触れた指先は、熱を持っていた。

それは、私のせいか、彼のせいかーー

どちらか分からなかった。


「…美咲さん」


藤井さんの声は、いつもより低く、少しだけ震えていた。


拒まれない。

それどころか、彼もまた、この時間を惜しんでいるように見えた。


その確信が、心の奥の何かを外す。


私は、そっと手を重ねた。


「…もう少しだけ、このままじゃダメですか?」


掠れた声で囁くと、彼は息を飲んだ。


「美咲さん、それは大丈夫ですが…」


「…ごめんなさい。でも、私、藤井さんともっと一緒にいたいんです」


私の指が、彼の手を撫でるように動く。

藤井さんは、少しだけ戸惑ったように見えたーーけれど、ほどなくして、ゆっくりと私の手を握り返した。


(ああ、終わった)


そう思った。

もう戻れないと分かった瞬間、怖さよりも、ただ嬉しかった。


藤井さんも、私を求めてくれている。

それが分かるだけで、どうしようもなく幸福だった。


「…俺も、実は同じ気持ちなんです」


絞り出すように言われた言葉に、心が震える。


(私たちは、もう…)


それでも、私たちは「これからどうする?」とは口にしなかった。

ただ、指を絡めるように手を繋いだまま、静かに見つめ合うだけだった。


***


家に帰っても、指先の熱が消えない。


(何をしてしまったんだろう)


自己嫌悪が押し寄せる。

けれど、心の奥では、後悔はなかった。


(もう手を離せない)


引き返せない場所まで来てしまった。


次に会ったときーー


その時に全てを。