第1回米大統領選 TV討論会-勝者はトランプ

2020年10月2日


米国時間 9月29日の夜に、第1回目の大統領選TV討論会(ディベート)が行われた。
日本の報道では、米国の主要メディア(CNN等)の報道しか流していないので、実際のところをお伝えしたい。


■9/30 WSJ 記事

トランプとバイデンが激しい批判合戦を演じた。


司会者がいて、トランプとバイデンに1人づつ同じ質問をして、2分間づつ交代に答えるということだったが、基本的には"オープンディスカッション"ということで、相手が答えている最中に割り込んで良いことになっていた。
なので、特にトランプがやたら割り込んでいた。ということだ。
討論会90分が終わった結果として、メディアがおそらく電話調査で、どちらが勝ったかを聞いて、その勝者を決める。
各メディアがそれを決めるのだが、CNNがこういう結果を出した。


バイデンが60%、トランプが28%、ということでバイデンの圧勝。
CNNなので、こういう結果になるのは判っている。
しかし、この算出の説明を聞くと、結果を聞いた人数も限られているし、その中でも聞いた人たちが主に民主党の候補者だった。
民主党の候補者に聞いているので、こうなるのは決まっている。(意味のない結果である)


議論された争点をいくつか記す。


【争点】 暴動について
米国各地でBLM(ブラック・ライブズ・マター)ということで、黒人差別反対運動をきっかけとして始まった暴動(破壊行為)、このことについてまずこの記事から。
■8/31 WSJ 記事 

今回の大統領選挙での争点を2つに絞るとしたらこうだ。Violence Versus Virus。
つまり、Violence(バイデン) Vs Virus(トランプ) 

まずウイルスについて:

ウイルスの責任を負っているのはトランプであるということを、バイデン側が攻めている。このウイルスに関して、今年の1~2月の初期動作において、トランプは明らかに間違った。そのことによって、米国人がこれだけ亡くなったのだとバイデンが盛んに攻めている。
逆にトランプ側がバイデンを攻めているのは、バイオレンス(暴力)だ。
BLM運動、これは平和的なデモであればそれは良いけれども、しかし結局、破壊運動になっているのではないか?
破壊運動になるまで煽ったのは、民主党でありバイデンである。ということでバイデンの責任を追及している。
特に、「米国民が心を痛めているのは、都市で起きている暴動が郊外まで広がること」
今起きているのは、米国全土というよりも特定の都市で起きている。これが、都市だけではなく郊外にまで広がったらどうしよう?というのが、米国民の中で不安・懸念として広がっているのだ。そのことを記事で書いている。


この点について、今日のディベートで出てきた。
トランプ曰く
「民主党の市(民主党が市長の市)は左翼過激派によって、未だに破壊行為が続いている。そしてもし、バイデンが大統領になったとしたら、奴らは君(バイデン)を意のままに操つるだろう」
民主党の人間が市長をやっているところでは、左翼の過激派が破壊行為をやれてしまう。それが許されてしまう。
もし民主党の人間が大統領になってしまったら、国中でそれが起きるだろう。ということを主張した。
これは有権者にとって重要なテーマで、トランプは、うまい言い方をしたと思う。


それに対してバイデンの方は、ウイルスのところを攻めている。
バイデンは(カメラ目線で)、「あなた方はパニックにならなかった。パニックになったのは彼(トランプ)だ」と。
※ちなみに討論会でのバイデンは、トランプの方を絶対見なかった。目線を合わせずに終始カメラ目線で話していた。これは、討論をするとトランプに負けるのが判っているので、視聴者に向けて話しかけるという作戦だと思われる。
前提として:トランプはウイルスの責任を追及されていることに関して、自分が1~2月にウイルスの問題をあまり大げさにしなかったのは、国民の皆さんをパニックに陥れない為だったのだと説明をしている。
これに対してバイデンは、「あなた方(国民の皆さん)はパニックになんてならなかった。パニックになったのは彼(トランプ)なんだ」と、言う風にトランプを攻めた。
このウイルス問題についてバイデンが攻めた内容は、既に何ヶ月も前からこのことばかりを言っているので、"新鮮味"が無くなっていた。もう少し新しいことを持ち出してインパクトを持たせるかと思われたが、それは無かった。
トランプの方が、この点に関してはインパクトがあったと思われる。

【争点】 バイデンの息子・ハンターのお金の疑惑
このことについて、トランプが面白い表現を使った。
「中国は君のランチを食べた、ジョー」 China ate your lunch, Joe
先週、上院の議会が、ハンター・バイデンの中国とウクライナにおけるお金の疑惑、これを長期にわたり調査してきたが、その調査結果を発表した。


その中に「NYポスト」の記事、ロシアの大富豪から350万ドルをハンター・バイデンが受け取っているという新事実も出てきた。簡単に言うと、ハンター・バイデンは、当時副大統領だったバイデンの地位を利用して行った疑惑であり、ウクライナと中国において、様々なお金儲けをしていたというもの。詳細は前回記事を参照。


トランプが、「中国は君のランチを食べたよな、ジョー」と言い、そしてハンター・バイデンのことを続けて話した。
その時のバイデンの反応は、小さな声で「それは真実じゃない」と呟いていた。


トランプが徹底的に息子・ハンターのことを攻めているところで、バイデンは全然反論しないで、「それは違う、それは違う」と、ボヤくように呟いて終わってしまった。
ここは、バイデンにとって大きなマイナスだった。そしてこのシーンが、ツイッター等で拡散されている。
これが、今日のディベートで最もインパクトがあったところだ。
このようなインパクトの持たせ方は、やはりトランプが一枚上だったと思う。

