池田巖展 | だから構造家は、楽しい

池田巖展

親しくさせていただいている漆芸家の池田巖さんの個展を見に、上京してきた母、家族とともに赤坂見附のホテルニューオータニへ行く。

池田巌さんは現代の漆芸家として作品を作るだけでなく、漆芸の歴史についても研究されており、うちの祖先の塗師としての業績や、漆芸界・茶道界に誤って伝えられていたうちの家と他家との関係について、色々と調べていただき、説を正した論文や書物を発表してくださっている方でもある。


今回の展示作品の特徴は、薄く削った竹の素地に何ヶ月もかけて漆を塗り、それを、木槌で壊しながらダイナミックで躍動感あふれる作品にしたてたもの。「壊す」と言っても、崩れ落ちる寸前の状態であり、壊れてしまう直前特有の緊張感がみなぎり、しかも力強さがある


池田巖展


今回の作品には、棗だとか花器といった特別な用途はなく、漆芸をファインアートの世界に導いたという意味で、通常の漆器とは異なる作品のなのかもしれないが、半ば素人の僕にとってはとても魅力的だった。かつての家業であった塗師という職業にさらなる興味を抱かせてくれたような気がする。