前回の続きで、多摩川上流・古民家の説明員さんに聞いた話をもう一つ。
「青梅は江戸時代から、石灰岩の採れる地域として有名です」
石灰は木造建築の外壁の上塗り材として古来から使われてきた漆喰(しっくい)の原材料だ。
江戸城や日光東照宮の修築にも青梅の石灰が使用されている、というのは、この土地の誇りなのであった。
石灰運搬のため青梅街道が江戸まで開かれ、明治中期には青梅鉄道が立川まで開通している。
現在のJR青梅線に引き継がれているそうだ。
石灰石採掘場 ・青梅市指定史跡<青梅ナビ>
石灰は、さまざまなところでわたしたちの生活を支えている。
調べたところによると、
建設業ではコンクリートやモルタルの材料であるセメントの原料であり、製鉄業では不純物除去に欠かせない資源だ。
農業園芸分野でも、乾燥剤の原料としても利用されている。
石灰岩を高温で焼くと生石灰(酸化カルシウム)が生成され、生石灰に水を加えると消石灰(水酸化カルシウム)が得られる。
木造建築の外壁の上塗り材として古来から使われてきた漆喰は、消石灰に植物の繊維などを加えたものだ。これが江戸城や日光東照宮に使われているのである。
固くてごつごつとしていて、無機質のような感じがするけれど、石灰石は大自然の恵みの一つなのだ。
「多摩川上流は、石灰岩質の山々を削りとって流れているんですよ」
・・・この話を聞いて、心にあるものが閃いた私は、
古民家の見学を終えてから、あらためて多摩川に下りて行った。
川底や河原に、どんな石があるのか見てみたくなったのである。
川のあちこちに、このような巨大な石が存在する。
いつからここにあるんだろう。
人間が切り出したものか、自然現象によってここにやってきたものかわからないけれど、
多摩川の激しい流れの中で、一ミリも揺れ動かない。
まるで巨木のような存在感だ。
樹木のようなみずみずしさはないけれど、かわりに抜群の安定感がある。
地球と強固につながっているようにさえ見える。これが動くことがあるとしたら、どんな時だろう。
石にも意識があるそうだ。濁流の中にあって無言・身動きひとつしない彼らとじっと向かい合っていたら、
「不動心」とひとこと、心の中に湧いてきた。
・・・次回に続きます。
