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「トゥース!」
「…何やってんの?」

※本文は創作文書です。

2017年6月8日(木) 同じ13連敗なのに強調される在京球団

近隣の地、所沢で迎えた西武との交流戦。
新人の池田が力なく大量失点、打線も勢いを見せず惨敗だった。
スタジアムに響くファンのため息、どこからか聞こえる「ざまあ。」「ぶわぁーか。」「ジゴクニオチロ。」の罵声。
無言で帰り始める選手達の中、ベンチから独り出られないヨシノブ。

翌日は北海道でとの交流戦。
マイコラスは力投し、打線こそ勢いを見せなかったものの勝利。
長い連敗を止めたものの、スタジアムはファンのため息ばかり。そればかりか…?
「つまらん!」
「そういう了見だからあんたの野球はつまらない。」

さらに翌日から連敗。負ければ罵声を浴びせられ、勝てばつまらないと言われる。
帰り始める選手達の中、ヨシノブは自力で動けなくなった。

そして東京ドームに戻った練習日、選手の話に耳を疑った。
「監督の言うことを聞いちゃダメじゃないか。」
もう誰も信じられない…、ヨシノブは独りベンチで泣いていた。
アテネオリンピックとそのアジア予選で手にした喜び、感動。そして何より信頼できるチームメイト…。
それを今の巨人で得ることは全く不可能と言ってよかった。
「どうすりゃいいんだ…?」
ヨシノブは悔し涙を流し続けた。

どれくらい経ったろうか、ヨシノブははっと目覚めた。
どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たいベンチの感覚が現実に引き戻した。
「帰って調べモノしよう…。」
ヨシノブは苦笑しながら呟いた。
立ち上がって伸びをした時、ヨシノブはふと気付いた。

「あれ、お客さんがいる…?」
ベンチから飛び出したヨシノブが目にしたのは、外野席まで埋めつくさんばかりの観客だった。
千切れそうなほどに旗が振られ、地鳴りのように巨人軍の歌が響いていた。
どういうことか分からずに呆然とするヨシノブの背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「ヨシノブ、守備練習だ。早く行くぞ。」
声の方に振り返ったヨシノブは目を疑った。
「…松井さん?」
「なんだヨシノブ、居眠りでもしてたのか?」
「…工藤監督?」
「なんだヨシノブ、かってに工藤さんを引退させやがって。」
「清水さん…。」
ヨシノブは半分パニックになりながらスコアボードを見上げた。
1番:仁志
2番:清水
3番:江藤
4番:松井
5番:高橋由
6番:マルティネス
7番:二岡
8番:村田善
9番:工藤
暫時唖然としていたヨシノブだったが、全てを理解した時もはや彼の心には雲ひとつ無かった。
「勝てる…、勝てるんだ!」
川相からグラブを受け取り、グラウンドへ全力疾走するヨシノブ。その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった…。

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翌日、監督は姿を見せなかった。試合はそのまま進められ、皮肉にも連敗がまた止まっていた。
自宅に引きこもりネトゲ廃人と化したヨシノブが発見され、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った。
(おわり)

パソコンで使用するブラウザはFirefoxなので、一応どこかで大丈夫だと聞いていますけど。明るみに出る5月時点では特に問題ありませんでした。