あれから連絡を取り、何度か会っていた。映画、カフェ、美術館。
特別な約束をするでもなく、でも会えば自然に心が和らいでいく。
それが嬉しくて、そして少し怖かった。
「奥さんとは、仲良いんですか?」
その質問が出たのは、雨上がりのカフェの窓際だった。
「悪くはないけど、今は会話も少なくて…たぶん、お互いに距離を置いてる」
「そっか。……ごめんなさい。聞いちゃいけなかったかな」
「いや。聞いてくれても、良いよ」
僕はそう言いながら、彼女の指先がカップをいじる動きを見ていた。
彼女は何も言わず、でも目が少しだけ潤んでいた。
「宮田さん、ずるいですよ。優しくて、誠実そうで…でも、一歩は踏み込まない」
「それは…そうしないと、、」
「……たぶん宮田さんに、壊れてほしいなって思っちゃう私は、ずるいですよね」
その言葉に、何も返せなかった。
ただ、その夜の帰り道、何度も彼女の言葉が頭の中で繰り返された。
次回、最終回に続くー
