それは妻が脳出血で倒れて、
──まだ間もない頃の話。


 我が家の生活は、一変していました。


 家事全般を妻が担っていたこともあり、
食事一つにしても、新しい形を模索する必要がありました。


 いざ『料理をする』と決意はしたものの、
20年以上、包丁すらまともに触ったことのない私には──


 それはあまりに、無謀なことだったのかも知れません。


 前述した、例の──
あの『味噌汁事件』からは、
すでに数日が経過していました。


▼前回の話
──初めての味噌汁




妻のいる病院から帰る途中に、
スーパーへ立ち寄り、
私は晩ご飯の食材を探していました。


子ども達にも、大見栄を切って、
料理作りをする!と、
決意を表明したものの──

実は、まだまともな料理には、
辿りついていませんでした。


私は野菜が嫌いでしたが、
子ども達には野菜を食べさせないといけないという思いがあり、

スーパーでは、
野菜コーナーを中心に見て回っていました。


ーーー


にんじん、ピーマン等、
野菜嫌いの私には、やや難易度が高い食材はやはり手が出ずに。


はて、どうしたものかと。
ノープランの私は、売り場で、
何にするかを考えあぐねていました。


その時は、すでに20時も回っており、
料理する時間が限られていました。


しばらくして野菜コーナーを見終わろうとした時、私の視界に"モヤシ"が入ってきました。

それを手に取りながら、私は、

なるほど!今日はこれか。


ようやく──、
その日の晩ご飯おかずを思いつきました。


それは野菜嫌いでも、
みんなが食べれる王道の野菜料理。



『モヤシのナムル』



しかも韓国風に辛く仕上げれば、
ご飯だって何倍でも食べれるという、
ダイエットには憎いメニュー。

さらに調理も短時間で済むという。

そのときの私には、
まさに一石二鳥の料理でした。


よって今晩は、決まりました。


【韓国風モヤシのナムル(キムチ入り)】


ーーー


子ども達が大量に食べれるようにと、
モヤシを3袋と、キムチ一瓶を購入しました。

家にはウェイパー、ニンニクチューブ、
一味唐辛子、ゴマ、ラー油、胡麻油があることは知っていました。

私は、さっそく家に帰り、
キッチンで、その調理に取り掛かることにしました。






【そのレシピ】



鍋でお湯を沸かして、モヤシを一気に投入。

──その3分後には…もうグダグダ。

水洗いで奇跡を期待するも…復活せず。


それをボウルに移し、
キムチ・ニンニク・胡麻油・
ウェイパー・唐辛子・ラー油・ゴマを一気に投入。


韓国料理は混ぜる

と聞いたことを思い出し、
全力でかき混ぜて完成!


調理時間:15分程度。

私の額からは、汗が滲んでいました。





それから──

調味料や食材が飛び散りまくった調理場を眺めながら、
ふう、と一息ついて、

私は少しだけ、悦に浸っていました。


試食のつもりで、
ボールの淵についたゴマを、
指ですくって軽く舐めてみれば──

!?

驚きました。

マジでヤバい辛さが舌に刺さり、
鼻から一気に強烈なニンニクの匂いが抜けていきました。


次に、
恐る恐るモヤシを一本つまめば──、

!?

そのモヤシは…
すでにモヤシにあらず…


絡まったキムチと融合した異様なヌメリ、
口の中に広がる刺激臭と奇怪な歯触り。

それは、もはや…。


また、よくよく見れば──

ボールいっぱいに真っ赤に染まり、
モヤシとキムチが絡み合ったそのビジュアルは、
まさにスプラッター映画。


それでも気を取り直し、
少し映えを意識しながら私は、

そのホラーナムルを、
きれいに皿へ盛り付けました。





『ご飯できたよー』
と、子ども達を呼んで、

それを食べてもらえば──
少しは、気を使うかと思いきや…


ーーー


長女
人間が食う物じゃない💢


長男
食べ物で遊ぶなって、言われたけど?


・・・


ーーー





このままでは、終われず💢



『リベンジ・キッチン』
──不機嫌なナムル【完】


※この話は続きます。




※この話はnoteにて、同時掲載しています。

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