なぜ家を建てるのか/あるいは設計を依頼するまで | エムズアソシエイツ施主様ブログ

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岐阜の工務店エムズアソシエイツで建てる家づくり。
H様ブログです。

こんばんはプリンです。

 

「人はなぜ家を建てるのか」

 

「家を建てたくなる気持ちは

   秘密基地づくりに胸をときめかせた

   幼き少年の日の夢の残滓なのか」

 

「ネアンデルタール人が洞窟を住処としたように

 縄文人が竪穴住居で無数の夜をやり過ごしたように

 人類である限り逃れ難い安全への欲求なのか」

 

「緑の星で暮らす生物としての宿命的な営みなのか」

 

「住宅業界の罠なのか」

 

といった話ではなくて、

私たちが家を建てようと思ったのは、

住んでいたアパートが冬とても寒かった

というよくある理由です。

 

仕事も忙しく、

帰ったらニュース見てご飯食べて本読んで寝て、

みたいな生活をしていたので、

「家を建てよう」

という発想がそもそもなかったのですが、

特段人生のマイルストーン的な出来事があったわけでもなく、

ある日突然、

「このアパート寒いな」

としみじみ思い、家を建てることに思い至りました。

もう少しいえば、

安くはない家賃を払っているのに特段快適でもない生活に、

どうせ限られた人生なのだから日々を快適な環境で過ごしたい、

とも少し思ったかもしれません。

真面目にいえば

QOL(Quality of Life:生活の質、人生の質、生命の質)の向上、

といったところでしょうか。

 

ですが、

この時点で家づくりについての知識はゼロですので、

「冬暖かい」

「夏涼しい」

「リラックスして心地よい時間を過ごしたい」

というたった3つの希望だけを持って、

家づくりという大海原の波打ち際に足をひたしたわけです。

 

そうして最初に訪れたのが、

地元の工務店が建てている建売住宅。

土地も込みだしすぐに住めるし、

デザインも予算もまあまあ良いし、

なんか良さそう〜、

でも冬暖かいのかな? などと思いつつ、

次は住宅展示場へ。

モデルハウスに入って「はー豪華ー」と感心しつつ、

慣れないことに緊張しつつ、

営業マンに案内していただき説明を聞くところによりますと、

地震については各社すごい自信があるらしいけれども、

とにかく各社ガルガルガルガルと

ガル(※1)の大きさ比べがすごくって、

地震対策に本当に大切なことって何ですか?

そのめちゃくちゃ重たそうな外壁って大丈夫なんですか?

と素人としては疑問を感じつつ、

丁寧に何社も話を聞いて回っているなかで、

他社を下げて自社を上げる話術の妙技にもふれ、

その工夫に感心しつつ、

「その身も蓋もない感じはちょっと苦手だな」

と思ったりもして、

結局各社「我が社の家は最高に良いよ!」

という自信があることはわかるのだけれども、

多くのハウスメーカーについては、

その良さの根拠がいまひとつよくわからず、

(後から思えば、相対的な良さではなく、

 ハウスメーカー目線の絶対的な良さだったのかな?

   と思いますが)

結局は早く契約したいのねってことだけはとても伝わってきて、

根拠をあまり伴わないアピール合戦に、

「これが、ポエム……(※2)」と実体験を伴った理解を得つつ、

気になった3社ほどについては、

もう少し知ってみようと、

打ち合わせや見学会への参加を継続しながら、

同時並行で書籍やWEB上での情報から

家づくりについての知識を深めつつ、

漠然と家づくりにとって大切な知識の基礎がわかってきて、

そこからは、

ある程度事前に調べた上で工務店さんにも話を聞きに行き始め、

工務店3社目くらいでエムズアソシエイツ(以下、エムズさん)

