「それ、面白いですよ。きっと好きだと思います」


古本市で手に取った本に、突然かけられた声。視線を向けると、ショートボブの女性が笑っていた。


「読んだんですか?」


「ええ、何度も。落ち込んだ時に読むと、ちょっとだけ救われる気がして」


彼女はそう言いながら、指先で背表紙を軽く撫でた。


その仕草が、妙に印象に残った。


「……読んでみます。おすすめされたなら、なおさら」


「外れだったらごめんなさいね。あ、私、長谷川美沙って言います」


「宮田です。宮田、、涼」


名乗るのが少しだけ遅れたのは、

心のどこかで何かを意識したからだ。


その日、僕たちは本の話をしながら、

駅までの道を一緒に歩いた。


「宮田さんって、本の選び方が優しいですね」


「そんなこと言われたの、初めてです」


「だと思った。そういうこと、誰も気づいてない気がしたから」


彼女の言葉は冗談めいていたのに、やけに真っ直ぐ胸に響いた。


第2話