日本に帰ってからも、僕は忙しく撮影に追われていた。そんな毎日を送っていた僕に落とし穴があった。流通の編集の青木さんに「ミック、スタジオ取っておいて!」と軽く頼まれて、いつものようにコマフォトのスタジオガイドを見てそのまんまの写真を信じて、ロケハンもせずにいきなり現場に行ったときの事である。今のようにネットでスタジオを確認する事が出来ないので、普段は必ずロケハンをしていたのに、気のゆるみと、怠慢な気持ちが重なって下見をせずに現場についた時に僕はあぜんとした。とんでもなく狭く、作りは安っぽく、おまけに汚かった。とどめは整備不良のストロボや機材だった。青木さんは僕に「ミック、ロケハンしたの?」と怒って聞かれ、僕は「すいません、してませんと」正直に答えた。ここから始まった僕の撮影はほんとにひどいものだった。ぼくはそのころ35mmを狂ったようにモータードライブをぶっ放す乱暴な撮影から、手持ちながらmamiya6x7の中判カメラを室内ロケには敢えて使うようにしていた。その理由はみんなに僕の事が知られるようになって来て、「parkは上手いんだか、下手何だか分からないな、ヘタウマだよ!」そんな噂を耳にしてから、僕も意地になってそんな言葉に負けないように、敢えて中判カメラで勝負に出る事が増えていた。そんな矢先に試練が待っていた。先ず背景が行かせないほどひどい物だったので、背景を落とし、暗くする事に先ずはトライした。しかし狭すぎて光が回ってしまう。スヌートを作ろうとしたが、あいにくケント紙も無い状態だった。おまけにシンクロはうまく行かず、ストロボが飛んだり、飛ばなかったり。極めつけは、光量が不安定でメーターを取るたびに、fー値が微妙に違う。「もう、ほんとにこのカビ臭いハウススタジオから逃げ出したかった」しかしそんな訳にも行かず、ヘアーメークさんは着々とモデルさんを仕上げていった。そして、僕にしてはあり得ないくらいの数のポラを気がつくと切っていた。自分の不甲斐なさを痛感した。そして狭い空間の中、青木さんは無口のまま煙草を何本も苛立を抑えるようにすぐ近くで吸っていた。僕は怖くて、ポラも満足に見せられなかった。いや、見せられる状態ではなかった。最悪な空気がかび臭と混ざって余計に僕はコントロールを失っていった。