予言の島
澤村 伊智
2021/04/18
★ひとことまとめ★
絶対に外れない予言…
↓以下ネタバレ含みます↓
作品読みたい方は見ないほうがいいかも
【Amazon内容紹介】
瀬戸内海に浮かぶ霧久井島は、かつて一世を風靡した霊能者・宇津木幽子が生涯最後の予言を遺した場所だ。彼女の死から二十年後、“霊魂六つが冥府へ堕つる”という―。天宮淳は幼馴染たちと興味本位から島へ向かうが、宿泊予定の旅館は、怨霊が下りてくるという意味不明な理由でキャンセルされていた。
そして翌朝、幼馴染のひとりが遺体となって発見される。しかし、これは予言に基づく悲劇のはじまりに過ぎなかった。不思議な風習、怨霊の言い伝え、「偶然」現れた霊能者の孫娘。祖母の死の真相を突き止めに来たという彼女の本当の目的とは…。あなたは、真実に気づくことができるか―。比嘉姉妹シリーズ著者初の長編ミステリ。
【感想】
ぼぎわん、などらき、ししりばなど比嘉姉妹シリーズのホラーが有名な澤村さんですが、今回の作品はホラーではなくミステリーです。
主人公の天宮淳の幼馴染・大原宗作が自殺を試みたが、宗作の父が偶然同じタイミングに家を訪問したことで自殺を未然に防げた、という内容から話は始まります。
「死んだ嫁が知らせてくれた」と周囲に話す父。虫の知らせ、第六感というような非科学的なものにより、宗作は命を落とさずに済んだ。
自殺は防げたものの、ブラック企業勤めにより精神を病んでしまった宗作。彼を何とか元気づけようと、同じく淳の幼馴染・岬春夫は「”霧久井島”へ慰安旅行へ行かないか?」と提案する。
霧久井島とは……
かつて冝保愛子と並び世間の注目を浴びた霊能者・宇津木幽子。彼女が最後の予言を遺したと言われる島である。
幽子はテレビ番組のロケで霧久井島を訪れ、島民の反対を押し切り、霊視で怨霊が視えたと言う疋田山に登りそこで倒れてしまった。
それから2年、怨霊の影響からか幽子は病床に伏してしまい、ついに亡くなってしまった。
そんな彼女が最期に遺した予言が、"自分の死から20年後、霧久井島で6人が死ぬ"と言うものであった。
淳と春夫は非科学的なものは信じておらず、予言が外れるのをこの目で見たいという気持ちからの提案だった。しかし、非科学的なものにより命を救われた宗作は春夫の提案に興味を持ち、淳たちは予言通りの日時に霧久井島に旅行に出かける。
「疋田山にはヒキタの怨霊がいて、時々山から降りてきて災いをもたらす。ヒキタの怨霊が降りてくるときは、決して外に出てはいけない。
ヒキタの怨霊を退けるとされる”くろむし”と呼ばれる炭の置物を置くといいだろう…。」
淳たちが訪れた日は、まさに怨霊が降りてくるとされる日で、島民たちは淳たちに外に出るな、疋田山には決して登るなと忠告をする。
夜中、「春夫がいない」と宗作に起こされた淳は、外に出てはいけないという忠告を破り、2人で外に出て春夫を捜索する。
宗作とふた手に分かれ、港を探していた淳が発見したのは、変わり果てた春夫の姿だった…。
…これは、幽子の予言の始まりなのか?
春夫が亡くなったことを告げた際の島民の様子がおかしく、島民を疑い始める淳たち。
そんな中、第2の犠牲者が出てしまう―――。
話の途中で、ヒキタの怨霊は本当は何なのか、に気付く人多そうですね、私は”ひぐらしのなく頃に”を思い出しました
この作品の中のトリック・謎解き?は大きく分けて以下の2つだと感じました。
①ヒキタの怨霊の正体
②信頼できない語り手
①は読んでいる途中でも気付きますし、幽子がいもしない「ヒキタの怨霊」なんてデタラメを口にしたのが諸悪の根源であり、島民にとってはいい隠れ蓑だったのだと納得できます。
②に関しては、読んでいる間ずっと違和感、誰の視点で書かれているのか?第三者視点にしろ会話の部分がなんか違和感を感じるな~と思って読んでいたのですが、ラストで違和感の正体がわかりました
ただ…う~ん、騙す気満々というか、どう考えたっておかしいのに、あまりにも周りがナチュラルに扱い過ぎてて(普通もっとストレートな言い方するような…いくら幼馴染で事情を知っているとはいえ”おかん””お母さん”という単語が一切出ないってのが違和感)、読み返してもなんだかなあ…という腑に落ちないというのが私の率直な感想です。
謎解きは、ヒキタの怨霊の正体だけで良かったんじゃないかなと思ってしまいました。
②はどうしてもどんでん返しを狙った感が強いというか…。
結局、幽子の予言は結果としては”当たって”しまいました。
もしかしたら外れない予言というのは、予言に囚われた誰かが、予言通りにさせようと暗躍しているからこそ”外れない”のかもしれませんね
登場人物が強烈な人物が多すぎて、若干の胸焼け感があります