ギランバレー症候群① の続き。
もしかして・・・ギランバレー症候群?
なんて不安に思いながら、携帯と財布をバッグに入れ、家から700mぐらいのところにある休日診療所へ向かう。
やっとの思いで着いた庁舎の地下にある休日診療所は、薄暗かった。
手足はしびれ、息苦しく、座ってじっとしていないと、息が簡単に上がってしまうほどの状態だった。
目の前にいるのは、鬼気迫っている雰囲気を隠せない患者さんたち。
休日診療所なので、普通の風邪程度では患者さんは来ないんだろうけど、みんなゴホゴホ言っていた。
嫁が持たせてくれたマスクをつけた。
しかし、息が苦しくて、マスクはすぐに外さざるを得なかった。
ソファーに深く腰掛け、壁に寄っかかりながら、体を観察する。
心なしか、体に力が入りにくくなっている感じがした。
待っている間、体の部位に力を入れてからストレッチを繰り返した。
ただの筋肉の異常だと思いたかった。
ついに、僕の名前が呼ばれ、お医者さんに会いに行く。
色々調べてもらった。
力が入りにくかったことを申告したら、お医者さんと腕相撲をしようと言われた。
力が入りにくいから、腕相撲すらできるか心配だったのですが・・・
僕の圧勝(笑)
負けるの嫌いなんで![]()
元々自分はスポーツマンで、水泳、サッカー、格闘技もやっていたので、基礎体力はかなりあるほうだったんですよね。
だから、力が入らなくても、勝てちゃったみたいです。
結局、
「末梢神経障害の軽いやつじゃないかな・・・でも、これ以上ひどくなるようであれば、もしかしたら・・・もしかしたらだけど、ギランバレー症候群の可能性もあるので・・・とにかくその場合は病院に行ってください。」
ギランバレー症候群は、かなりまれな病気なので、その先生も「ギランバレー症候群」という病名を口にした時の声は、すごく小さかった。
すごく親切に接してくれた、あのお医者さんに、今でも感謝している。
お礼を言い、診察所を出たら、外はすっかり暗かった。
姉貴に電話を一本入れ、その後に大学の親友Kに一本電話を入れた。
Kとは、酒を飲むときも、数学を勉強するときも、旅行行くときも、ウィイレやるときも、基本的に一緒にいた。
いっつも冗談言ってはガハガハ笑う仲だった。
彼は沖縄に住んでいるので、大学を卒業してからはめったに会うことはなかったが、僕が東京で教師をしているときに東京に旅行に来て飲みに行った。
その時に彼がギランバレー症候群になったという話を聞いたのが、僕がこの病気のことを初めて知ったときだった。
(後で詳しく聞いたら、実際はフィッシャー症候群というそれに類似した病気だったらしい。)
僕「もしもし?K?あのさ、昔Kが言ってた、ギランバレー症候群の初期症状に似た症状が今自分に起きてるんだけど・・・」
K「え!?まじで!?どんな症状?言ってみて?」
僕「手足と舌が同時にしびれ始めて、さらに息苦しくなった。」
K「朝と比べて、息苦しさは増してる?」
僕「うん、だんだんきつくなってきてる。」
K「ほうほう。それ、ギランバレーだな。」
僕「おいおいまじかよ!前にKが宝くじに当たるぐらいなるのが難しいって言ってたあれかよ~!やっちまったな俺!ガハガハ」
K「ははは!これから大変だぜ!ははは!俺、超大変だったもん!ははは」
僕「笑わせんなって、息苦しいんだから!ははは」
K「これから大変だろうけど、まぁ諦めて、笑うといいぜ!はははは」
難病をも笑い合える仲間がいる事ってのは、本当にラッキーで幸せなことだった。
息絶え絶えだけど、それでもゲラゲラ笑って電話を切る。
電話を切った瞬間に、異常なほどの不安が押し寄せてきた。
家に帰るまでに、少し歩いたら立ち止まって休まないとたどり着けないほどになっていた。
そして、体が動かなくなる不安は、猛烈な恐怖に姿を変え始めていた。