昆虫の記事も山場を過ぎた感じがしたところで、
9月から10月にかけてにやっていた「秋の七草シリーズ」が途中だったことを思い出しました。
「葛」だけ、まだ書いていなかったのです。理由を思い返してみると、
お花の写真が撮れないから書けなかったのでした。
葛の花です。自分で撮った写真ではありません。
葛はマメ科クズ属のつる性の多年草です。
日本では、根を用いて食材の葛粉や漢方薬が作られるなどして、古くから身近にあった植物で、秋の七草として親しまれてきました。
大変に繁茂力が高く、生命力の強い植物です。
つるを伸ばして広い範囲で根を下ろし、木でもフェンスでも人家でも、あらゆるものに巻き付いて成長し、
何もないところでも互いに巻き付き合ってひたすら伸びていきます。
一日に30センチ成長するという記録もあるそうです。都会では空き地や線路わきなどで大繁殖しているのをよく見かけます。
近所の高層マンション脇にも生えていて、9月の初めに咲くはずの花を期待していたのですが
成長しすぎて見苦しかったのでしょう、8月に刈り取られてしまって、花を見ることができませんでした。
仕方ないので、また成長してつぼみをつけるのを待っていたのですが、
秋になって気温が下がってきたせいか、一向にその気配がありません。
ツルを伸ばして葉だけは旺盛に茂っています。
11月現在、こんな感じです。冬になって葉が枯れると道路がちらかるので、恐らくその前に刈り取られてしまうと思います。
都会に生える葛はこうやって人の手で管理されているのですね。なかなか花にお目にかかれない理由がよくわかりました。
日本では管理されながらも、秋の七草として愛されている葛ですが、
いろいろ調べていて、アメリカに進出して大変なことになっていると知りました。
葛は1876年にフィラデルフィアの独立百年祭博覧会の際に日本から運ばれ、
飼料作物および庭園装飾用として展示されたのをきっかけとして、
東屋やポーチの飾りとして使われるようになりました。
緑化・土壌流失防止用として政府によって推奨され、20世紀前半では持てはやされたそうですが、
その繁茂力の高さや拡散の早さから、有害植物・侵略的外来種として指定されるようになり、
現在は駆除が続けられています。
アメリカではモンスター(手に負えない)植物として問題になり、
国際自然保護連合の「世界の侵略的外来種ワースト100」に選ばれ、
2017年には「クズ・ゾンビ」という映画まで公開されました。
アトランタの南では、ハイウェイ沿いにクズのつたに飲み込まれてしまったような廃屋がいくつも見られるそうです。
日本では人の手で管理することで人間と共存できているのに、なぜでしょうか?
理由はいくつかあるそうですが、その一つに、
湿気の多い気候の日本には葛の葉を食べてくれる昆虫が存在するので
ある程度繁殖が抑えられているというのがあります。
そういえば、近所に生えている葛の葉をよく見ると、穴だらけです。
おそらくカメムシやオンブバッタの仕業でしょう。
こうやって私たちが身近な野草として親しんできた葛が、
外国ではmonster Kudzu(モンスター 葛) という、有り難くない呼び名をもらっています。
調べたところによると、monsterというのは、怪物という意味もありますが、
ベストセラーや巨大な売り上げを治めた商品などのように、「偉大な、記録的な、巨大な」という意味でも使われます。
「monster」の語源は、「monstrum(モンストゥルム)」というラテン語で、「不可思議なもの、驚くべきことの前兆」という意味、
さらにその語源「monere」は「思い出させる、気づかせる」という意味の言葉だそうです。
身近な野草、秋に七草の一つとして日本では大切にされていながら、外国ではモンスターとなった葛。
「不可思議なもの、偉大なもの」として、登場したのでしょうか。


