2004 | だから構造家は、楽しい

2004

まつもと市民芸術館の見学後、

中山英之さん設計の 2004 のオープンハウスへ。



2004正面

2004年のSDレビューの大賞受賞作。

構造は名和研二さん。


あのSDのスケッチがどこまで実現されているかを楽しみに家族連れで行ってきました。


とにかく楽しい家でした。


ひたすら写真で紹介します。


2004内観1


2004内観2


ベランダからの青空


2004内観3


2004内観4


2004内観5


子供たちは大はしゃぎでした。


家具もしっかりと、しかも洒落っ気たっぷりに作りこまれています。

階段下収納


階段下収納2

エントランスには、生コン工場から譲り受け自費運搬したというテストピースが埋め込まれていました。

エントランステストピース


クローバーはまだ成育途中のようですが、緑で覆われる日が楽しみです。

覗き込むムツロウさん


良い家かどうかは、お施主さんしか判断できないわけですが、僕は良い建築だと思いました。


僕が普段、部屋と呼んでいるものってイッタイナンダロウ?


と考えさせられてしまいました。


ちなみにうちの奥さん(建築素人主婦)は、

「楽しそうだけど、掃除しにくそうなのと、収納が少ないので私は住みたくない」

と極めて冷静で主婦的な反応。


って、施主の考え方が違えば、建築家の提案内容も変わるんだからさ。。。

あなたが施主ならこういう家にはならないもんよ。


さて、構造的に少し薀蓄をたれてさせていただくとすれば、


上の写真にもありますが、2階の床がものすごく薄くできています。

スチールの角パイプをぎっしりならべて、しかも力の集まるエッジは、ムク材を使用しているとのこと。


モノの使い方としては贅沢で、ある意味強引と指摘される方もいるかとは思いますが、僕は正解だと思いました


この床が100とか150の厚さをもっていたら、もったりしていて、あの一体感はなかったでしょうから。


また、基壇の1Fを持ち上げる柱には、150角ムクの柱(剛棒)が用いられていました。

これまた贅沢ではありますが、白い箱が浮いている感覚の実現に貢献しているのは事実です。


僕は、

コストを投入することで、それ以上の空間の質の向上が得られるならば、そのコストは積極的に投入すべきである

という価値判断をする人間なので、これらの使い方に対しては、賛成です。


乱暴すぎるのは嫌いですが、そのギリギリ手前で使われており、さすが名和さんであったりもします。


一方で、屋根については、床が激薄であるだけに、もう少し何とかならなかったものか、とも思いました。


外壁の壁に水平力を伝えるためか、屋根を切り取る枠までもが妙に分厚くなっています。


で、あるならば、全体を鉄骨造にしてしまうことはできなかったのか?

という疑問が最後に残りました。


これは、先日の所沢の住宅で、指摘されたことと同じ類の疑問なのかもしれませんが。。。

1階床の基壇までが鉄骨つくられ、その上に木の箱が乗るというのが最初の構造コンセプトであったのでしょう。しかし、2階の床にあれだけの鉄骨を投入し、また、屋根の切り取りによる偏心を防ぐために、建物中央には、屋根まで含む鉄骨ラーメンを持ちこんでいたわけで、それであれば、全部鉄骨造の方が、潔かったのではないかと感じました。


主要な耐震要素が木造壁であったが故に、

 木造(一部鉄骨造)

との説明がなされていましたが、もはや、

 鉄骨造(一部木造)

という物量の関係になっていたのも事実です。



構造的な感想は以上のようなものですが、建築全体が細部までしっかり作りこまれていましたし、それでいてとても楽しい建築でもあったので、僕は十分に良い建築の部類に入ると思いました。



さて、中山さんの次作「2006」は、幸いにも僕が構造設計させていただくことになっています。


そういうこともあり、「建築家中山英之のクオリティ」をしっかりとこの目に焼きつけるために、松本まで行ってきたわけですが、やはり非常にポテンシャルの高い人だと感じます。


まつもと市民芸術館の現場監理の時には、よく中山さんの下宿に泊めてもらっていた間柄でもあり、同い歳ということもあるので、ひょっとしたら贔屓目で見てしまっているのかもしれませんが、博学なだけではなく、モノを作りこんでいく真摯な姿勢など、多くの面でとても尊敬できる方です。


次作も多くの人に期待されることとなるでしょう。

構造がヘマをすれば駄作と呼ばれかねないので、僕も気を引き締めていかねばなりません。


(って、いつも引き締めて頑張ってますけれど。)


頑張ります。