だから見るなといったのに
恩田 陸・芦沢 央・海猫沢 めろん・織守 きょうや・さやか・小林 泰三・澤村 伊智・前川 知大・北村薫
2021/04/29
★ひとことまとめ★
ゾクっとしたいときにどうぞ
↓以下ネタバレ含みます↓
作品読みたい方は見ないほうがいいかも
【Amazon内容紹介】
色とりどりの恐怖をどうぞ召し上がれ。
あのとき、目をそらしていたら。でも、もはや手遅れ。あなたはもとの世界には二度と戻れない。恐怖へ誘うのは、親切な顔をした隣人、奇妙な思い出を語り出す友人、おぞましい秘密を隠した恋人、身の毛もよだつ告白を始める旅の道連れ、そして、自分自身……。背筋が凍りつく怪談から、不思議と魅惑に満ちた奇譚まで。
作家たちそれぞれの個性が妖しく溶け合った、戦慄のアンソロジー。
【感想】
ホラーともミステリーとも言えないけれど、ぞわっとするお話が収録されています。
ぞわっとしたりいや~な気分になったお話を抜粋して、感想を書いていきます
・あまりりす(恩田 陸)
K大学文学部歴史学科教授の長岡森太郎、彼は生まれ故郷に古くから伝わる伝統行事・オマツリで不幸にも命を落としてしまう。彼の教え子や友人達は彼を偲ぶ会を開き、思い出話に花を咲かせる。
宴も中盤に差し掛かり、酔いが回ってきた彼らは、長岡の死んだ原因であるオマツリについて話始める。
37年に一度行われるその行事は、5日間かけ山の中にあるお旅所に村に伝わるご神体を運ぶというものだった。ただし、運んでいる最中は声を発してはいけない、目も開けてはいけない。声を発すれば、「あまりりす」がやってきて鋭い歯で切り裂かれてしまう。
どうやら長岡はこのオマツリに参加し、途中で声を発してしまったがために「あまりりす」によって殺害されてしまったらしい。
また、「あまりりす」の名前は口に出してはいけない。「あまりりす」は耳が良く、自分の名前が呼ばれるとすぐに気づくからだ。
酔いが回り、大声でその名を口にしてしまった彼らは…
名前を呼んではいけない、見てはいけない系のお話ってよくありますよね。見たら異常をきたす系だと「くねくね」あたりが有名ですよね。
昔から洒落怖が好きでよくまとめサイトなどで読んでいたんですが、最近読んだ、「見てはいけない」というお話を思い出しました。
それにしても、名前を呼ぶと遠くからでも気付いてやってきて、しかも殺されるって、かなり恐ろしい存在ですね…
・妄言(芦沢 央)
【予知ができると自称する人間は、なぜその「見えた」というものを「予知」だと断言できるのであろうか?
見えるものが単なる未来だということは現実に起こり得るということであり、だったらなぜ現実と区別がつくのだろう?】
塩谷崇史・由美夫婦は、長年の夢だった一軒家を購入した。たった一つ気になる点があるとすれば、隣人の寿子についてだ。
引っ越してきた当初は少々お節介と感じる程度であり、寿子は由美本人が気づく前に由美の妊娠にもいち早く気づき、おかずの差し入れやお下がりをくれ、2人にとって頼もしい存在であった。
しかし、ある日を境にその関係は崩れ始める。寿子が由美に対し、「崇史が不倫していた」というありもしないことを吹き込み、妊娠中でナイーブになっていた由美はすっかり信じ込んでいまった。
寿子に直接否定しに行くも、彼女は不倫現場の具体的な場所や相手について話し始め、自分の妄想が真実だと思いこんでしまっているようだった。
由美は寿子の話を信じ、夫婦関係はギクシャクしてしまい、とうとう由美は流産してしまう…。
予知というのが寝ている時に夢で見るような予知夢なら別ですが、普通に過ごしているときにリアルな予知が眼前に広がったら、現実かどうかわかりづらいはずですよね~。
ドラマとかでよくあるのは、頭痛や耳鳴りなどがして、目を開けると予知が眼前に広がっていて、もう一度見てみると無くなっているってパターンですかね?
