舞台
西加奈子
2022/08/03
★ひとことまとめ★
人はみな、自分を演じている
↓以下ネタバレ含みます↓
作品読みたい方は見ないほうがいいかも
【Amazon内容紹介】
生きているだけで恥ずかしい――。自意識過剰な青年の、馬鹿馬鹿しくも切ない魂のドラマ!29歳の葉太は初めての海外一人旅でニューヨークを訪れる。
恥ずかしい観光客と思われないよう、ガイドブックを暗記して臨んだ葉太だったが、滞在初日で盗難に遭い、無一文に。
虚栄心と羞恥心に縛られて助けを求めることすらできないまま、一人マンハッタンを彷徨う羽目に……。
決死の街歩きを経て、葉太が目にした衝撃的な光景とは――?
【感想】
こちらはお客様から頂いてから読んでいなかった本です
西さんは「白いしるし」「窓の魚」などを読んで何となく合わない作家さんだな~という印象があり、読むのを避けていたのですがせっかくいただいたので読んでみました
結論から言うと、以前感じた読みづらいという印象は全くありませんでした
以下あらすじです
主人公は29歳の葉太。父は大きな文学賞も受賞した作家。家は裕福で、容姿にも恵まれていてモテる。
客観的に見れば何不自由なさそうだが、葉太は子供の頃の経験から後悔と羞恥を異常なまでに嫌い、人前で恥をかかぬよう自分を演じ続けてきた。
はしゃいで調子に乗っているといつかバチが当たる、とてつもない羞恥と後悔に襲われる。
それだけはなんとしても避けたい。
日々恥の意識と自戒の意識を強く持ち続ける葉太が、唯一素直になれるのは小説を読んでいるときだけだった。
そんな葉太は、父が遺した金で一人ニューヨークに訪れる。丸暗記するほど読み込んだガイドブック通りのニューヨークの街並み。ここでは自分を演じなくても、「まるごしの自分」でいられるのではないか?
そう感じた葉太は、つい「はしゃいで」しまう。
憧れのセントラルパークで、芝生に寝転がりながら好きな小説家の新作小説を読む。その小説のタイトルは「舞台」。
さあ、これから…と言うところで葉太は男にバッグを盗まれてしまう。
財布やパスポート、スーツケースの鍵も無くし一刻も早く男を追いかけるべきなのに、「ニューヨークに来てはしゃいでいたところ泥棒にバッグを盗まれた観光客」と周囲に思われたくないがため、またも自分を演じてしまった。
はしゃいだことでバチが当たったと猛烈な羞恥と後悔に襲われる葉太だったが、異国の土地で身寄りもお金もないという極限状態に陥ったことで、徐々に「まるごしの自分」になっていく…。
自分を演じ続けるのって、疲れますよね~…。葉太も躁鬱って感じでしたが、精神疾患になると思います
どれが本当の自分なのか…本当の自分の気持ち、自分が本当にやりたいことって…?と自分がわからなくなってくるんですよね~。。。
しかも、自分自身を許すこともできず責め続けるだと、そりゃ精神も病みます
極限状態に陥った葉太は良いのか悪いのか、どんどんなりふり構わず「まるごしの自分」になっていくのですが、もう生きていくために本能だけで生きているって感じですね…。
自分も完璧主義なところがあるので、恥をかきたくないという葉太の気持ちには共感ができます。
けれど自分が30年以上生きてきて感じているのは、みんな自分が思うほど人のことを見ていないし、覚えていない、ということです。
確かに、恥をかきたくないと日ごろから強く感じている人は、人の恥ずかしい場面も良く覚えているかもしれません
自分が気になっている部分(コンプレックスなど)は、人のものでも目につきやすいですよね~。
けれど、気にしていない人(大半の人)って全然気にしていないんですよね。
私自身人の失敗とか恥ずかしい場面とか、思い出そうと思っても全然覚えていません。所詮そんなものなんだなと思うようになってからは、「恥はかき捨て」の精神を持つようになりました
特に仕事なんかだと「わからないって言うのが恥ずかしい」「質問するのが恥ずかしい」と思う事もあるかと思うのですが、
恥ずかしいという気持ちから行動しないでいるとどうなるか…。
お客様に迷惑をかけてしまったりして、結局自分が困るわけですよね。
その場限りの羞恥心と、後々トラブルになって困るのと、どちらを選びたいか。。。
私は自分の羞恥心なんかよりも人に迷惑をかける方が何百倍も嫌なので、めちゃくちゃ聞きまくってます
というかむしろ、「わからないことが多くて沢山質問しちゃう人」「私気になります!キャラ(えるたそ?w)」を演じているかもしれないです。
一度そういうキャラ・ポジションになってしまえば、周りからは「そういう人」として見られるので、恥ずかしいということもなく、むしろ周りから「一生懸命だなあ」と感心すらされることもあります
結局、恥ずかしいから行動ができないっていうのは、プライドや虚栄心が高すぎるんですよね。
自分のことを高く見積り過ぎている。自分の思い描く自分と、実際のギャップに羞恥するわけですよね。
ならそもそも、自分を高く見積もらなければ良い。自分はそんな高尚ではないと思えば良い。
と、私は思っていますね…。
こういう考え方をするようになってからはずいぶん気持ちが楽になりました
葉太が、情けない自分を受け止めることができてよかった
助けを求めるために駆け込んだのが、冒頭でマズいマズいと罵っていたダイナーというのもよかったな。なりふり構わない感じがして