春休みは学生にとっては時間が十分に取れるありがたい時期である。
そこで、春休み中に何か一冊読んでおきたいと選んだのが『呪われたナターシャ-現代ロシアにおける呪術の民族誌-』(人文書院)です。なんと300頁近くもあります。
著者は私が学んでいる神戸市外国語大学の藤原潤子先生で、文化人類学を専門にされています。本書は著者の博士論文が元になっている学術書です。
例によって本書の案内を人文書院のサイトから引用します。
1991年のソ連崩壊以降、ロシアでは呪術やオカルトへの興味が高まった。本書は、三代にわたる「呪い」に苦しむナターシャというひとりの女性の語りを出発点とした現代ロシアの民族誌である。呪術など信じていなかった人びと―研究者をふくむ―が呪術を信じるようになるプロセス、およびそれに関わる社会的背景を描く。
みなさんは呪術をどう思われるだろうか。科学的ではない、迷信であるなどと一笑に伏して済む問題なのか、そういう疑問を
持ちながら私も読んでみました。
著者は三代にわたり呪いに苦しむ一人の女性・ナターシャへのインタヴューをきっかけにロシアにおける呪術を解き明かしていきます。
ナターシャ以外のロシアの何人かの呪術師へのインタヴュー、超能力者とよばれる呪術師、科学的側面からの呪術、マスメディアにおける呪術、そして学術研究における呪術の扱いへとアプローチは多岐にわたります。そして本書で紹介されている呪いの例が日本の場合とよく似ていて興味をもって楽しめました。
著者は「ロシア人が皆、呪術を信じているわけではない。呪術など迷信であると考える人が多数派であり、アンケートで呪術を信じると回答する人は七パーセントにすぎない。しかし本書で示したように、ロシア社会には随所に、呪術のリアリティを保証する言説が込められている。今日、呪術など信じないと言っている人でも、未来においても同じかどうかはわからない。・・・」と結んでいます。
呪術を迷信と切り捨てるか、信じるかは本書で紹介された「効かないなら呪術知識が残るはずがない、効くからこそ伝えられた」という言説の論理に従うこと、すなわち実際に体験するというリアリティの繰り返しの多いか少ないかによるのではないだろうか。
日本ではお彼岸といってはお寺に、年末にはキリスト教徒でなくともクリスマス、正月には神社に参拝するといった具合で神など信じていないはずなのに神頼みをするというのも、神など存在しないと切り捨てられないと人々が考えている証左であろう。
わたしごとで言えば、母親が真言宗の布教につとめる傍ら、呪術のようなものを人々に施していた記憶があります。この人に狐の霊が乗り移ったので何とかしたいとか聞いたことありませんか。わたしは母親から聞いた記憶があります。
この際、我が国に存在してる呪術について調べてみたいですね。