よく見かけるこの花は、アベリアといいます。
近所の緑地にたくさん咲いていました。
小さい白い花は地味な印象で、あまり着目されませんが、
かすかな甘い香りを持っています。
一つ一つの花の香りはそばによって顔を近づけないとわからないくらいの微香ですが、
これくらいたくさん咲いていると、濃厚に感じられます。
梅雨直前の湿った空気がすこし動くだけで、
甘く、狂おしく香ってきて
まるで酔ったようになり、
私はこの花のそばを、一時間も離れることができませんでした。
花から花へと忙しそうの飛び回るミツバチやハナアブなどの小さい昆虫たちも、
この香りに惹かれてここを離れられずにいるのでしょう。
風にのってサラサラ音を立てながら、
水分をたっぷり含んだ空気に香りを乗せれば、
すべては思いのまま。
世界を征服することだってできる、
というアベリアの心のささやきが、風に乗って聞こえてきます。
アベリアの世界征服は
梅雨直前の空気の動きがもたらした奇跡によって、実現しています。
ですが本人はそんなことにおかまいなく、この状況を当然だと思っている。
アベリアだけではありません。
私たちに今起こっていることはすべては奇跡なのですが、
なかなか気付くことができないのです。