四足要塞の撃破は、この戦争が始まってから一番の戦果だった。
その束の間の勝利に酔いしれ、夕方になるまで戦士達は騒いでいた。
夕日が傾き始め、戦士達の騒ぎも一段落する。
そして、戦死した者達へ最後の別れが行われていた。
泣き出す者、悔しがる者など様々だった。
…そんな中、海理はレンジャー4隊長の男に近づく。
「…来ましたか」
「さっきの台詞、忘れさせたとは言わせない」
油断無く構える海理。
その口調は海の荒波を思わせるもので、敬語では無かった。
「…妙に余裕がありませんね。一体どうしたんですか?」
「とぼけるな。お前が言い出した事だ」
「おやおや、そんな口調になってしまってまぁ…」
「いいから答えろ!」
突然、海理は男の胸ぐらを掴んだ。
男は顔から表情を消し、海理の顔を見る。
海理は男を睨んでいて、左手は拳が握られている。
その状態で両者は固まって、全然動かない。
もう1人のストーム1である空音は、戦死した者達の遺体を運んでいた。
他の隊員達もそれを手伝っているため、こちらの様子には誰も気付いていないようだ。
「質問は2つ。何故秘密を知っているのか。それと、お前は何者か」
「随分と失礼な聞き方ですね。これは質問じゃなくて尋問とか拷問ですよ」
「いいから言え」
「…1つ目の質問に関しては、僕はノーコメントです。2つ目の質問ですが…」
そう言いつつ、男は右手で胸ぐらを掴んでいた腕を握る。
一瞬でかなりの力を入れたのか、海理は痛みを感じた顔をして襟ぐらを手放す。
「…僕は人間です。普通の、いわゆるホモ=サピエンスです」
ただ、と付け加えて男は四足の方を見る。
2人の人影がこちらに向かってくるのが見えた。
「この世界の人間ではなく、また時代…世代と言った方が良いのでしょうか…それも違います」
「この世界の人間じゃない…?」
「…この時代の人間じゃない貴方が、そんなに驚く事ですか?」
「……」
海理は再び男を睨む。
「…別に僕は構いませんが、本当にそれで良いんですか?」
「何がだ」
「…折角の綺麗な顔が台無しですよ、ロケラン使いのお嬢様」
「!?」
「ははは、貴方は完璧に男を演じていたつもりでしょうが… 僕の目は誤魔化せませんよ」
「その通りね。仮にも総司令とかやってるわけだし」
「今は違うよ。今は「連合地球軍」ことEDF日本支部所属、レンジャー4の隊員さ」
「いきなり隊長だけどね」
「まぁ… それは良いとして、何で君はそんな口調に…」
ここで、総司令と言われた男が振り返った。
振り返った途端、驚愕の表情となる。
「…何で、そんな事に…」
「分かるわけないでしょ。…まぁでも、これが変に歪曲した被害って考えれば普通かもね」
男に総司令と声をかけた人物が、肩を竦める。
胸の部分が膨らんでいる事から、結構胸の大きい女性である事は予想がついた。
「総司令、お久しぶりです」
「…博士、今までどこにいたんですか?」
「それは聞かない約束ですよ。…しかし、流石に時と空間を越えるのは無理があったようですね」
海理は混乱していた。
目の前の3人が普通に接しているのはともかく、「時と空間を越える」という言葉を聞いたからだ。
となれば、この3人は異次元の…時間も違う場所から来たという事になる。
「…貴方達は、一体何者?」
「僕と博士は人間ですよ。…博士は(一応)の但し書きですけどね」
「何ですか、その(一応)は。私は人間ですよ、頭の中が化け物なのは認めますけど」
「そこは認めるんだね」
「それで、あたし… いや、俺は人間じゃない」
不自然に口調を変えるその人。
彼女…いや、彼こそ3人の中で最も特異な状態にある人物である。
持っている特殊な力によって、それの管理局から(恐らく現在進行形で)目をつけられている人物。
言うまでもなく、吉崎陸生である。
何だかんだでこれに関しては、当初から予定してました(by作者
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「…それで、何だってそんな事になったんだい?」
「ん?」
