千尋は、あの夜を境に藤崎と距離を取るべきだと思った。
けれど、、
気づけばまたジムで彼を探してしまう。
そして、ある夜。
「……会いたい」
自分から送るのはやめようと決めていたのに、気づけば指が動いていた。
すぐに返事が来る。
「今、出られる?」
その短い言葉に、千尋の心臓が飛び跳ねた。
夜の車も人の姿もない静かな交差点近く。
藤崎の車が止まる。
乗り込むと、彼は無言で千尋の手を握った。
「……もう戻れなくなるよ?」
そう言われても、千尋は答えなかった。ただ、握られた手をそっと強く握り返した。
そのまま、車は静かに動き出した。

