12冊目:ミナトホテルの裏庭には | 【読書感想文Blog】ネタバレ注意⚠

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ミナトホテルの裏庭には

寺地はるな

2020/02/17

 

★ひとことまとめ★

何年経っても大切に思ってくれる友人がいることが羨ましくなります

 

 

↓以下ネタバレ含みます↓

作品読みたい方は見ないほうがいいかも

 

 

 

【Amazon内容紹介】

大通りから入った閑静な地に佇む通称「ミナトホテル」は、大正末期に建てられたキャラメルのような見た目の宿泊施設だ。館内には四季折々美しい花が飾られ、骨董家具が設えられた六つの客室は防音仕様。看板を出していないのに、人知れず「眠れない」「食べられない」お客が集い、時には長期で滞在する者たちも―。誰かと繋がりあうことのよろこびを、やさしく温かく力強く紡ぎ出した、心に響く物語。
 
 
【感想】
ほっこりした気持ちになれる本が読みたくて、また寺地さんハート
 
 
木山芯輔の祖父・覚次郎は、中学時代の同級生らと「互助会」なるものを結成しており、みんなで寄り合ってよもやま話を定期的に行っていた。
その同級生の中の一人、湊陽子が亡くなってまもなく1年が経とうとしていたとき、湊陽子の息子である湊篤彦から、ある封筒が送られてくる。封筒の中には、かつて陽子が生きていた間に互助会の皆で書いた「我儘書道」が入っていた。
生前陽子が書道に書き残した、自身の葬式についての要望をすっかり忘れていた祖父たちは、陽子の一周忌に陽子の要望を叶えようと考える。しかし、そのためにはミナトホテルの裏庭の鍵を探さなければならない…。ミナトホテルの裏庭の鍵はたしか陽子の部屋のどこかにあるはず…。
その鍵を探すよう祖父に命じられ、芯輔はミナトホテルを訪れる。
 
ひょんなことから鍵探しだけではなくホテルのアルバイトも頼まれた芯輔は、篤彦や篤彦の同級生、互助会のメンバー、職場の同僚を巻き込みながら任務に取り掛かっていくうちに、自分の考え方や行動が徐々に変わっていくのを感じていた…。
 
 
あまり人と深く関わらないイメージだった芯輔が、篤彦たちと関わっていくうちにどんどん人間性が柔らかくなっていく感じがよかったな~。
作品は2話収録されていて、始めのお話しは芯輔たちが鍵を探すお話で、次のお話しは湊陽子が生きていた頃の、湊陽子視点でのお話。これもこれでいいのよね~。。。なんで書道にそんなお願いを陽子は書いたのかということがわかるんだけれど、互助会の強い絆が伝わってきて、こんな友人がいたら心強いよなあ…って思ったなえーん
自分の死後のお願いを実際叶えてくれる友人なんて、なかなか居ないだろう~えーん
 
 
自分的にぐっと来た文中の言葉をいくつか…
 
・不機嫌な他人に「なんだこいつ」と苛々してしまうと、負けだ。いつもそう思っている。他人の不機嫌に巻きこまれて自分まで不機嫌になっては、自分が損をする。不必要な不機嫌を抱えてしまう、というのは人生の損失以外のなにものでもない。(P73)
 
・「必死で戦っているからつかれるんだ、そうだろ」(P94)
 
・その程度のことでそんなに落ちこむのはおかしいとか、いつまでも引きずるのはおかしいとか、そうやって他人のつらさの度合いを他人が決めることこそおかしい、何の権利があって他人のつらさを判定しているのだ、君はあれか、つらさ判定員か、そういう職業があるのか、ないよな、えらそうに「たいしたことじゃない」とか言ってんじゃねえよ(P124)
 
・疲れたら休まないと。眠りに落ちる直前、そう言ってやるべきだったのだ、と思い、一度目を大きく開いた。「がんばらないとな」と言う初瀬に、「そうだな」ではなく、「休めばいい」と言ってやるべきだったのだ。初瀬はたぶん、それ以上はもう無理なほどに、がんばっていたのだから。(P132)
 
・誰にも頼らずやっていけるということは、たぶんそんなに立派なことではないのだ。だって誰かに頼られると、嬉しい。誰にも頼られることなく生きていくのは、むなしい。誰にも頼られぬ者は、自分もまた、誰かに頼ることができない。(P171-172)
 
・あなたに会えてほんとうによかったと思っていてくれる人が存在すること以上の幸福は、たぶんない。(P176)
 
・なんでもきちんとし過ぎると周りの人は息がつまってしまうのだ、と知った。だから、いつでも笑っているように。のんきそうに見えるように。時々は間の抜けた失敗をしてみせるように。演じつづけて、仮面はもう皮膚とぴったりくっついていると、陽子には感じられる。(P212-213)
 
・誰かを助けたい、という気持ちはたしかに尊い。でも鏡を見てみたらいい。自分自身をないがしろにしている人が、誰かを大切にできるわけがない。(P230)
 
・痛いとか辛いとかいう言葉を、いつも極力口に出さないようにしてきた。いつも明るく微笑んでいるように。他人にはやさしくするように。だって私は強いのだから。(P231)
 
・「強くても痛いものは痛いんだ」(P231)
 
 
素敵な家族愛の話であり、強くて深い友情の話でもありましたお願いラブラブ
やっぱり寺地さんの作品はいいですね…本
読んだあと穏やかな気持ちになれますコーヒー