前回の続きです。
昨日、近所の公園の前を通ったとき、カエデの先がうっすらとピンク色に染まっているのが目に入った。
紅葉にはまだ早いので、不思議に思って近づいてみると、
花が咲いたところが結実していた。ピンクに染まっているのは果実なのだ。
カエデの種は、プロペラのような形をしている。
よく見ると、実によくできている。そのうえ色までついているのだから驚きだ。
ピンクのプロペラ機はもう既に準備が完了して、秋風を待っている。やがて風に乗ってくるくると回転しながら空を飛んで移動し、着地したところで発芽する。
鳥や昆虫だけではなく、植物だって空を飛ぶことができるのだ。
自力では空を飛べないわれわれ人間は、鳥や昆虫を観察して「飛び方」を教わり、
「飛行機」という重たくてオモチャのように性能の低い物体を操作することで、飛べるようになった。
バイオミメティクス(biomimetics)という言葉がある。日本語に訳すと生物模倣技術という意味だ、
生物の構造や機能、生産プロセスを観察・分析し、そこから着想を得て新しい技術の開発や物造りに活かす科学技術のことで、
一例としては、1903年にはじめて空気よりも重い航空機の飛行に成功したライト兄弟は、
飛んでいる鳩の観察から発想を得たと言われている。
プロペラのような形のカエデの種は回転しながら落下することで、遠くまで移動することができる。
このデザインを取り入れて開発された、ドローンがあるそうだ。
トンボの羽からヒントを得たマイクロ・エコ風車も、バイオミメティクスのひとつだ。
他にも、個体としての動きだけでなく、稚魚が互いに一定の間隔を保ちながら集団で泳ぐところを観察し、
互いにぶつからず動き回るロボットの研究に生かすなど、さまざまな分野で研究がさかんである。
動物や昆虫、植物からヒントを得るというのは太古の時代から行われていたことである。
赤子が親の真似をするのと同じで、人間にとって自然の行いのようなものなのだろう。
わたしたちはアイディアやヒントが欲しい時、WEBで調べたり本を読んだり、テレビを見たり、
人と話したり,ふだん行かないようなところに行ったり、時間を取って思索にふけったりするが、
動物・植物・昆虫などを観察するというのも、やってみる価値がある。
人間とは違う肉体を持っている彼らは、地球上で生きていくために、実にさまざまだ。
わたしたちがとうてい考え付かないようなやり方をしているのを発見して、驚かされることがある。
トンボもカエデも、地球上での歴史は人間より長い。
彼らからは飛び方などの技術的なことだけでなく、生き方・成長のしかたも、学べるものがあるに違いない。
地球の自然界は、メッセージ・インスピレーションの宝庫だ。今だからこそ、自然とじっくり向き合う時間を取りたいものだ。

