テレビのコマーシャルで使われていたことがあった曲なので、何だか聞いたことがある、という方が多いと思います。
4年前くらいのことですが、趣味でやっているピアノの集まりで「弾き合い会」に出席した時にこの曲を披露した方がいて、このときはじめて、「ため息」という曲名を知りました。
人数は20人ほどの会でした。小さめの部屋で一番前の、ピアノに近いところに座っていた私は、
大きなグランドピアノが演奏に合わせてきしむ音までもよく伝わってきて、全身で浴びるように聴いていたせいでしょうか、
まるで宇宙のエネルギーでも受け取ったんじゃないかと思うくらいに酔ってしまって、その後2日間くらい頭の中でこの曲が聴こえ続けていたのでした。
「ため息」というこの曲に合わせて、いつの間にか呼吸を繰り返していました。吸って、止めて、吐いたらまた止めて・・・と、
ゆるやかで忙しい流れに合わせて、実にゆっくりと呼吸を繰りかえすという、
少し異様な状態でした。今思うと、私はこの曲に合わせて「深い呼吸のトレーニング」をしていたと思います。
呼吸は深くゆっくりがよい、と言われているのをあちこちで見聞きします。誰でも一度くらいは深呼吸の練習をしたことがあると思いますが、
その必要性を認識していなかったそのころの私にたいする、導きであったと思います。向こうからやってきて音の振動で全身を包んでくれ、必要な行いに導いてくれる。音楽はときとして、このような魔法を起こすことがあるものだと思います。
今だに頭のなかで思い出すと、自然と呼吸がゆっくりになります。
この曲を作ったフランツ・リストはハンガリーの音楽家で、ピアニスト・作曲家として19世紀に大活躍をしました。「ピアノの魔術師」と言われていて、どんな難曲でも楽譜をひとめ見ただけで弾きこなし、ときにはオリジナルアレンジを加えて誰にもまねできないような演奏をしたということです。
リストはこの曲を「3つの演奏会用練習曲」の中の最後の曲としています。「ため息」という曲名は彼自身がつけたのではないそうですが、とても甘美で詩的でいつまでも続きそうに感じるところがぴったりです。
「史上最高のピアニスト」ともいわれていて、その天才ぶりをあらわすエピソードがたくさんあるリストに私は夢中になり、彼に関する本ばかり読んでいた一時期がありました。
今思うとその先に、この「ため息」による深呼吸への導きがあったのではないかと思います。
1冊だけ持っているリストの曲集に載っていました。今度自分でも譜読みをしてみようと思います。
