※ここでしている会話は、全部英語で行われています。
教員してると、たまに天のお告げみたいな、そんなものに操られて行動する時がある。
今日の数学の授業に、去年から問題視されている生徒がいた。
厳しい先生から優しい先生まですべての先生に怒られてた。
怒られる理由は確かにそこにあった。
集中できずにちょっかい出したくなっちゃうんだよね。
いつものように、その生徒は課題を全くせずにボーッとしていた。
僕はふと彼の隣に座って話し始めた。
「実はね、僕は君が賢いということを知ってるんだよ。君が思うよりも詳しく、君の能力がわかってる。」
普段はいらないことを言って先生方に反抗するんだけど、この時はキョトンとしていた。
「なんのために勉強するか知ってる?頭を良くするためだよね。
頭が良くなると、いろんな面白いことができて、人生がもっと面白くなるんだ。それはわかる?」
彼は頷いた。
「でもさ、ちょっかい出したくなる。集中して勉強なんてしたくない。って思う自分もいるじゃん?」
彼はまた頷いた。
「でね、2つの人生の楽しみ方が君にはあるんだよ。一つは、頭を良くして人生を楽しみたい自分。頭を良くする作業を避けて、ラクして楽しみたい自分。」
じっと僕を見つめている。
「どっちがいいと思う?」 と聞くと
「頭を良くしたい」と答える。
ここで僕は
「じゃぁ、何をいますべきかな?」
彼は
「問題を解く」と答えた。
僕はこう答えた
「それは半分正解だ。でも、半分は間違ってる。」
キョトンとした顔で僕を見る。
「この問題、できたほうがいい。でもね、実のところ、この計算ができなくても、君はそんなに困らない。」
「数学ってそんなもんなんだよ。」
じっと僕を見つめている。
「この問題を解いているときに出てくる雑念とうまく向き合うトレーニングだと思う必要があるんだよ。どうやったら集中し続けられるか。どう言うときに集中が切れるのか。それを観察するんだ。」
「最初は簡単じゃない。でも、絶対に今の君は昨日の君よりも賢くなってる。明日はもっと賢くなってる。だって明日の自分は、自分をもっと上手にコントロールできるんだから。」
「もちろん全然簡単じゃないし、僕だってできていないときがある。でも、そこで自分がハードワークすれば、その先にもっと面白い人生が待ってるんだよ。」
「僕は君の人生にずっと寄り添うことはできない。でも、君の人生が楽しいものになってほしいと思っているんだ。だから、数学を使ってその方法を伝授してるわけ。」
彼はまだ、じっと僕の目を見つめている。
「じゃぁ、今やるべきことわかる?」
と言ったら、静かにうなずいて、必死に問題を解き始めた。
彼の課題が全部終った頃に、また彼の隣に座り。
「すげぇな。お前、半端なく賢くなるぞ。いやぁ、感心したよ!」
って万編の笑みで呟く。
涙ぐむ生徒の顔がそこにあった。
これだから教職はやめられない。
ちなみに、この生徒は普段課題を半分も終わらせられない、今まではほとんど真面目に取り組んでいなかった。
明日また崩れて学ばなくなるかもしれない。
でもいいんだ。 俺はまた同じように彼と接する。
いつになっても変わらぬメニューを提供する行きつけの喫茶店のように、これからも同じことを繰り返し言い続けるぜ。
※全部ニュージーランドの学校での実体験です。
こちらももしよかったらどうぞ(^^)