28冊目:などらきの首 | 【読書感想文Blog】ネタバレ注意⚠

【読書感想文Blog】ネタバレ注意⚠

読んだ本の感想とたまーに日常( ᐛ )

などらきの首

澤村伊智

2019/05/15

 

 

★ひとことまとめ★

比嘉姉妹シリーズスピンオフ

 

 

↓以下ネタバレ含みます↓

作品読みたい方は見ないほうがいいかも

 

 

 

【Amazon内容紹介】

第72回推理作家協会賞短編部門受賞作収録! 比嘉姉妹シリーズ最新刊!

【第72回推理作家協会賞短編部門受賞「学校は死の匂い」収録!】

雨の日にだけ、体育館に幽霊が出る――。 小学四年生の美晴は、学校に伝わる心霊めいた噂通りに体育館のキャットウォークから飛び降りる白い少女を目撃する。白い少女の正体は何か、何故彼女は飛び降りるのか。姉・琴子に対抗するため、美晴は真相究明に挑むが!?(受賞作「学校は死の匂い」)

「などらきさんに首取られんぞ」祖父母の住む地域に伝わる“などらき”という化け物。刎ね落とされたその首は洞窟の底に封印され、胴体は首を求めて未だに彷徨っているという。しかし不可能な状況で、首は忽然と消えた。僕は高校の同級生の野崎とともに首消失の謎に挑むが……。 (表題作「などらきの首」)

 

 

【感想】

比嘉姉妹シリーズ!ひさびさに!

前情報なしで読んだんですけど、てっきりこれもいつもと同じで長編だと思っていたら、短編集だったんですね目

スピンオフというんですかね?いままでの作品に出てきた登場人物たちの過去やその後のお話になっているので、過去作読んでいない方だと「なんのこっちゃ?」になると思います。

あと、どうでもいいけど「などらき」じゃなくて「ならどき」って間違えて覚えていた…。。

 

 

・ゴカイノカイ

父親が生前大家として所有していた5階建ての物件を、父親の死後受け継いだ梅本。介護職を退職後、仕事が続かず何をしても上手くいかない。父親からも死に際「お前は何をやっても駄目だろうけどな」と言われてしまう。

そんな状況に追い打ちをかけるように、ここ最近5階の貸事務所だけが入居してもすぐに出ていってしまう。父親が大家のときはそんなことはなかったという。

退去した入居者たちによると、「『痛い、痛い』という子供の声が聞こえ、自分まで痛みを感じるようになる」と…。

不動産会社の担当・瀬川に頼み、”鎮め屋”に頼むものの失敗に終わってしまう。

困った梅本がたどりついたのが、真琴だった。梅本は真琴とともに真相を突き止める…。

 

これは幽霊ではなく、超能力を持った人間のお話でした目

子供の頃から聞き慣れてる「痛いの痛いの飛んでいけ」が実際にできる人が4階にいて、その人が飛ばした痛みが5階の人に飛んでしまっているというお話でしたキョロキョロ

部屋で何か不思議なことが起こると、その部屋に原因があるのではないかと思ってしまいがちですが、そうではないこともあるというお話で目から鱗でした。

真琴に憧れ真琴になりきる女の子は、過去の真琴や美晴を彷彿とさせました。

 

他のかたのブログで見て知りましたが、お話の最後に真琴が梅本さんにどこか物件がないかと尋ね紹介してもらうんですが、これがのち(ぼぎわんとか)に出てくる真琴の住んでいる物件みたいですね!

