荒れ地に真っ先に現れるパイオニア植物・苔のなかで、身近な種類をいくつか取り上げてきたが、
もうひとつ、是非とも触れておきたいのがミズゴケだ。
ミズゴケは、苔の中ではちょっと変わっている。茎と葉の区別があり、コケとしては身体が大きい。
最大の特徴は、保水力がきわめて高いことだ。ランなどの植え込み用土として、園芸ショップなどで乾燥ミズゴケが売られている。
世界に約300種類、日本には約40種類が分布していて、ほどんどの種類は湿原や湿地などに自生している。
調べた範囲でわかったことで、ちょっと専門的な話になるが、
一般的に植物は、光合成によって二酸化炭素を吸収し、酸素を放出する。
生命を終えるとすみやかに土壌の微生物によって分解され、植物体に含まれていた炭素は二酸化炭素として空気中に還っていく。
植物が「光合成で空気中に酸素を放出する」というのは誰でも知っていることだが、「死ぬと放出する炭素は、二酸化炭素となって空気中に還っていく」というのは意外と知られていない。
生きているときと枯れたときで、その収支はプラスマイナスゼロだそうだ。
ところがミズゴケの場合は事情が違うのだ。死んだ後の分解が遅く、炭素をなかなか空気中に放出しない性質があるという。
数千年というレベルで炭素を体内にとどまらせて離さない。
このような枯れたミズゴケは大地に蓄積されて、やがてペースト状の泥炭となって大地を覆う。北半球高緯度地方では、広大な面積のミズゴケ湿原があるそうだ。
ミズゴケは生命を終えても、水分を抱え込んだままだ。その上に、新しい青々としたミズゴケが育つ。そのようにして、ミズゴケの作る泥炭は地球の歴史とともに厚くなっていく。
人間にも言えることだが、生き物の中には、他にはない特殊な能力を持って生まれてくるものがいる。
ミズゴケは自らの「枯れた後も簡単に分解されず、泥炭と呼ばれる有機物となっていつまでも地上に留まり続ける」という能力で、
大気汚染・温暖化から、地球を力強く守り続けているのだ。
・・・そういえば、過去に記事にした葦(アシまたはヨシ)という植物も、ミズゴケと同じく地球を守る能力者だ。
葦は大地と水の境目に存在して、生物が分解しやすい環境を作る。
ミズゴケとは反対のことを行って生物が生きるための環境を作り続ける葦は、
日本で古代から生命の象徴とされているのだ。
ミズゴケは空気を浄化することで、結果的に地球上の生命を守っている。やっていることは正反対でも、どちらも生命を守ってくれることに代わりはない。
表に現れていることだけで判断できるものではないというのは、ここでも真実だ。
ミズゴケと葦について知ることでかい間みることのできる、大自然によって行われている空気・水・大地・生命の循環は雄大で、
人知の及ばないところにあると思う。
両方とも水を制することで地球の生命の循環を守るべく存在する、能力者なのである。
