蝶々の纏足・風葬の教室
山田 詠美
2022/01/03
★ひとことまとめ★
多感な少女時代の心の内
↓以下ネタバレ含みます↓
作品読みたい方は見ないほうがいいかも
【Amazon内容紹介】
私の心を束縛し、私の自由を許さない美しき親友のえり子。その支配から逃れるため、私は麦生を愛し、彼の肉体を知ることで、少女期からの飛翔を遂げる(「蝶々の纏足」)。
教室という牢獄の中で、生贄となり苛めをうける転校生の少女は、自分を辱めた同級生を、心の中でひとりずつ処刑し葬っていく(「風葬の教室」)。
少女が女へと変身してゆく思春期の感性をリリカルに描いた3編
【あらすじ & 感想】
宇垣美里さんが、自分の原点に近い本として「風葬の教室」を挙げていたので気になっていました
今回初めて山田さんの本を読みました。
こちらの本には、
ある2人の少女の主従関係とも呼べる関係性を描いた「蝶々の纏足」、
転校先の学校で苛めにあう少女の、学校生活を送るうえでの心の持ちようを描いた「風葬の教室」、
幼少期に愛情の中にある孤独と恐怖に気が付いたことで、母の歌う”こぎつねこん”の子守歌を聞くと泣き叫んでしまうようになったある少女のお話「こぎつねこん」
この3作品が掲載されています。
山田さんの作品を読むのは初めてだったため、読み始めたときは少し戸惑いました。
というのも、表現が純文学的で比喩表現も多く、純文学かま苦手で大衆小説をよく読む自分は文体に慣れるまで少々時間がかかりました
(あと官能的なシーンがあるのも苦手に感じた原因の1つかも)
「蝶々の纏足」・「風葬の教室」は、
私が学生時代に少女らしさを持ち合わせていなかったせいなのか、
もしくは作品の少女たちと遥かに年齢も境遇もかけ離れてしまったからか、
残念ながら感動・共感があまりできなかったです
思春期に読んでいたら共感できたのかもしれない。
この2作品を読んで改めて感じたのは、
思春期の恋愛というのは少女の心や考え方に、非常に大きな影響を及ぼすということです
どんな環境でも、
好きな相手がいる、心の拠り所がある、精神的肉体的に受け入れてくれる相手がいることで
明日も生きようという気持ちになれる。
大人になると少し複雑になり、
たとえ恋人がいてもそれ以外(結婚、子供、将来のこと)の悩みが発生しますが、
思春期だけで考えれば、好きな人や恋人の存在って家族以上に生きる糧になるのではないかと感じます。
家族よりも好きな人・恋人の存在のほうが大切だと言うわけではないのですが、
肉体的にも受け入れてもらえるという点が重要なのかなと思います。
度を越してしまうと依存になったり逆に精神を病みそうでそれはそれで問題ですが、
恋人との逢瀬に期待を膨らませ、今日も頑張ろうと活力になるのであれば、いいことなんじゃないかなと感じます。
親や学校は良しとしないと思いますが…。。。
一方通行で自分に対する愛を手に入れることはできない、肉体的に満足することはない点が不安にならないのであれば、好きな相手はアイドルなどでも良いと思います。
難しいんですけどねー
肉体的に受け入れられることで承認欲求を満たすことが非常に良くないことは、経験上よーーーーーくわかっていますが、
とにかく壮絶を環境を生き抜くための1つの手段としてはアリなのかなと。
麻薬みたいなものですが…
うまく使えばモルヒネみたいな鎮痛効果として利用できるのではないかと思います
「こぎつねこん」は、
幸せであればあるほど、裏に潜む孤独や不安に恐怖を感じてしまうという部分に共感しました
今はとても幸せだけど、もしもその幸せが急に無くなってしまったら?
私も結構日常的にそのように考えて不安になってしまう質なので、恐怖でどうしようもなくなる気持ちはよくわかります。
お母さんの歌う子守唄は、作中では
"こぎつねこんとなく なぜこんとなく"
の部分しか出てきませんが、
母を思い鳴いている、という歌で
「サスケのわらべうた かあさんのうた」
という歌名だそうです。
私は知らなかったのですが、「サスケ」というテレビアニメが50年以上前に放送されていて、そのエンディングソングだったそうです。
少年忍者であるサスケは敵に母を殺害されてしまいます。母を亡くした悲しみを抱きつつ、父と共に敵と戦っていきます。
要所要所でサスケの母との回想シーンが流れ、その後ろでは母がサスケに歌い聞かせる子守唄(こぎつねこんとなくの歌)が流れているそうです。
もしこのストーリーを知ってたら、こぎつねこんの歌を娘に聞かせる子守唄にはしませんよね
そりゃ主人公が「それは子守唄にならないよ」って言うのもわかります。
主人公の言うように、子守唄はつまらなくて投げやりな眠りに陥れるような「どうでもいい歌」か、幸せな眠りにつけそうな歌がいいんじゃないかなと思います
純文学があまり得意ではないので、今後山田さんの別の作品を読むかはわかりませんが、
有名な作品は読んでみようかなーとも思いました