天に堕ちる
唯川恵
2022/05/06
★ひとことまとめ★
そこは地獄か天国か…
↓以下ネタバレ含みます↓
作品読みたい方は見ないほうがいいかも
【Amazon内容紹介】
出張ホストを買う孤独な女・りつ子。自殺願望のある風俗嬢・茉莉。八人の女と同居する中年男性に安らぎを求める加世子。アイドルのおっかけに夢中の高校生・奈々美。女になりすましてメールを書く淋しい青年・光。息子を溺愛する有名女優・黎子―彼らが求めたものとは?欲しかったのは、当たり前の幸せだった。「幸福」にも「愛」にも、色んな貌がある。10篇の天国と地獄の物語。
【あらすじ & 感想】
久しぶりに唯川さんが読みたい気分でした
ほとんどの登場人物が、第三者から見たら地獄にズブズブと足を突っ込んでいきます…けれど、本人たちからしたら、そこは天国なのかもしれない。
一時の幸せのために、地獄に突き進んでいく女性たち。
破滅に進む人と、そうじゃない人との違いはなんなんでしょう。理性?
己の欲するままに突き進んでいけたら確かに幸せかもしれないけれど…私には無理だなあ…
そうは思いつつも、登場人物たちの言葉には共感できる部分もたくさんありました。
「今の映画、つまらなかった」と言われれば「ほんと、ストーリーが陳腐よね」と相槌を打ったし、ウェーブがかかった髪とスカ―トが好きと聞けば、紙にはいつもホットカーラーを使い、好みのファッションに身を包んだ。
それなのに、男たちはいつの間にか距離を置き始める。
「忙しいんだ」「こっちから連絡する」を繰り返して、いつか知らない人よりもっと遠い存在になってゆく。(P19)
→学生~社会人の初めの頃は私もそうだったなあ~。わがままを言わない従順な女性が良いと思っていたんだけれど、だから飽きられるんだよね。つまらないと思われちゃうんだよね。
もう、鳴らない携帯を握り締めて「あの人は私のことをどう思っているのだろう」なんて考えなくても良いのだ。(P20)
→私が結婚したい理由も突き詰めればこれだったな。好きな人がいなくなってしまう不安をこれから感じなくて済むんだと本気で思った。
でも、結婚したとしてもいなくならない保証なんてないからな~自分の気持ちも変わっていくものだし。
ふと、三十数年前、この男に身も心も奪われていた自分を思い出し、正江は呆然とする。そんな時が確かにあったのだ。
好きで好きでたまらず、信夫のことを考えると夜も眠れず、会いたくて会いたくて、会えば触りたくて(P38)
初めて会った時、不快なところがどこもなかった。喋り方も食べ方も手の形も指の動きもごく自然に受け入れられた。それはとても大切なことのように思う。(P115)
→好きなものが一緒より、苦手なものが一緒のほうがいいと言うように、不快に感じる部分がないというのは重要ですよね。
けれど、好きなうちは不快なところすら見えなくなるんだよな~それが厄介。そう思うと、お見合いや紹介のほうが冷静に相手を判断できるからいいのかもなあ~。
どれだけ仕事が認められても、マンションを自分で買えても、たった一人で生きていくなんて自分にはとてもできない芸当だった。
やはり家族が欲しい。人生を寄り添って生きるパートナーが欲しい。テレビを見ながら一緒に笑い、外で食事してもふたりで家に帰って、化粧を落とした顔で「おやすみ」が言えて、五年後の話ができて、何より「うちのダンナがね」と他人に言える、そんな安らぎが欲しかった。(P143)
世の中には、二種類の女がいる。結婚しないと生きて行けない女と、恋愛だけで生きて行ける女だ。どっちが不幸かと聞かれれば、どっちも不幸と答えるしかない。
男がいなくても生きて行ける女にならない限り。(P156)
一番悲しくなったのは「光」の話だったなあ…
自業自得にしては、代償が大きすぎるような。ようやく、それまで何に対しても卑屈だった光が希望を持って生活できるようになってきたのに。連れ去られた路子は無事だっただろうか。。。
また唯川さんの本読もうと思います~