横浜市内の、郵便局の入り口に植えてある常緑樹なのですが、
ちょっと変わった木です。
タラヨウといいます。日本に古くから自生するモチノキ科で、10~20メートルになる小高木です。
春に小さな黄緑色の花が咲き、秋には赤い実をつける普通の常緑樹ですが、
特筆すべきは、冬でも青々としている葉についてです。
肉厚なタラヨウの葉は、裏側に先のとがったもので傷をつけて、文字を書くことができるのです。
日本では、経文を書いたり葉をあぶって占いをするなどに使われてきました。
インドで経文を書くのに使われた貝葉の原料であるヤシ科のタラジュ(多羅樹、Corypha utan)という木のようだということで、タラヨウの名がつけられました。
葉を一枚採って来て裏側に竹串で文字を書いてみると、最初は薄かった文字がだんだんに浮かび上がってくっきりとした黒文字になります。
調べたところによると、採ってすぐの葉よりも半年や一年置いた葉の方が、はっきりした文字が書けるそうです。
文字を書くことに使われるのは紙です、日本に伝わったのは奈良時代ですが、
まだまだ貴重品だったため、木の葉は代用品として、歌や短い手紙を書くのに使われてきました。
タラヨウの葉はその代表格と言えます。
葉書(はがき)の語源になったこの木は、郵便局のシンボルツリーとして入り口近くなどによく植えられています。
あまり知られていませんが、タラヨウの木の葉の裏に文字を書いて切手を貼ると、定形外郵便として出すことができるのだそうです。
日本には、漢字が伝わって来るずっと以前に神代文字のようなものがあったと言われています。
日本人にとって文字を書くことは、自分の心にあるものを表現することであり、
筆やペンの先に精神を集中させて行う、祈りにつながることでもあります。
言葉は、「ことの葉」、日本人の最古の歌集は「万葉集」。
紙は「かみ」⇒神であり、自己表現や祈りを受け止めてくれるものでありますが、
それの代用品として「木の葉」は、
誰でも自分の心にあることを書き記すことができるように、
自然界に用意されたものであると思います。