「いや、ん?じゃなくて。何で体が、その…女体化してるのかって事」
「それはあた…俺にも良く分からない。ただ一つ言えるのは、また厄介な事になったってことだけだ」
「…ホント大変だね、時空を越えるっていうのは…」
こほん。
さて、皆さんが疑問に思っている事は既に分かっていますよ。
おっと、自己紹介が遅れましたね。
私は結城光輝と言います。…ゆうき・こうき、です。
博士をつけられる事が多いですが、私はただの兵器開発者兼研究者です。
…それはともかく、疑問に関してさっさと解決していきましょうか。
「…博士? 何をぼそぼそ言ってるんです?」
「これを見ている数少ない読者様に、今の状況になるまでを説明しようと思ってます」
「はい?」
この人は、キセノ総司令こと木瀬怜香です。
きせ・れいが、と読むそうですね。
初めて聞いた時は「…女ですか?」と聞いてしまい、珍しく怒った様子でしたよ。
…多分、私たちのEDF内で最も暗い過去を持つ人だと思います。
まぁそれは良いとしましょう。
「やめときなさい。どうせ何を言っても無駄と言えば無駄なんだから」
「失礼ですね。私だってちゃんと聞いてはいますよ。聞き流す事が多いですが」
「それじゃ意味ないだろ」
そして、この口調が安定しない人が… 私たちのいた地球を3回も救った英雄中の英雄です。
名前は吉崎陸生と書くそうです。みんなからは主にリクさんと呼ばれてますね。
よしざき・りくお、と読みますから、そこからリクさんと来たようです。
「…一気に言っても仕方ないだろうから、事情や状況は追々話していくわ」
「はぁ…」
この世界のストーム1、秋月氏は納得のいかない顔をしながらも一応は了承しましたね。
これでとりあえずは安心です。
…さて、ではこうなるまでについて説明しましょうか。
結論から言えば、開発部で秘密裏に創られていた「超時空装置」の稼働テストです。
テストに3人行くことになり、私とリクさんと総司令が選ばれたわけですね。
私は開発部として、リクさんは一応それの専門家として。
総司令は……
……。
そういえば、総司令は何故選ばれたんでしたっけ。
どなたかご存じありませんか?
「とりあえず… まぁとりあえずは、どっかのチームに所属しないと不味いわね」
「そうですね。これまでなら神出鬼没でも良かったのですが、流石に四足を破壊したとなると…」
「…黙って見逃してくれそうもないわね」
「……あ、思い出した。地下の時のストーム5でしょう?」
「よく憶えてたわね… あれは本部に侵入していたら見つかってなし崩しで所属して…」
「それはまた後で。今は今後について考えよう」
「それもそうだな。…さて、どうしたもんか…」
『悩んでいるようだな。…では、こういうのはどうだ?』
どこかから、スピーカーを通したような声が聞こえてくる。
と思ったら、すぐそこにスピーカーがあった。
…実はこの世界でも瞬間移動が実用化されてるんでしょうか…
「…この声、まさかと思うけど…」
『私はEDF日本支部の司令だ。…本来であれば色々と詮索するが、今はそれどころではない」
「…まぁ、いくら四足を破壊したと言っても…ねぇ」
『その通りだ。…と言うわけで、貴君らを早速部隊に配属させて貰おうと思う』
「どうやったらそうなるのよ…」
『極力最新の装備を送るよう、開発部に掛け合ってみるつもりだ。…頼む、君たちの力を貸してくれ…』
聞き慣れた声と違うが、纏っている雰囲気は似ている。
3人の答えは、言うまでもなく…
「当たり前だ。こんな状況で断るのもバカらしい」
そして、翌日からフォーリナーに対して無慈悲な攻撃が始まった。
一番ぴったりくる言葉は、蹂躙である。
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作者コメント♪
どうも、もう色々と末期になりつつあるキセノです。
妄想製造工場(何ソレ)はフル稼働していて、もう書きたいネタがありすぎて困っているくらいですよ。
そんなわけで、次回から本格的なぶち壊し作戦がスタートします。
…なんか色々と言われそうで怖いです(だったらやめとけ