『 ご、ごめんっ!!』
ハッ、と我に返って慌ててまさきを離した。
『 … う、ううん。
はい、どうぞ。 』
無理やり抱き締めてしまったのに、
恐る恐る窺ったまさきの顔は、
怒ってる様子もなくて、
むしろニッコリ笑って
オレの手にクローバーをのせてくれたから、
『 あ、りがとう。 』
ホッ、としたのも束の間、
自分の起こした大胆な行動に、
今更ながらドキドキしてきて、
そのドキドキが、
治るどころかますます激しい鼓動へと変わっていくのを感じて、
マズイ、と思った。
息を整えようとするものの、
胸が苦しくてなかなかうまくいかなくて、
でも
目の前のまさきに悟られないように、
必死で笑顔を作って、浅い呼吸を繰り返す。
今ここで発作を起こしてしまったら、
まさきに、迷惑をかけてしまう。
いつかの、
あのまさきの、泣き顔が頭を過って
それだけは、
絶対、避けなきゃ、って
落ち着け、落ち着けって自分に言い聞かせてたら
突然の耳鳴りに、襲われた。
目の前のまさきが、
なにか言った気がしたのに、
その声は、オレには届かなくて。
聴こえないのに、
聴こえたフリをして
笑顔で、誤魔化した。
まさきの前では、
普段通りのオレを振舞えてた、ハズ。
ちゃんといつもの分かれ道で、
『 じゃあ、ね。』って言えた、ハズ。
何度も振り返るまさきを見送ってから
途切れそうになる意識をなんとか持ち堪えて
じいちゃんの家に着いた途端、
オレの記憶はそこで、
プツリと、途絶えた。