【争点】 バイデンが作った黒人を犯罪人にした法律(1994年犯罪法)
この法律を作ったのは、バイデンが上院議員の時だ。

バイデンが上院議員の時に、バイデンが書いて提出して、当時はビル・クリントン大統領の時に、クリントンが署名して成立した法律である。
内容は、「米国の犯罪・殺人が多いので、警察の取り締まりを厳しくする」という法律。
この法律の関連して、今回の大統領選挙でバイデンが副大統領候補に指名したのが、カマラ・ハリスだ。


彼女は南アジア系アメリカ人で、その選んだ理由は、女性票と黒人票の獲得を狙ったもの。その為に彼女を選んだのだ。
ところが、彼女は、民主党の大統領候補を選ぶ"予備選"の段階では、大統領候補に立候補していた。そしてバイデンと戦っていた。この時に、2019年5月「ファクト・チェック」のサイトが出てきた。


この中で言っているのは、「バイデンの1994年犯罪法で囚人が激増した、特に黒人が」だ。
この法律は、犯罪の取り締まりを厳しくして、犯罪を減らすということを目的としたが、実際には大して罪を犯していない人まで逮捕して、どんどん犯罪者にされてしまった。特に黒人が狙い撃ちされて、囚人が激増したということ。
このことに対するバイデンの責任を、昨年の民主党の予備選において追及されている。
それを追及していたのが、カマラ・ハリスだ。
カマラは、バイデンの法律で、黒人・ヒスパニックが囚人にされ、全米の刑務所の人数が倍になったとバイデンを批判していた。

(※今ではすっかり手の平を返しているのだが・・・)
この点に関して、トランプは「このことを知ったら、黒人はバイデンに入れないだろう」と、この点を突いている。これはまだそんなに知られていない。バイデンは、このような法律を作って黒人が狙い撃ちされているのだ。その責任はバイデンにあるのだということを強調していた。

【争点】 納税
9/27 NYTimesが、突如、トランプの納税問題に関して大きな記事を出してきた。


内容は、2016年と17年に年間で750ドル(約8万円)しか、連邦所得税を支払わなかった。というものである。
ディベートの直前に、NYTimesがトランプの足を引っ張る為に、このようなネタを出してきた。

しかし、このネタは古いネタである。4年前の大統領選の時からずっと言われていたことで、「またこれか」というのが実際の印象だ。
インパクトがあるかと言われれば、あるようで無い。
これについて、バイデンが予想通り追及してきた。
トランプは、「年間8万円?そんなことはない。私は数百万ドル(数億円)支払っている」と言い張った。
バイデンは、「だったら納税記録を見せなさい」と要求してきた。
というのも、バイデンは自分の納税記録を発表(約1億円)しているからだ。
実際に納税記録を出すかどうかは、トランプ次第。出さなければいけないという義務は、米国には無い。
逆に普通は絶対出さないものだ。仮に大統領であったとしてもそうだ。
この点をバイデンは追及してきたのだが、おそらくトランプは出さないであろう。出さないで終わると思われる。
これがトランプにとって決定的なマイナスになるかというと、4年前から言われていることなので、古いネタであり、それはないだろう。そして新しい争点と言えば、


【争点】 最高裁判事
今月9/18に、ルース・ベイダー・ギンズバーグ氏(RBGというニックネームで親しまれた)87歳の女性の判事が亡くなられた。それによって、新しい最高裁の裁判官をトランプが選ぶことになった。
そして、トランプが指名したのは「バレット」氏だ。


これが最初に争点になったのだが、まず最初にトランプが言ったことは、
「我々は過去の選挙で勝利して大統領になっているし、共和党の上院が過半数を占めているのだ。だから彼女を選ぶ権利があるのだ。」と真っ当な答えをした。

それに対してバイデンは、「何を言っているのだ。今は選挙の真っ最中である。選挙結果が出るまで待つべきであって、それを待たないのは理由がある。その理由は、オバマケアを廃止させたいからだ。最高裁でオバマケアを廃止させたいのだ。それでオバマケアが廃止されたら、せっかく2000万人の人が保険を持てるようになったのに、その2000万人から保険を奪い取る気なのだ。」 その2000万人の皆さんは、絶対にトランプに入れないで下さい。という論争。

(※バレット氏はオバマケアには反対である。)
これについては、どちらに有権者が付くかはハッキリ分かれている問題なので、一応お互いの立場を言った感じである。

【議論されなかった重要な争点】 中絶
中絶問題は、議論されるはずだったが、されなかった。おそらく時間が無かったのだろう。
バイデンはカトリックであるが、そのバイデンが中絶にどういう立場をとるか?これは非常に重要だ。
カトリックは当然、"中絶反対"だからだ。中絶に賛成する立場をとるかどうかは「踏み絵」だ。

というのも、バイデンが選んだ副大統領候補のカマラ・ハリスは、「妊娠後期でも中絶推進」を主張している。(彼女の公約であり、それを法制化しようとしている。まさに極左の人である。)そういう人を、自分のランニングメイト(副大統領候補)に選んでいるので、「さあ、どうするのだ!」ということを、トランプは当然突いてくるはずである。
今回は時間が無くて、この争点が見送られたが、2回目以降にはあるだろう。
ここまでが、第1回目の論点である。
全体を通して第1回目のディベートは、トランプ優勢であった。
「CNN」のいつものような発表はあったが、トータルで見てトランプ優勢であったと思われる。

 

【参考動画】

"China Ate Your Lunch, Joe" (Trump - Biden 2020 Debate)

China Ate Your Lunch 

 

【追記】 バイデンの小細工

目にはスマートコンタクトレンズ(モジョ・ビジョン)を付けていた。

このように、視界に文字を映し出せます。

https://www.mojo.vision/