と初対面。

ここまで約2ヶ月。

ここからさらに、

中部で手広く建てている人気ビルダーさんや、

良さそうな工務店をいくつも訪問しつつ、

フランチャイズに加盟している工務店さんの見学会や、

ハウスメーカーの工場見学やお泊まり体験など、

バラエティーに富んだ週末を毎週過ごしながら、

家づくり勉強会的なイベントにも参加したりして、

家づくり勉強会的なイベントでは、

ポジショントークや営業入るのは仕方ないとしても、

ちょっと内容が偏りすぎていたり、事実と異なっていたり、

都合のよい写真なんかを引っ張ってきて、

あたかもそれが真実であるかのように、

自社で使わない建材や工法を悪く言うのを聞いたりして、

逆に印象を悪くして帰路に着くといった経験なんかも経て、

結構うんざりすることもあったけれど、

反面、ここまでくると

かえってそんなことも楽しめる自分たちもいて、

そんななか、

エムズさんの

工事の真実まる分かり講座、

完成見学会

完成見学会

構造見学会、

完成見学会、

とエムズさんに何度もうかがう機会があり、

エムズさんは毎回とても感じがよく、

同じ頃に訪問していた他の工務店さんのなかにも

感じのよいところはいくつかあって、

このあたりから、

性能はもちろん大事にした上で、

「感じのよい工務店で家づくりをしたいな」

と思い始めたところで約半年。

ここからは、

ハウスメーカー1社、

エムズさんを含む地元工務店3社、

いわゆるスーパー工務店(※3)2社、

スーパー工務店に近い工務店1社、

の7社にほぼしぼって見学会などに参加しつつ、

継続的に書籍やWEBから日々知識をインプットし、

10か月目くらいで、

ハウスメーカー1社と地元工務店3社、

スーパー工務店に近い工務店1社の5社にプランニングを依頼、

と同時に、

スーパー工務店は設計申込み前のプランニングはしない、

ということを理解して、

まぁそうですよねと妙に納得しつつ、

予算的にも到底折り合いがつかないので候補から外しまして、

5社とプランニングの打ち合わせを重ねている最中、

ここに至って、

「間取りはプロにまかせて勉強はしなくてもOK」

と考えていたけれども

「自分に合った間取りを作ってもらうためには

 間取りの考え方など相応の勉強をしておいたほうがよい」

ということに気づき、

/打合せ/間取りの勉強/打合せ/間取りの勉強/打合せ/と

打合せと間取りの勉強のサンドイッチを頬張りながら、

割れてガラスの破片がとび散っていたが一本だけがうまい具合に下半分無傷で残ったシーヴァス・リーガル……

ではなく普通に瓶からボウモアを注いで、

インプットした知識をもとに、

夜な夜な自分で試しに間取りを書いてみるという

アウトプットを通して

間取りの考え方への理解を深める努力をしつつ、

順次、各社からプラン提案と見積をいただき、

条件を揃えてプランニングを依頼したなかでも、

外構の見積の差額、

見積に入っているもの入っていないもの、

などを洗い出し、

各社横並びで比較できるように

修正した見積額をエクセルで作成して比較しながら、

「そうなのですね!」と気がつくこともあったり、

「なるほど〜」と妙に納得することもあったり、

「えっっっ!」と驚くこともあったりで、

最終的に、

「予算」と「自分たちの希望の優先順位」を踏まえ、

各社で実現できる希望、実現できない希望、

をあらためて整理した上で、

ここまで約1年、

ちゃんと訪問した会社25社、

各社訪問等に費やした日数は計97日、

勉強に費やした時間はもうよくわかりませんが、

エムズさんに本設計を申し込むことにしました。

 

このようなどうでもいい話を

ここまで読まれた奇特な方がいましたら、

さぞ長く退屈だったことでしょうが、

お読みいただきありがとうございます。

 

仕事以外は、

ほとんど家づくりのことばかり考えて悩んで楽しんだ、

とても長い1年でした。

 

ハウスメーカーについては、

やれやれと思わされることも度々ありましたが、

悪いことばかりでもなく、

素晴らしい営業さんとも巡り合いましたし、

特に最後まで検討した1社については、

耐震などは本当に研究されていてすごいなと思いましたし、

スケールがあるからこそできる提案や、

サンプルが多いからこそできるデータ分析など、

魅力的なところも多々ありました。

C値を実測し、

基準の数値をクリアしないと引き渡しをしないという点も

ちゃんとしているなーと思いましたし、

ハウスメーカーについても、

十把一絡げにして考えてはいけないなと思いました。

反面、一部のハウスメーカーを除いて、

断熱性能は良くてぎりぎりUA値0.46くらいと、

規模が大きいがゆえにすぐに仕様を変更できないなど、

今の時点では断熱性能への対応が難しい面があるのかな、

という印象も受けました。

全体としては、C値を実測する会社さんも少ない印象でした。

あとはやっぱり、主観にはなりますが、

ハウスメーカー=家を買う、

工務店=家を建てる、

という気持ちの違いを感じたのは大きかったです。

 

エムズさん以外の地元工務店については、

各社、Ua値0.46以下(がんばれば0.36くらい)、

C値は0.5以下と、

断熱・気密ともに性能がかなり高く(しかも床断熱で!)、

耐震や結露対策などにもしっかり取り組まれており、

施工もこだわりを感じましたし、

建築士さんにいろいろと質問させていただき、

即答できないことは持ち帰って確認していただいた上で、

(こちらが面倒な質問ばかりするので申し訳なかったですが)

