5月20日 第6講 | だから構造家は、楽しい

5月20日 第6講

第6回目


テーマは「梁と床」。

長期鉛直力に対し、曲げ抵抗する部位のお話。


といっても実際のところ床の説明はせず単純梁を中心に解説。


δ=5wl^4/384EI

の式について、ホームセンターで買った12×10の細長い棒を用いた簡易実験を行いながら解説。


Eは材料の話なので、大体の場合が変更不可。

lのスパンなので、先に設定されている場合が多いのでこれも変更不可。

とすると、変更可能なのは、wとIだけ。

wは一般的には支配幅(=梁ピッチ)に左右されるので、最終的にはIが設計対象。


これは固さ(剛性)の話。


一方、力が作用しすぎると壊れるという場合もあるので、

許容応力度fbと断面係数Zについて説明し、

許容曲げモーメントM=fb・Zであることから、wやlが既知の場合の設計対象がZであることを説明。


これは強さ(強度)の話。


プロの建築家であっても、剛性と強度をごちゃ混ぜにして話している人を時々見かけるが、

基本的にこれらは別モノで、きちんと区別して話せなくてはいけない。


無論I=Z・h/2なので、両者に関連はあるのだけれど、剛性は剛性、強度は強度なのである。


ここまで話したところで、学生の表情はあまり冴えない。

シングルラインで描かれた単純梁の曲げモーメント図に何の意味があるのか?

IとZの関係は説明を聞いてわかったが、だから一体何なのだ?

と言わんばかり。


そこで、6m×7.5mの平屋屋根を設計する例題を与えてみる。

小梁を架ける際の流儀などもセットで教える。


さっき教えたやり方で、必要なIと必要なZの組み合わせが求め、それを満足する梁をH形鋼から3パターンほど選び出す。


何らかの試験であれば、その3つのどれかにしてあれば正解として○をつける。


が、3つのどれでもOKと喜ぶのではなく、そこから1つに決めるのが設計なのでココで終わらずにもう少し教える。


ワタシはナゼこれに決めたか


が答えられなければ設計したとは言えない。


教える側としては、その中のどれでなければいけない、ということは決して言わない。

生徒が判断する際の判断材料を提供するところまでが教員の仕事。


とりあえず、

#総鋼材量で選ぶ

#梁成で選ぶ

#柱との取り合いで選ぶ

といった、決定要因の候補だけ説明。


多少鋼材量が増えても、梁成の小ささを活かしたカッコイイ建物をデザインできていれば許されます。

逆に、自分のデザインに自信がないのであれば、鋼材量が一番小さいものにしておけば、一番リーズナブルです、という強力な免罪符がもらえます。


要するに、設計者は最後、自分の決めた内容で相手を説得するわけで、それは説得力の問題なわけです。