 

 

・学校は死の匂い

これは「ずうのめ人形」で出てきた、真琴の姉・美晴のお話。

美晴は”本物”の学校の怪談を求めていた。

美晴と真琴の通う小学校には、雨の日の体育館に少女の幽霊が現れるという噂があり、クラスメイトが実際に音を聞いたという。

そして美晴や真琴たちも実際に幽霊と遭遇してしまう。

 

雨の日にだけ現れる幽霊。

ゴンっという何かを打ち付けたような音とともに現れ、耳を塞いだ体制でキャットウォークに上がり、飛び降りる…。雨の日になるたびに飛び降りを繰り返す彼女をなんとか止めるために、美晴は友人の古市俊介と共に彼女の死の真相を調べ始める。

 

耳を塞いでいたのではなく、頭を抑えていたというのは考えるだけでゾッとします。

組体操の練習中に落ちて亡くなったのを、何年間も自殺と言われ続け…みんなの嘘に協力するために雨の日に出続ける…。

美晴により真相がわかり一件落着と思いきや、下手に介入なんてしないほうがよかった…と後悔するような憂鬱なラストえーん

好きに死になよ、の美晴の言葉のおかげなのか、嘘に加担した人たちも同じ死に方をしましたとさ…絶対殺したじゃん…

 

このお話自体のストーリーも悲しい気持ち&ラストに憂鬱になったけれど、私がもっと悲しくなったのは、このお話のタイトル。

「学校は死の匂いがする」とは古市が言った言葉ですが、要は学校は危険だ、家よりずっと危ないってことをかっこつけて言った言葉なのですが、ずうのめで美晴が亡くなったのは中学校の保健室…。

 

 

 

・居酒屋脳髄談義

居酒屋での、男尊女卑強めで自分たちの意見が正しいと思ってるサラリーマンと、そのサラリーマンたちと同じ会社で働く部下の女性との「脳髄論」についての熱い議論のお話。

はじめ読んでいて意味がさっぱりわからなかったんだけれど、読み薦めていくうちに、これはサラリーマンの幽霊たち(死んだことに気づいてない)VS琴子の議論ということがわかりました。

サラリーマンたちが下品極まりなく、なんとしてでも部下の女性を叩きのめしてやる、男のほうが優位なことを知らしめてやるという感じでしたが一人一人論破されていく…。

下品で屁理屈のような発言を冷静に論破してへし折る琴子にすっきりします。

 

ぼぎわんのときも幽霊たちが琴子に対して「怖い」「やだ」って思って逃げていくシーンがあったけれど、怖いと感じる意味がわかったかもしれない…。

徐々に目の前の相手がいつもの「部下の女の子」とは何か違うと気づき始めていくサラリーマンたち。彼らに対して琴子が言った荘子から引用した「居酒屋で部下をからかうのがどれだけ楽しかろうと、そんなものは今この瞬間の話にすぎない。目が覚めてしまえばただの夢です。あとはひたすら 辛い現実かもしれませんね。」っていうのがもう、全てだよね。

 

死んでもなお居酒屋で下品な女性ディスりに花を咲かせるとは…。

それしか楽しい記憶がないなんて。

自分たちが亡くなっていることに気づかず、5年半もの間ずっと見ず知らずのお客さん相手に聞くに堪えない言葉を浴びせ続けているなんて悲しすぎるし、琴子にとことん論破されて強制成仏(というより消滅…?)とか悲しすぎる…。

読んでいてスッキリはしたけれど、自分がもしも幽霊の立場だったら悲しい…。

生前よく行っていたお店で職場の仲間とおしゃべりしているつもりなのに、実はとっくの昔に自分たちは死んでいて、見ず知らずの人に話しかけている、ってことに気がついてしまったら。

 

 

・悲鳴

これストーリー自体いまいちかなあと思ったんだけれど、このお話に出てくるりーたんってずうのめの呪いの張本人である"りぃ"…。

ずうのめ以外でも人に迷惑かけていたのか…。

りーたんをあのりぃと認識せず読んでると、よくある学校の七不思議的なものに触発された映画同好会の大学生たちって印象なんだよね。

金田一少年でありそうなお話。

言霊…りーたんの場合はずうのめの呪いもそうですが、言ったことを本当にする能力がありますよね…。

 

自らが言い放った言葉、呪いでまわりの人を不幸にした上に、自身が死ぬ(というより殺された)ときもタワマンの下の階の住人犠牲にするし恐ろしい女すぎる…。

呪いを生み出しても制御はできない。

ある意味りーたんが最強なんじゃないかと思う。

 