できることについては「できます」

できないことについては「できません」

と正直に答えていただけたことはとても好感が持てました。

また、各社ともに、

建築という仕事に矜持を持って取り組まれていることも

打合せを重ねる中で非常に感じられたので、

最後まで依頼先選びは本当に悩ましかったです。

 

スーパー工務店やそれに近い工務店さんについては、

日本の家づくり最前線ってすごいなと心底思わせられました。

良い器をいかにつくるのか(耐震/断熱/気密など)、

に加えて、

良い器をいかに使うのか(換気・空調/温熱環境など)、

というフェーズの設計は、

ロジカルで、当然エビデンスベースドで、

めちゃめちゃ理系やなーと思いました。

雑誌やWEBなどを通じて広く情報発信もされていますので、

家づくりを学ぶ中で、

とても勉強させていただくことが多かったです。

しかし、すごい家を建てられているだけあって、

予算もとても高かったです。

私たちとしては、

エムズさんにお願いするのも結構な背伸びをしていますので、

無い袖は振れません。

あと、当然予算の問題もあるのですが、

性能以外の意匠や心地よさなどといった面で、

私たちの好みとはやや違うかなー

という点も少なからずありました。

まあ、これは全くもって個人的な趣向の問題なのですが。

 

というわけで、

一生に一度の家づくり、

性能面で大切にしたい基準は当然ありますが、

私たちが求める基準を満たしていただける工務店さんの中で、

意匠、施工の安心感、心地よさ、

何より「ここで一緒に家づくりをしたい」という気持ちは、

妻と私ともに、エムズさんが一番でした。

 

エムズさんの見学会はほとんど参加させていただきましたが、

思い返してみると、

エムズさんには「こいつらどれだけ見に来るんよ?」

と思われていたことでしょうが、

構造見学会も完成見学会も開催がとても多く、

毎回見に行かせていただくのがとても楽しみでした。

妻のゼリーさんとは、

エムズさんの家ってどれも

えも言われぬ居心地の良さがあるよね、

と見学会のたびに帰りの道中で話していました。

 

ご案内いただいた設計部の皆さん、ありがとうございました。

 

見学させていただいた施主の方々にも本当に感謝しています。

大切な家を見せていただき、本当にありがとうございました。

 

と、過去を懐かしんでいる風に書いていますが、

現在進行形で、

まだまだ見学会に参加させていただいていますので、

どうぞよろしくお願いいたします。

 

書き慣れないブログをここまで長く書いてしまって

最後をどうしめたらよいのか、

行き先を失った船の船頭のような心持ちですが、

(本当はそんな心持ちは想像できませんが、)

冬あたたかい家に住めることを心待ちにしつつ、

今回はこのあたりで。

 

※写真は現場の基礎の配筋が終わった

  ちょっと前の時点のものです。

   配筋がきれいに並んでいて美しいです。

   ピッチもきれいですし、

   スラブ筋は短辺方向が上にきており、

   かぶり厚さもしっかり確保、

   人通口の補強筋もしっかり入れていただいていて、

   シートは破れもしっかりチェックしてケアされており、

   エムズさんの施工はとても安心です。

   (と知ったかぶってみました)

   仕事でなかなか現場を見に行けませんが、

   現場で作業していただいている皆さん、

   丁寧な施工ありがとうございます!

 

 

【用語解説、的なもの】

※1 ガル(gal)

地震の揺れの強さを表すのに用いる加速度の単位のこと。ほかに地震動の大きさを表す単位には、震度、マグニチュード、カイン(kine)がある。なお、地震動の大きさは、ガルやカインの大きさだけでは判断できず、周期などが大きく影響する。らしい。

※2 ポエム

一般的な意味では「詩」のことを指す。住宅業界の一部では、「根拠を伴わない雰囲気だけの言葉」の意味として用いられている。らしい。

※3 スーパー工務店

『建築知識ビルダーズ』が工務店を盛り上げようと誌面で使い始めて世の中に定着した言葉。らしい。私が家づくりを始めた後に出た号が『建築知識ビルダーズvol.48 賢くムダなく高性能!松尾式住宅設計術』だったので、気になった特集のバックナンバーを買う際に調べたところ、vol.30〜vol.40まで「スーパー工務店」で特集が組まれている。一般的には技術力がとても高いレベルの工務店のことを指すと思われるが、明確な基準や定義があるわけではないようだ。東濃を除いて、岐阜県内で岐阜市を施工範囲とするスーパー工務店は主に2社あると思われる(先日、岐阜県立森林文化アカデミーの辻先生とお話させていただいた際も、スーパー工務店の話をしていたわけではないが、期せずして2社の名前を挙げられていた)。スーパー工務店については、また記す機会があればいつかどこかで。