「きっと、これ以上は駄目ですね」


尚哉さんがそう言った。


「…ですね」


「でも、出会えてよかった」


「私も」


それ以上、言葉はなかった。


雨が降り出した。私はカバンから折りたたみ傘を取り出す。


「尚哉さんも、どうぞ」


「ありがとう。でも、今日は別々に帰りましょう」


彼はそう言って、小さく微笑んだ。


傘を閉じたまま、私は雨の中を歩いた。冷たい雨粒が、頬を濡らしていた。


それが涙なのかどうか、自分でもわからなかった。