乗客を待つ列車 三陸鉄道 | 防浪堤は壊れても ~たろうの海から~

防浪堤は壊れても ~たろうの海から~

「防浪提に抱かれて磯の香りも生き生きと」
田老一小校歌の歌い出しです
津波が来ても二重の防浪提が守ってくれると思っていました
津波はその防浪提までも破壊して、ふるさとを壊滅さた
それでも、やっぱり海は麗しいし、川は清い

 今日、三陸鉄道が全線復旧したようです

 ヽ(゚◇゚ )ノ

 三陸鉄道は自動車がない人にとっては貴重な足なので、復旧はとても嬉しいです

 ただ、今の状況ですと、ほとんどの方は駅まで行くのにバスを利用しなければ行けないという問題があります

 鉄道は早くていいんですけど、乗り換えが大変だから、そのままバスで行くという人も多いようですね




 土曜日の放課後、中学校の帰り道でコージにその話をしたら「オレもそこに連れて行け」という。隣にいたマサオも「オレも行く」と言い出した

 その話とは叔父の家の近くの川でイワナを大釣りした話だ

 叔父の家へは三陸鉄道とバスを乗り継いで1時間以上もかかるし、お金も掛かると説明したが「大丈夫、行くべ」ときかない

 しぶしぶ明日の朝の三陸鉄道で行くことにした。

 列車とバスだから、フライロッドもルアーロッドも無理だな。と3人とも折りたたみの渓流竿を持っていくことにした

 朝、家にコウジとマサオが迎えに来て、3人で駅へと向かう

 道すがらタクに会った

 タクは無類の釣り好きなのはいいとして、同時に無類のおしゃべりなので秘密の釣り場には一緒に行きたくない。たくさん釣れたら誰彼と無く言いふらすのは目に見えてる

 「3人でどこへ釣り行くの?」

 めざとく渓流竿を見つけたタクが聞く。「いつものとこ」と答えて通り過ぎるが、カンだけはいい彼は後ろを着いてくる

 「ついて来るなよ」と言っても

 「いつものとこならいいべ」と離れようとしない

 まあ、金も持ってないだろうから汽車に乗ればついてくることもないだろうと田老の駅にチャリンコを置いて3人で階段を上りはじめた

「やっぱり遠くに行くんだ。どこ行くの、イワナ、ヤマメ、それともマス。オレも連れてってよ」と案の定騒ぎ出した

「遠くだよ、汽車賃とバス賃で片道千円ぐらいかかるな。」諦めると思ったら

「待って、家に戻ってお金と釣り道具をとって来るから

「待ってって言ったって汽車の時間があるからな。まあ、もし、間に合ったら連れてくよ」タクの家までは駅から優に3キロはある。あと5分もしないうちに発車時刻だから、まず間に合わないだろうと思ってそう言った。

 タクは猛スピードで階段を駆け下りるとチャリンコで走っていった「あいつが来るとうるさくてダメだよ」と2人が言う

「絶対間に合うはずねえべ」

 階段を上ると同時に、ホームに白地に赤いストライプの入った派手な汽車が入って来た

 道路が見える窓際の席に座って「どのぐらい釣れっかな」と話が盛り上がる。タクのことはもう忘れていた


 プオーっと汽笛が鳴って列車が動き出す

 窓から外を見ると真っ黒に日焼けした坊主頭のタクが、チャリンコに乗ったまま、遠くからなにやら叫びながら手を振って猛スピードで走ってくる

 ギャハハと3人で窓の外を指さして大笑いしていたら、突然列車が止まった

 ン!なんと列車が止まってタクを待っているようだ

 列車が1人の客を待つなんてあるの?

 何だかめんどくさいのが来ちゃったよ。と3人で顔を見合わせた



 運転士さんにもよるのかもしれませんが、三陸鉄道は時間に遅れて走ってくる人が見えると、止まって待っていてくれた時がありました

 ローカル線だからこそできたのでしょうけど、ありがたかったです