愛の保存法
平安寿子
2019/08/19
★ひとことまとめ★
愛は保存できていないんじゃないか…?
↓以下ネタバレ含みます↓
作品読みたい方は見ないほうがいいかも
【内容紹介】
旋盤工場を細々と経営する鉄太朗のところにホームレス同然の格好で転がり込んできた理論物理学者、宅田。勤めていた医療機器メーカーをリストラされ、妻から離婚を言い渡され、ふらふらしていたところを工業高校で腰掛教師をやっていたときの教え子、鉄太朗の息子、鉄平に「拾われ」たのだ。社会のあらゆる約束事から逃れ、ただ素粒子物理学を勉強できれば幸せという宅田に鉄太朗は苦い顔だが、息子の頼みで追い出すわけにも行かない。そこに長女の晴香が同棲を解消して帰ってきて・・・(「寂しがりやの素粒子」)
さまざまなかたちの"恋愛"小説6編。
【感想】
夏休みの読書感想文で検索する人がめちゃ多です…私が小・中学校を卒業してもう20年近く経っているのに、いまの小・中学校でも同じ本が課題図書になっているのってなんか嬉しいね。
いい本はいつまでも読み継がれていくのですね~驚きなのは中学生でどうやらコンビニ人間の感想文書いている人もいるということ。
あれは中学生ではまだ色々理解するのは難しいんじゃないかな~って思ったり。
この本は、平さんだ!どんな本かな~って思ってあまり深く考えずに読んだんだけど、なんか内容が古いというか…いつの作品?と思ったけれど2005年…。そこまで大昔でもない。けどなんか時代がズレているというか…あまり共感できなかったなあ。
・愛の保存法
奈香子の友人である高坂まゆみと久井光太郎は、過去16年の間に3度結婚し、そのたびに結婚式を行い、そして3度離婚した。
そしてまた奈香子たちのもとに4度目の結婚式のメールが届く。まゆみから披露宴での司会を頼まれた奈香子は、まゆみ夫妻宅に招かれ打ち合わせを行うことになった。奈香子は抱えていた不満をまゆみたちにぶつけるが…。
4度も結婚(もそうだけど結婚式も)する人いるか?しかも呼ぶ友達から毎度毎度会費とるとか友達なくすよね
私だったら2回目ですでに行くかどうか怪しいわ…友達に愛想つかすまではいかなくても、少し距離置くかもしれない…。
呼ばれる周りの人間はたまったもんじゃないね。
・パパのベイビーボーイ
交際相手の琴絵と結婚することを決めた丈彦。丈彦の母は、丈彦が就職してすぐに病気を患い、丈彦の献身的な介護の末に亡くなった。父親はろくに就職もせず浮気を繰り返し、母の死後は恋人の元へ転がり込んでいた。
丈彦は父親を琴絵に会わせたくはなかったが、琴絵のどうしてもという願いから父親とその恋人に結婚の報告をしにいくこととなる…。
これほんとに言い方悪いけど気持ち悪い!自分の親が自分の婚約者とどうにかなってたらほんと気持ち悪いよね!しかも親のことが好きだから別れてくれ、とか。気持ち悪すぎる。
それがたとえマリッジブルーとか、婚約者への不満とかの言い訳だとしても、自分の親とキスするか?って思うよね…。
不満があるなら言えよ…
だって聞いてくれないんだもん!だって!!ってさ、だったら何してもいいのか…
親に対して色々と悩みを抱えていて、父親が父親らしいことしないから働きながら母親の介護をして、そんな苦労した丈彦に対して、一番やっちゃいけない仕打ちだと思うわ…。
けど、そんな女と寄り戻そうと丈彦も大概だ…。気色悪すぎてゾワゾワした。ある意味お似合いだ…
なんかうまくまとまっていい話みたいに終ったけど、私はもうドン引きです…。
でも丈彦の父親のいうことは「わかる」だった。さすが女のヒモばかりしてきた達人。
「女の人には、意見なんかしちゃいけない。そもそも、女の人には男の意見なんか必要ないんだ。」(P76)
・きみ去りしのち
剛の恋人の有子の母親が亡くなった。母親が闘病中、剛は有子の上下する感情に寄り添った。恋人を守り、頼られることに喜びを感じる剛。
しかし、母親が亡くなってから有子からの連絡は途絶えてしまう。連絡をしてもそっけなく返されてしまい、会いに行って何か手伝おうかと聞いても拒否され、電話もできれば辞めてメールにして欲しいと言われてしまう。
いままでとは打って変わって頼られなくなってしまったことで、二人の関係が終わってしまうのではないかと不安を募らせる剛だが…。
このお話も胸糞~!
いやまあ、わかるよ。母親が亡くなるのは本当に本当に精神的にも肉体的にもしんどいと思う。でもさ、それまで献身的に支えてくれた恩なんてまるでなかったみたいに、
「だって母親が亡くなって辛い私のこと支えてくれなかったじゃん!(何か手伝おうかじゃねーよ察しろ)」
「あなたは両親がご健在だから私の気持ちなんてわからないよね!」
「言わなきゃわからないってことは、わかる頭がないってこと。思いやりがない。」
って、どんな糞女だよww
しかも親が死ぬ辛さに寄り添ってくれた坊主を好きになったから別れてくれって…しかも剛も前の話の丈彦と同じように少しでも戻れたらって気持ちがあることに驚き…
むしろ気づけなかった自分がバカだったとも思っちゃってるし。
こんな無茶言いたい放題、人の気持ちをまるで考えない人とは付き合っていけないと思うぞ…。
楽しく付き合っていたときの二人は何も知らない子供だったって…、30歳でしょ…?