 

・ファインダーの向こうに

これは戸波さんが編集長を務める「月刊ブルシット」の周防、ライターの野崎、カメラマンの明神の3人が出てくるお話。他のお話に比べるとほっこりって感じのお話だった。

うまく行っていない彼に、どうにかしてメッセージを伝えたかったんだね。

 

この作品で初めて野崎と真琴が出会うのですが、戸波さんが二人のキューピッドみたいなもんだよねぇ。

戸波さんがデラシネにいる真琴の情報を周防に教えてなければ、二人は出会わなかったわけだし。

はじめの方は霊能力者なんていないと疑ってかかってる野崎が、真琴は本物と認め、だんだんと変わっていく姿も書かれていて、そういう意味でもほっこり…ハート

 

 

・などらきの首

このお話は高校生時代の野崎と、その友人寺西のお話。

舞台は寺西の祖父母の家で、表向きは泊まり込みで受験勉強をするという名目だけど、実際は子供の頃寺西が遭遇した怪現象「などらき」の真相を暴くための滞在だった。

 

寺西が小学生のころ、いとこの雄二に無理やり連れられていった洞窟。そこには「などらき」の首が祀ってあるという。

かつて祖母の住む村には「などらき」が住んでいた。などらきは隠れて家に忍び込んだり、出かけたものにくっついて一緒に帰ってきたりする。

などらきに触れられるとブツブツができて死ぬ。息を吹きかけられると肺が腐って死ぬ。

祈祷をしたり色々したが、効き目はなく毎年毎年何人もがなどらきの犠牲となった。

そんななどらきに村人たちが困っていたある年、一人の侍が村に来てなどらきの首を刀で刎ね、退治した。

体は山へ飛んで逃げていき、首だけが残った。その首を祀っているのが例の洞窟であるという。などらきはまだ生きており、首はたまに鳴き、胴体はたまに首を取り戻しに来る。

もし洞窟で胴体に鉢合わせてしまったら、自分の首と勘違いされ首をとられてしまう…。

 

寺西は雄二に洞窟に連れていかれた際、などらきの首を目撃する。しかし、次に雄二と洞窟に行ったときには首が消え失せていた。

まさか本当になどらきが首を取り返しに来たのだろうか…?

 

そんな、子供の頃体験した怪現象を高校生まで引きずり続けた結果、野崎と検証しに行くのだけれど…

首がなくなったトリックについては野崎が解明。池の底に亀裂が入りなだらきの洞窟に大量の水が流れ込んだ。そして、などらきの首は水に浮かび流され、穴の中から首が出てきた。

いとこは首を持ち帰り、さも怪現象によって首が無くなったかのように装い寺西を怖がらせた。

すべては雄二が寺西を脅かすために考えたいたずらだったのだ。

雄二は首は持ち帰ってずっと保管してあること、寺西に当時のことを謝りたいと言っており、な~んだ、一件落着…とはならなかった。

 

洞窟に一緒についてきた祖母…ではなかった何か。

確かにあれだけなどらきの洞窟に行くな行くなってずっと口を酸っぱくして言っていた祖母が、2人が洞窟行くことに対してあんな簡単にOKを出す&ついて行く時点ですこしあれ?って思ったけれど、まさかあなたが…。

3人の会話のなかで、祖母がいとこの所在地を聞くような部分があり、なんで急に聞くのかな?って思ったけれど、それなら納得がいく。

などらきの伝承からもわかるように、胴体は首を探しに行きますからね…。

 

怪現象なんて全く信じておらず、なんでも理屈で解明できると考えていた野崎が、説明のつかない怪異も存在するということを知ったきっかけだったんじゃなかろうか。などらきの首は。

 

このお話に出てくる寺西はまだ長編には出てきていないみたいなんだけれど、いつかなにかのお話で出てくるかな??楽しみです~照れ本