それくらい人や物の有り無しがはっきり分かる予知なら予知とわかるかもしれませんが、例えばある飲食店に遠目から知り合いが見えたとして、瞬きしても消えなければ、現実だと思い込んでしまいますよね。
なるほど確かに…と思ったお話でした。近くに寿子さんみたいな人いたら確かに虚言癖と思っちゃうかもな~。
・とわの家の女(織守きょうや)
「とわの家(や)」の芸者には決して恋をしてはいけない。
「とわの家」の女は年を取らず、いつまでも美しいまま、それには理由がある。
彼女とずっと一緒にいたいのであれば、客と芸者という関係を崩さないこと。
一度でも「とわの家」の女を抱いてしまったら、そこですべてが終わる。
「とわの家」の女と関係を持ってしまうと、死んでしまう…。
上司や周りの人間に幾度となく忠告されるも、住野はとわの家の芸者・糸香に恋をしてしまう。体の関係を持たないまま2人は付き合い続けるが、とうとう住野は周りの反対を押し切り、糸香にプロポーズをする。
プロポーズを受け入れた糸香と共に、初めて2人で夜を過ごすが…。
読み終わった後、「あ~そっちか…」と声を出してしまいました
結局、「とわの家」とは何だったんでしょうね??
なぜか、シン・エヴァンゲリオン劇場版:||の、綾波がLCLになっちゃうシーンが頭をよぎりました。
・高速怪談(澤村 伊智)
主人公・澤口たちは帰省費用を浮かせるために、カメラマン・真柄の車で複数人で帰省ドライブをすることに。知り合いだけでなく、知り合いの知り合いという初対面のメンバーも。
途中でよったパーキングで、漫画家兼イラストレーター・石黒が女性の死相の絵を書きだすのも気味が悪い。
再び走り始めた彼らは、暇つぶしに怪談話をし始める。
運転主交代のタイミングとなり、運転を開始した初対面メンバー・堀が「初対面である自分が堀本人だと、何を根拠に信じているのか?」「実は自分はなりすましで参加した。本当の自分は若い女性を何人も殺した殺人犯。先ほどの石黒の書いた女性の死相は、”この子”にそっくりだ…」と言い出す。
ここはかなりぞくっとしましたね…。
このお話では結局ふざけていただけで本人だったんですけど、確かに初対面の人がその人本人かどうかというのは、身分証でも見せてもらわないかぎりわからないですよね…。しかも車の中という密室ですし、ハンドル握られていたら下手なこともできない。。。
女性の死相の絵についてはちゃんとしたオチがあるのですが、それはそれで猛烈に怖かったです…私は人生で絶対に経験したくない。。。
見てしまったら精神を保てる自信がありません…。
ここでひとつ、このお話を読んで私が思い出した、ドライブでの怖い経験談でも…。
昔、婚活アプリで出会った人と、夜景を見に行こうということでドライブをしていた時、「人を刺すなら、正面からか背面からか、どちらがいい?」と聞かれ、空気が凍ったことがあります。
質問の意味がよくわからないけれど…、背面かな…と私が答えると、「俺は正面からかな、どんな顔しているか見たいし。」「実は(車の)トランクに、人を埋められるサイズのスコップを乗せてるんだ。」「刺されるならどっちからがいい?」と言われ、死を覚悟しましたね。。。
街灯もない細い道で、人通りもない…。それなりのスピードで走っているし、車から降りるのは難しい…。
友達に助けを求めるLINEをしようか、親に遺書のようなLINEをしようか、平静を装いながらも大パニックになりました。素性のよくわからない人とドライブなんか行った自分を本当に後悔しましたね…。
結局私を怖がらせるためのただの嘘で、普通に夜景の見える公園に着いたのですが、この人は私とは感性が違うと思いそれっきりでしたね…。。。
密室のなかで、あの冗談は本当に笑えませんでした。。。
1つ1つのお話は長くないので、読みやすいと思います。唯一、北村薫さんのお話だけは、少し私には難しかったかな…!