まさきくんには、
病気のことは、伏せていた。
話す機会は、いちど、あった。
点滴の跡が残る腕を隠したくて、
真夏なのに長袖シャツばかり着てるオレに
『 あつくないの?』って
まさきくんが、聞いてきた時。
咄嗟のことに言葉が詰まって、
ホントの事を言おうか、
どうしようか、
凄く迷って、
でも結局、言えなかった。
まさきくんをまた、泣かせてしまうんじゃないか、って
それが、
怖かった、から。
まさきくんは覚えていないだろうけど、
まだ出会ったばかりの頃、
オレはまさきくんの前で派手に転んだ事があった。
恥ずかしさが先に来て、
痛みなんてほとんど感じていなかったけど、
膝に滲んだ血を見て顔色を変えたまさきくんは、
そのキレイな瞳から
突然、ポロポロと大粒の涙を流したんだ。
『 いたい、ね。
だい、じょうぶ。
いたい、の、いたい、の、とんでけっ。』
声を詰まらせながらも、
膝にふーふーと息を吹きかけながら、
一生懸命、何度も
大丈夫、大丈夫っ、て繰り返してくれたまさきくんの、
その姿を見て、
胸が、詰まった。
まだたったの5歳なのに、
オレの痛みを自分のコトのように感じて、
必死で慰めようとしてくれる
そんな優しいまさきくんを、
自分が、泣かせてしまった。
いつものキラキラした笑顔を、
オレが奪ってしまった。
その事実が、
膝なんかよりずっとずっと、
痛かった。
その痛みは、
大人になった今でもずっと、
胸に、覚えてる。