季節がひとつ、静かに変わろうとしていたある日。

彼女は、少し遅れて待ち合わせのカフェに現れた。


「ごめん。今日は話したいことがあって」


彼女の声は少し震えていた。でも、笑顔だった。


「わたし、宮田さんと終わりにしようと思ってて」


「……?」


「宮田さんを好きになったから。奥さんもいるし、ちゃんと終わらせないと、これ以上は辛いから…』


『私、次に行けないから…』


「僕は…どうすればよかったんだろう」


「わかんない。でも、手を伸ばしてほしいって、どこかでずっと願ってた自分がいて、でも、それは叶わないって、わかってたから」


僕は言葉を探した。でも、何一つ見つからなかった。


「たぶん、宮田さんは誰かをちゃんと守ってるから…それでいいんです」


帰り際、彼女がふと振り返った。


「会えてよかった。好きになれて、よかったよ。ありがとう」



その言葉に、僕はうなずくしかなかった。


彼女に手を伸ばせなかった自分が、妙に辛かった。




『あの日もう少し手を伸ばしていたら』

ー終わりー