喫茶茶会記中国茶会『春水の茶事』樹齢800年の茶葉の力 | 俳茶居

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       煌々と唐十郎の夏帽子 (呑亀〉

喫茶茶会記中国茶会『春水の茶事』 樹齢800年の茶葉の力

茶会記茶会茶譜 (WさんのFBより)

四ッ谷三丁目の喫茶茶会記 さんでのお茶会、喫茶茶会記中国茶会『春水の茶事』が2016年3月6日開催された。今回で4回目を数え、奉茶人はW氏と俳茶居。初めて男子同士で務めることが叶った。お客様と4人のスタッフ、絶妙のコミュニケーションで寛いだ茶席が出来た。お客様の半数は何度かお見え頂いていて、会派の主催する「天空茶会 」へも常連の方々。茶席での雰囲気作りを自然とされているようで、嬉しかった。初めての方もすぐに馴染んで行かれた様子、早春の午後、楽しい茶席になった。

樹齢800年、広東省鳳凰山茶区で作られた単叢を披露した。『鳳凰単叢宋種』と名付けられたお茶である。「一本の老叢の静かで乱れの無い囁きを感じてほしい」と茶譜に紹介したが、華やかな主張をするお茶が多い中、そうではないお茶なのに、強く私の心を捉えた。自らの年齢のせいなのか、このお茶の静謐な佇まいを忘れることが出来ない。今回の茶席で、人生の先輩のお客様がいた。Mさんは、初めて中国茶を飲まれたようだ。さらにお茶というものを、丁寧に頂くことも初めてだったとの事。氏の中国茶の初体験がこのお茶であった事が、今後お茶への興味に繋がって頂ければ幸いである。


 お茶は茶席の主役であり、ある時素晴らしい脇役でもある。淹れ手と客(客同士も)は、お茶を手掛かりに気持ちを交わすのである。良きお茶は、人の心を素直に引き出す力を持っている。淹れ手はその為に全力を尽くすのである。

Wさんの茶席、村田益規作蓋碗の初陣


 男子茶席(淹れ手)を完成させようと、Wさんと練習を重ねた。改めて茶葉の量について考えさせられた。0.5gの差がお茶の命を変えてしまう。お湯の温度、量、茶葉の量の絶妙なバランスの中で、良きお茶は生まれる。しかし淹れる前にベストな方法は解っていない。氏の格闘は、ぎりぎりまで続いた。合理を尽くしたつもりでも、本番でその通りにならない事は起こるのである。練習と本番で、彼が手にしたものがある。それは、他人ではわからない。心の淵に一条の光が差した事を願うものである。

 おいで頂いたお客様に心よりの謝辞を伝え、再会を願う事とする。スタッフのMさん、Tさん、Wさんの労をねぎらう事とする。そして、喫茶茶会記ご亭主
のご配慮と、中国茶へのご理解に感謝したい。 2016年3月12日 俳茶居

俳茶居の茶席(WさんのFBより)



喫茶茶会記中国茶会 『春水の茶事』

  2016年3月6日(日)

1回目13:00~14:15  2回目15:00~16:15 (終了時間は目安)

口上

季節は啓蟄。大地が少しずつ暖まり水ぬるむこの頃、冬眠をしていた虫や蛙などが起き出します。お茶の木にも新しい芽が頭をもたげて来ています。山では、冬の間静寂に包まれていた渓流に、雪解けの水が日に日に増えて行きます。「春水の茶事」、春のお茶には間に合わないこの時期、選りすぐりの体を温めるお茶をご用意いたしました。

茶譜  

〇武夷正岩茶水仙  福建省武夷山 2014年製 

鳳凰単  種  広東省鳳凰山 2015年製

〇安 化  天尖茶  湖南省  化 2015年製



奉茶人 Wさん

      

スタッフ Tさん

Mさん


()夷正岩(いせいがん)(ちゃ)水仙(すいせん)

 福建省武夷山、太古の時代は海でした。褶曲活動を繰り返し、九曲渓と呼ばれる岩山が連なる世界遺産、風光明媚な観光地でもあります。ミネラル豊富な武夷山で育つ茶樹は、強い生命力を蓄えた茶葉になります。荒茶に仕上げてから何度も焙煎し、岩骨花香と言われる『岩韻』を創り出します。香り高い芳醇な「武夷正岩茶水仙」をお楽しみください。

鳳凰(ほうおう)(たん)(そう)(そう)(しゅ)

 広東省、鳳凰山茶区烏東(ウードン)山の樹齢八百年の一つの木(単叢)から作られたお茶です。鳳凰単叢は果実系の香りが特徴で、蜜蘭香・黄枝香・桂花香・杏仁香など、約80種類にも及ぶ香りの違いにより名前が付けられています。本日は、鳳凰単叢の華やかさではなく、一本の老叢の静かで乱れの無い囁きを感じて頂ければと思います。

安化天尖(あんかてんせん)(ちゃ)

湖南省安化は、千両茶で有名な黒茶の故郷。天尖茶は、穀雨のころ湖南黒毛茶の芽と一芯一葉使い、時間を掛け丁寧に散茶にし上げられます。最後に松の木を使い焙煎し、松煙香を付けます。野性味溢れる花香が口に広がり、爽やかな後味が残ります。煎を重ねると甘さが増します。清の道光年間(18211850年)皇帝への貢献茶だった由緒あるお茶です。