親を亡くす辛さは何歳だろうと関係なく辛いと思うけれど、にしても有子は糞。
そんな人と戻りたいと少しでも思う時点で剛も似たもの同士だな…。。。
・寂しがりやの素粒子
町工場で旋盤工として働く鉄太郎。妻は癌と闘病の末死去。息子の鉄平は工業高校に進むも不登校になるが、数学教師の宅田のおかげで無事卒業。これで自分と同じ旋盤工の道へ進むと思いきやアニメーターの養成学校に進学した。娘の晴香は美容の専門学校を卒業し美容院に就職すると同時に家を出た。
そんなある日、鉄平がかつての数学教師・宅田をしばらく家に泊めると言ってきた。会社を辞め妻からは離婚され、働きもせず論文を読むだけの宅田。鉄太郎の家であるにもかかわらず、自分よりも先に風呂に入り、人の家のインターネットも堂々と使う…。
我が物顔で振る舞う宅田のことを憎々しく思う鉄太郎だが、宅田により少しずつ考えが変化していく…
これもハア?でした…
頑固ジジイみたいな設定っぽいのに、なぜか面と向かって文句がいえない鉄太郎…おいおい…。ただの無口なオジサン、、?
鉄平も自分で好きで進んだ道なのに将来暗いよとか何を言っているのか…
晴香もあんなにギャーギャー言ってたのにコロっと宅田を見直すし…
一番怖いのは宅田のこの発言と、その後の鉄太郎の反応。
「ボクが与えられるもの、それは子供です。お父さんの跡を次ぐ子供。ね?これで受容と供給がピタリと一致です。」(P158)
・内容はたしかに鉄太郎のツボを押さえている。(P159)
・旋盤工の跡を継ぐ孫。その〈可能性〉が、鉄太郎の脳裏に張り付いた。(P161)
怖すぎだろ。働きもしない宅田と娘を結婚させるのも恐ろしいし、何勝手に子供を捧げ物にしてるんだって感じだし、子供の将来を勝手に決めるなだし…。そんな想像をして微笑める鉄太郎が怖い。
・彼女はホームシック
もうあらすじ書くのも…って感じなんだけれど…
文房具屋の主人である島津と、人材派遣会社で働く都季子。17年前、家電販売会社でOLとして働いていた都季子が、島津の文房具屋によく買い物に来ていたことが二人の出会いのきっかけだ。
近所の居酒屋で何度か一緒に酒を飲み交わす仲になったある日、都季子が持病の腰痛で倒れたため、家まで送った際に男女の仲になる。都季子と関係を続けるうちに、彼女が無類の不動産好きで引っ越し好きであることを知る。
そこから付き合いは続き、今では都季子の従兄の娘であり、島津の文房具屋でアルバイトをしているクルミも含め交流を深めていた。そんなある日、突然都季子から結婚をするというメールが届く…。
なんだこの関係って感じだし、もういい年の二人がわちゃわちゃしてるのを想像するとウゲェだし、島津もクルミにひっつかれることにまんざらでもなさそうですけべ親父みたいで嫌悪感…
唯一共感できたのは
・都季子と私は、離れない。ずっとそうだった。これからもずっとそうだと、無意識に信じていた。(P190)
これ男友達に対して私も思うんだけれど、多分違うんだろうね~。しょっちゅう電話したり会ったりしてて、これからもなんとな~くこんな関係が続くんだろうな~って思うけれど、たぶんどっちかが恋人できたり、結婚したらパッタリ終わっちゃうんだろうな~。(当たり前だけど。)
男女の友達って、どっちか、もしくは両方結婚したときどうなるんだろうね。友情も自然消滅する(させられる)のかね。お互いのパートナーが寛容な人、もしくは同じような価値観の人ならば全然会っていいよ~かもしれないけれど、なかなか難しいよね。
女友達よりもそいつのほうが会う頻度も高ければ、一緒にいて楽しいんだけれど、それもいつか終わってしまうんだろうな~しんみり~
・出来過ぎた男
何が出来たか?子供です。
信光はミチルとの間に娘の瑠璃、息子の貴光をもうけた後、フードコーディネーターの女性と浮気した挙げ句妊娠させ、それが原因でミチルと離婚。
フードコーディネーターの女性と結婚をするが、またも信光はヨガ講師の女性と関係を持ち、結婚はしないでいいので子供だけ欲しいと言われ彼女も妊娠させる。それが原因で二度目の離婚をする。
更にその後、学者の女性から求婚され、三度目の結婚をした後またも妊娠させる。
信光もミチルも、瑠璃と貴光に異母兄弟がいることは彼らには伝えていなかった。
そんな信光が、一番最初の子供である瑠璃が20歳の誕生日を迎えたので、異母兄弟についてカミングアウトしようとするお話。
いや~引くの一言。
こんな父親と仲良くできる自信ないわ。
どのお話も感動モノにしようとしているけれど、それにしては道徳観・倫理観・頭のネジはずれた人間ばかりで、感動というよりも「うわぁ」という印象。身近にいたら絶対に距離を置きたくなるタイプの登場人物しか出てこない。。
様々な形の”恋愛”小説って言えば聞こえはいいけれど…様々ってより「浮世離れ」って感じゃないですかね…
てかブログ書きながらずっと昔の浜崎あゆみかけてたんだけど、何聞いてもあのM(atsuura)を思い出してしまう…