建築構造設計と法規制
6月は京都でスタートです。
午後1時から、大学で(財)日本住宅木材技術センター理事の室田達郎先生の特別講義。
大学で講義を聴くのは7年半ぶり。
室田先生は京大から建築研究所を経て現在の職につかれている方。
以前は法を作る側に立っていた人物ではあるけれど、基本的には構造設計における法規制による悪弊に大いに懸念を抱いている人物でした。
けっこう過激な内容でもありながら、しかし、そこには僕がこのブログで書いている内容と非常に近い部分もあり、非常にうなずくことが多く、また、腑に落ちることが多い、大変に実のある講義でした。
1998年の建築基準法の改正における性能規定化によって、
建築基準法は構造安全性に関する要求性能を規定しました。
それは、建築基準法第20条により
「政令に定める基準に従った構造計算によって確かめられた安全性」
と定義されています。
この性能についての法律上の概念には、
①法令に構造計算の基準を定める。
②その基準どおりに構造計算をして、建物全体あるいはその部分についての適法性を確かめる。
③その結果、その建物は全体としてあるいはその部分について「なんらかの適法な性能をもつことが証明される。
④それらの性能の総体が、法律の要求する構造安全性能である。
という手順を踏んでたどり着くことが出来ると室田先生は解説してくださいました。
法20条は構造安全性能とは何か?ということを実質上何も言及せず、代わりに適法性の証明方法について述べているに過ぎない、というわけです。
適法=安全、と思い込まされているだけの話だと。
そもそも安全とは何なのでしょう?
言われてみると当たり前のことですが、なかなか気づかないものです。
このあたりのことは
『科学』Vol.74、No.9、Sep.2004
にて述べられていますので、興味のある方はそちらをご覧ください。
人が死なない建物をどれだけ真剣に考えて作るか。
おきるかおきないかわからない何百年に一度といわれる地震にそなえ、膨大なコストをつぎ込んで、その人が死なない(であろう)建物を作った結果、その人が貧しい生き方をしなければいけないのであれば、それは果たして幸なのかそれとも不幸なのか?
そういうことを構造設計者はまじめに建築主と語らねばならない、とおっしゃっていました。
深いです。
さて、この講義のあと、研究室へ戻り、
室田先生・教授・助教授・助手・僕の5人で、現在研究室で行っている研究課題について意見交換会を行いました。
キーワードは木構造のめり込み。
さすがに木材技術センターの理事だけあって、木材の性質から産業構造についてまで詳しい方でした。
木造については、あまり経験もなく、知識も少ないので苦手意識も多いのですが、非常に分かりやすく解説をしてくださいます。
森田さんと設計中の木造建物についても少し相談をすることに。
明日の研究協議会のときに、森田さんを紹介するお願いをして、本日は終了。