

 思い浮かんだ可能性は…、黒坂さん。何を考えているのかわかりませんし、"彼女"と比べて強そうなのは明らか。でも仮にいじめたとして、どこかおかしいのです。

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 そういえば、"彼女"はよく『津山涼子』さんに泣きついていました。私にはそういった存在がいませんので、内心羨ましかったのでしょう。そして黒坂さんも、他の人といる様子を見たことがありません。

 それから少し過ぎてからでした。

 "彼女"は意を決して、黒坂さんのところへ向かいます。その後…、なんと黒坂さんが泣いてしまったと聞きます。私はもちろん、何が起こったのかわかりません。誰が…、ひょっとして…!?

 私はお姫を一旦疑いましたが、お姫は当然のように否定しました。もしかして津山さんはどうなのかと考えたそばから、…思いも寄らぬ話でした。

 "彼女"が泣いた理由、それは黒坂さんに近づこうとしても近づけなかったから。そして相手の気持ちを考えたらと言う津山さん。考えているうち、とても悲しくなってしまったというのです。"彼女"は何もできません。

 それでも何かしてあげたい…、そんな"彼女"と津山さん。『岡山じゅん』先生の下へ相談するにも躊躇ったらしいのに、そこで聞いたという話。

 先生は黒坂さんのお姉さんと友達であり、昔に黒坂さんともよく遊んでいました。でも…、黒坂さんは他の人と。特に同い年の子と遊んでいるのを見たことがないといいました。それに…、黒坂さんは気弱で泣かされてばかりだったらしいのです。

 今となってはみんな、そのようなことを信じられません。何より先生が先生になって、久しぶりに会った黒坂さんの様子を信じられなかったのです。背の高い美人系で冷たい印象を見せていますし、何か怒らせてはいけないような雰囲気がありました。

 "彼女"も一度は黒坂さんに近づくのをあきらめ、先生でさえそれを受け入れました。しかし津山さんは許しません。手伝いながらでも、"彼女"を黒坂さんに近づけさせます…。

 実は黒坂さんも"彼女"のことを気にしており、それも些細な落し物がきっかけでした。"彼女"が泣くごとに、何かしてあげたいなどと…。

 冷たい印象と怒らせてはいけないような、黒坂さんの雰囲気。それはコンプレックスを隠すように、泣くのをやめていていたから。荒れた噂も、それが理由かもしれません。

 それに先生と津山さんが手伝いながらでも、"彼女"をそこまでさせてしまって…。本心にはもう逆らえません。先生が言っていた昔の黒坂さんは、気弱なまま変われなかったのです。"彼女"への応えは決まっていました。

 私にはそんなことできません。あんな勇気を振り絞らせることも、後押ししてくれる津山さんみたいな人もいません。いたのは"彼女"をよく思わないグループであり、しかも私は利用されたに過ぎません。

 私は全ての自信を失って、逆らえず泣くほかできなくなりました。いくら"彼女"や黒坂さん、津山さん。お姫から友達になりたいと言われても、そんな資格なんかありません…。
(つづく)

…挿絵が間に合わないので最初だけ。